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芸大は女性が多いのに、業界は男性優位…津田大介さんがあいちトリエンナーレで「荒療治」
2019年04月03日 16時00分

3年に1度の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が8月1日から75日間、愛知県で開かれる。芸術監督として異例の抜擢をされたのが、ジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介さんだ。

津田さんに任された大きな仕事の一つが、参加アーティストの選考。今回、27の国と地域から79組のアーティストが参加する予定だが、その男女比率はほぼ均等となっている。津田さんが打ち出したのは、「ジェンダー平等」だ。

きっかけとなったのが、昨年8月、アーティストの選考中に発覚した東京医大の不正入試だった。「2018年は、 #metoo の流れの中で色々起きていましたが、極め付けが不正入試問題。分水嶺を超えた気がした。これを変えるには、荒療治が必要と思いました」と津田さんは語る。あいちトリエンナーレの「荒療治」とは、どのようなものなのだろうか?(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

3年に1度の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が8月1日から75日間、愛知県で開かれる。芸術監督として異例の抜擢をされたのが、ジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介さんだ。

津田さんに任された大きな仕事の一つが、参加アーティストの選考。今回、27の国と地域から79組のアーティストが参加する予定だが、その男女比率はほぼ均等となっている。津田さんが打ち出したのは、「ジェンダー平等」だ。

きっかけとなったのが、昨年8月、アーティストの選考中に発覚した東京医大の不正入試だった。「2018年は、 #metoo の流れの中で色々起きていましたが、極め付けが不正入試問題。分水嶺を超えた気がした。これを変えるには、荒療治が必要と思いました」と津田さんは語る。あいちトリエンナーレの「荒療治」とは、どのようなものなのだろうか?(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●フェミニズム作家をあえて起用

昨年春ごろ、参加作家の候補として上がってきたのが、モニカ・メイヤーというメキシコ在住の女性作家だった。メキシコのフェミニストアートの草分けだが、津田さんは結論を「保留」としていた。

「キュレーターたちと議論がありました。あまりにフェミニズムの『色』がついてしまうと、一般の人たちは引いてしまうのではないかという指摘があり、それも理解できると思いました」

そこへ発覚したのが、東京医大の不正入試問題だ。

「あの事件で、自分は何ができるのか問われた気がしました。日本のジェンダーギャップ指数は、149カ国中110位。この状況は、フェミニズムだから一般の人が引いてしまうといって、議論を避けてきたからではないか。だから、荒療治が必要だと思いました」

写真1

モニカ・メイヤー《El Tendedero (The Clothesline)》1978、Museo de Arte Moderno、メキシコシティ(メキシコ) Photo: Victor Lerma Courtesy of the Pinto mi Raya Archive

●学芸員は6割が女性なのに、美術館館長は男性が9割以上

津田さんは、モニカ・メイヤーの参加を決定した。ただし、当初はそこまで厳密に男女比率を均等にする意識はなかったという。しかし、津田さんが美術業界の状況を調べると、そこでもやはり男性優位があった。

世界トップレベルの国際美術展であるベネチアビエンナーレやドクメンタにおけるこれまでの参加作家は、いずれも男性が女性よりも圧倒的に多かった(今年5月に開催のベネチアビエンナーレではジェンダー平等になると報じられている)。国内の国際芸術展も同じ傾向で、6割から7割が男性作家で占められていた。

一方、アーティストの卵である美大の新入生をみると、男女比率が逆転する。東京藝術大学では65%、多摩美術大学と武蔵野美術大学では73%が女性、京都市立芸術大学では実に87%が女性だった(いずれも2018年)。

しかし、主な美術大学の教員は8割以上が男性。美術館では9割以上が男性の館長だった。学芸員は女性が6割を超えるにも関わらずだ。このファクトを見て、津田さんの気持ちは決まった。

「いびつな構造があった。むしろ、ジェンダー平等をきちんとコンセプトとした方が、いいと思いました」

写真2

レジーナ・ホセ・ガリンド《La Intención (The intention)》 2016、Originally commissioned and produced by Fondazione Fòcara di Novoli、レッチェ(イタリア) Photo: Annamaria La Mastra Courtesy of the artist

●「女性に下駄を履かせたら質が落ちる」に反論

この方針が報道されると、ネットでは批判が起きた。「女性に下駄を履かせたら、作品の質が落ちる」というものだ。

これに対し、津田さんは真っ向から反論する。トリエンナーレのテーマは「情の時代」。情報や感情などに動かされるのではなく、「情を飼いならす」ことを呼びかけている。

「このテーマからぶれないよう質で選んだら、結果的に作家がほぼ男女均等になっていたというのが事実です。世界も含めてみれば、女性作家の層は厚く、質は担保されてます。最初は、発表は普通にして、『女性作家が多いな、あれ?半分ぐらいいるな』と気づいてくれる人がいて、口コミで広がればいいなと思っていたぐらいでした」

批判の一方で、美術業界の女性たちからは、男性優位の構造やセクハラ、パワハラを受けたという声が相次いだ。津田さんが4月2日、都内で会見した際にこんなエピソードを紹介している。

「芸大油画は女性教員が1人しかいなかった」(34歳女性・芸大卒) 「いまだ女は『男性作家のミューズ』的な立ち位置を求められるという地獄」(36歳女性・地方美大卒) 「モデルになってほしいというカメラマンに応じたら、ヌードでもないのに撮影中にレイプされた」(33歳女性・専門学校卒)

「本当にひどい話ばかりです。ジェンダー平等を方針とした後も、女性差別のひどいニュースが多かった」と津田さん。あいちトリエンナーレの「荒療治」で、「日本のジェンダー平等を議論するきっかけになれば」と話している。

写真3

岩崎貴宏《小海の半島の旧家の大海》 2017、奥能登国際芸術祭2017、石川県珠洲市全域、石川 Photo: Keizo Kioku

(弁護士ドットコムニュース)

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