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人気アニメやJ-POP、甲子園を彩る応援演奏 楽曲を許可なく使用しても大丈夫?
2025年08月14日 10時46分
#著作権 #甲子園

8月5日に夏の甲子園が開幕しました。連日続く猛暑の中、全国から集まった高校球児たちが全力プレーを見せています。

そんな選手たちに負けず劣らず、スタンドから熱いエールを送っているのが各校の吹奏楽部による応援演奏です。過去にはその迫力あるパフォーマンスから「美爆音」という言葉も生まれ、大会の名物として知られています。

一方で、演奏されるのは人気アニメやJ-POPなど著名な楽曲が中心。ここで気になるのが著作権の問題です。著作権者の許諾なく、甲子園で応援演奏を行うことができるのでしょうか。音楽関係の法律問題に詳しい高木啓成弁護士に聞きました。

8月5日に夏の甲子園が開幕しました。連日続く猛暑の中、全国から集まった高校球児たちが全力プレーを見せています。

そんな選手たちに負けず劣らず、スタンドから熱いエールを送っているのが各校の吹奏楽部による応援演奏です。過去にはその迫力あるパフォーマンスから「美爆音」という言葉も生まれ、大会の名物として知られています。

一方で、演奏されるのは人気アニメやJ-POPなど著名な楽曲が中心。ここで気になるのが著作権の問題です。著作権者の許諾なく、甲子園で応援演奏を行うことができるのでしょうか。音楽関係の法律問題に詳しい高木啓成弁護士に聞きました。

⚫︎応援演奏は例外規定で申請不要

─甲子園で吹奏楽部が人気アニメやJ-POPの曲を演奏することは著作権法上問題ないのでしょうか?

著作権には、「演奏権」(著作権法22条)という権利が含まれているので、コンサートのように公衆に向けて楽曲を演奏しようとする人は、原則としてその著作権者の許諾が必要です。

人気アニメやJ-POPなど、いわゆるメジャーで流通している楽曲については、音楽著作権管理事業者(JASRACやNexTone。この記事ではJASRACを想定しましょう。)が「演奏権」を管理しているので、具体的には、演奏者は、JASRACへの申請が必要ということになります。

ただ、「演奏権」には、①非営利であり、②聴衆から料金を受け取らず、③演奏者にギャラも支払わない場合には、演奏権は働かないという規定があります(38条1項)。

高校の吹奏楽部の生徒が甲子園で応援演奏することはこの要件に該当するので、演奏者は、JASRACに申請することなく、演奏することができます。

ちなみに、著作者には、著作権と別に「著作者人格権」という権利をもっていて、この「著作者人格権」には、著作物の意に反する改変を禁止することができる「同一性保持権」という権利が含まれています。

そのため、楽曲のメロディを改変して演奏すると、JASRACが管理する「演奏権」ではなく、著作者自身がもつ「同一性保持権」)の侵害になり得るので、注意しましょう。

⚫︎編曲も最初から「想定されている」

─吹奏楽用に編曲することは権利の侵害にならないのでしょうか

甲子園での楽曲演奏の法的問題点についての記事をインターネット上で探すと、ブラスバンド用にアレンジして演奏することは、「作曲者の同一性保持権との関係で問題になる」という記事が散見されます。そのためか、主要なAIに聞いても同様の回答が得られます。

しかし、少なくともメジャーで流通しているような楽曲をブラスアレンジに編曲することは、作曲者の同一性保持権の侵害になることはありません。

メジャーで流通している楽曲のメロディは、アカペラ歌唱など、オケ(編曲部分)から分離して利用できるので、オケとは別個の独立の著作物です。音楽業界で、作曲者とされるのは、このメロディを作った人であり、その人がオケを作ったかどうかは関係がありません。

そして、音楽業界の慣習上、楽曲のリリースにあたり、メロディを作った作曲者は、音楽出版社と「著作権契約書」(MPA統一フォーム)を交わし、そのメロディの著作権を音楽出版社(その楽曲のプロモーションを行う会社)に譲渡します。

このように、作曲者とされるのはメロディを作った人なのです。オケの部分を作った人ではありません。

そのため、メロディの改変をしない限り、作曲者の同一性保持権を侵害することにはならないわけです。

「いやいや、「著作権契約書」の対象がメロディだけだとしても、作曲者はメロディを作っただけでなく、初期の編曲を行っている場合もあり、その編曲部分がブラスアレンジに改変されているとしたら、やっぱり同一性保持権の侵害になり得るんじゃないの?」と思われるかもしれません。

この疑問はもっともなのですが、作曲者が「著作権契約書」により音楽出版社に譲渡した著作権には、「編曲権」(自由に編曲をほどこすことのできる権利)が含まれているのです。

つまり、作曲者は、自分の関与なく、音楽出版社の一存で、その楽曲が様々なアレンジで利用することができるという権利を音楽出版社に与えているのです。

このように、その楽曲が様々にアレンジされることは契約上作曲者に予見される範囲なので、当該作曲者の編曲を踏襲しつつ曲の品位を貶めるような極めて特殊なアレンジでない限り、「意に反する改変」に該当することは想定できず、やはりブラスアレンジをすることが同一性保持権の侵害になるということは考えられません。

実際、音楽業界では、カバーアレンジのCDなどを制作する場合、メロディの改変をしないのであれば、音楽出版社の許諾さえ取得しておけば作曲者の許諾は不要という運用がなされています。

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