14009.jpg
コロナ禍のひきこもり、支援困難で孤立 「家族が在宅で気まずい」訴える声も 調査結果を公表
2021年04月19日 18時55分

感染拡大の影響で、また引きこもりに戻ってしまったーー。

コロナ禍における「ひきこもり」の状況について、関係団体が4月19日、調査結果を報告した。

コロナによって、本人・家族が孤立したり、ひきこもり支援に遅延・停滞が起きるなど影響があるという。

家族が在宅勤務に切り替わったことにより、居心地のわるさを感じる当事者がいる一方で、リモートワークで仕事を得る者もいる。いっそう必要とされるのは、家族も本人も孤立させない仕組みだ。

感染拡大の影響で、また引きこもりに戻ってしまったーー。

コロナ禍における「ひきこもり」の状況について、関係団体が4月19日、調査結果を報告した。

コロナによって、本人・家族が孤立したり、ひきこもり支援に遅延・停滞が起きるなど影響があるという。

家族が在宅勤務に切り替わったことにより、居心地のわるさを感じる当事者がいる一方で、リモートワークで仕事を得る者もいる。いっそう必要とされるのは、家族も本人も孤立させない仕組みだ。

●定期的な面談や訪問支援ができなくなった

今回の調査(「ひきこもりの家族会に関する実態調査報告書」)は、特定非営利活動法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が実施した。

665の行政機関、22カ所の家族会運営者、48人のひきこもり経験者、252人の当事者家族を対象として、主に昨年12月〜今年2月にかけて、おこなった。

ひきこもり地域支援センター、生活困窮者自立相談支援センターなど対応機関の90.7%が、現在もひきこもり相談を実施している。地域支援センターでは、9割以上で家族会が設置され、連携がとれていた。

コロナの影響によって、「定期的な面談、訪問支援ができなくなり、順調だった相談者がひきこもり状態になってしまった」(地域支援センター)、「会場の変更・閉鎖」「自粛によって参加者の半減」(家族会)などの報告がなされた。

●ひきこもり家族と支援機関とのかかわりが減少

続いて、当事者の家族が回答した。コロナによって、支援機関とのつながりが薄れているとの声があった。

家族回答者と、当事者の関係は、母親が76.6%で父親が21.0%で、当事者の性別は、男性が70.2%、女性が29.0%だった(残りは不明やその他)。

当事者の平均年齢は34.4歳(最年少が16歳。最年長が60歳)。

支援・医療機関の利用状況は、84.1%(昨年度は86.2%)が利用していると答えた。一方、利用を中断したのは43.3%(昨年度は37.4%)だった。

家族会への参加状況は、「継続している」が76.2%(昨年度は84.1%)。「中断している」としたのは12.3%(昨年度は9.0%)。

●家族が在宅勤務をはじめて、居場所を追いやられる

コロナによって、家族は精神的な負担を当事者に感じている。

「父親と兄がリモートワークになった際は、やはり本人にとって居心地があまりよくなく、自分だけ就労していない負い目から部屋に引きこもることが多くなった」 「2つ上の姉が仕事が減り、家にいる時間が長いので、いらいらしているようだ」

また、本人からも居心地のわるさが報告されている。

「父親(高学歴・北大卒)が家でリモートワークになり、いっそう自分と顔を合わせることになって居心地がわるい」 「外出を控えることが多くなり体調に少なからず影響が出ていて、意欲も失っている」

●オンライン支援が必要だ

調査を手がけた境泉洋教授(宮崎大学)によれば、家族の平均年齢は65.1歳で高止まりしている。コロナ不安から外出を控えた家族も多いようだと話す。

「コロナで重症化しやすい高年齢層が警戒したようだ。世帯は完全に孤立してしまうので、親が高齢になったときにつながりを絶たないことが大きな課題」

支援側、家族側の双方から、オンラインで支援を受ける仕組みの充実が求められた。

境教授(右) 境教授(右)

●コロナがひきこもり本人に自信をつけさせた

ただ、深刻な事態ばかりではない。

「パーソナルスペースを侵害されず、コロナのおかげで生きやすい」など本人からの回答や、「ひきこもりの娘が、在宅ワーク支援をしている会社に出会い、リモートでお仕事の支援やつながりも作ってもらい自信につながったようだ」と喜ぶ家族も。

「日本全体が総ひきこもりになることで、当事者にとってある意味、ひきこもることが責められなくなり、本人にも家族にも良い影響があった」(境)

会の代表を務める伊藤正俊さんは、人はこれまで、人と群れることで孤独感を解消してきたと話す。

「物質的な豊かさがあると、他人の介入をまたなくても、(1人で)できてしまうような万能感がこの社会を覆っているのではないか。多様な生き方を認め合えば認め合うほど、つながっていくのが難しい社会ではないか」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る