1407.jpg
傘の横持ち、衝撃力は「ピアノ1台分」賠償責任どうなる?ぶつかれば失明や骨折のリスクも
2025年07月05日 09時52分
#横持ち #雨傘

「ぶつかったときの衝撃力はピアノ1台分」

たたんだ傘を横向きに持ち、背後にいる人にぶつかった場合、どれだけ危険なのか。東京都が実施した実験結果が注目を集めています。

通勤・通学ラッシュの駅や歩道では、たたんだ傘を横向きに持つ人をしばしば見かけます。こうした持ち方は「水平持ち」「横持ち」などと呼ばれ、混雑した場所では非常に危険です。

東京都生活安全課は公式サイトで実験結果を公表し、こうした持ち方が思わぬ事故を引き起こす可能性があるとして、傘の石突き(先端)を真下に向けて持つよう注意を呼びかけています。

「ぶつかったときの衝撃力はピアノ1台分」

たたんだ傘を横向きに持ち、背後にいる人にぶつかった場合、どれだけ危険なのか。東京都が実施した実験結果が注目を集めています。

通勤・通学ラッシュの駅や歩道では、たたんだ傘を横向きに持つ人をしばしば見かけます。こうした持ち方は「水平持ち」「横持ち」などと呼ばれ、混雑した場所では非常に危険です。

東京都生活安全課は公式サイトで実験結果を公表し、こうした持ち方が思わぬ事故を引き起こす可能性があるとして、傘の石突き(先端)を真下に向けて持つよう注意を呼びかけています。

●「みぞおちに刺さった」という人も

東京都の実験では、振り子装置を使い、横持ちした傘を歩行中と同じように振り下ろしたところ、その衝撃力は最大240 kgf(ピアノ約1台分)に達することがわかったそうです。

さらに、衝撃力は傘の先端に集中するため「身体に当たると失明や骨折などの重篤なけがを負う可能性がある」と結論づけています。

また、都が都内在住の20歳以上の2000人を対象に実施したネット調査では、「エスカレーターで前の人の傘の先が目に入りそうになった」「階段を登っているときに、横持ちしている人の傘の先がみぞおちに刺さった」など、実際に危害を受けた人やヒヤリとした経験がある人が44%にのぼりました。

●「わざとではない」では済まされない

実際にこうした傘の持ち方が原因で他人にケガをさせてしまった場合、法的にどのような責任を問われるのでしょうか。本間久雄弁護士は次のように説明します。

「傘を水平に持ち、後ろにいた人にケガをさせた場合、民事上は不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)、刑事上は過失傷害罪(刑法209条1項)、過失の程度が重ければ重過失傷害罪(刑法211条後段)が成立します」

では、傘の持ち主が「わざとではない」「混雑していて避けられなかった」と弁明した場合はどうなるのでしょうか。

「人がいる場所で傘を水平に持つこと自体、ケガをさせる危険性を十分に予見できます。したがって、過失が認められ、不法行為責任や過失傷害罪が成立することになります」

●重いけがの場合は、高額賠償になる可能性

ケガが重い場合、さらに重い責任を負うことになると本間弁護士は指摘します。

「失明など、重いケガを負わせてしまうと、損害賠償額は高額になります。たとえば、両目を失明させてしまった場合は、ケガを負った時点から67歳程度までの就労可能期間の収入全額を『逸失利益』として賠償する必要があります。さらに精神的苦痛に対して2800万円の慰謝料が認められたケースもあります」

●子どもが傘でけがをさせたら家族に責任

加害者が未成年の場合、誰が責任を負うのでしょうか。本間弁護士はこう解説します。

「たとえ本人がケガをさせなくても、未成年の子や同居の認知症の高齢者などが加害者となった場合、家族が不法行為責任を負う場合があります(民法712条、民法714条)。

なお、認知症の高齢者が起こした不法行為について、家族が責任を負うかどうかを判断した最高裁判決(平成28年3月1日)もあります。なお、この判決では、家族の責任は否定されました」

傘の持ち方ひとつで、思わぬ事故につながる可能性があります。本間弁護士は次のように呼びかけます。

「梅雨やゲリラ豪雨の時期は傘を持ち歩く機会が多いと思いますが、たまたま持ち方が悪かっただけでも、自分や家族が他人にケガをさせれば、莫大な損害賠償責任を負う可能性があります。そのリスクに備えるためにも、個人賠償責任保険に加入しておくのも一つの選択肢です」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る