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押収したスマホの返還手続きに「不備あった」 国賠訴訟で和解成立、宮崎県が解決金50万円支払いへ
2021年10月13日 16時47分

逮捕時に警察官が差し押さえたスマートフォンを所持者の男性以外の人物に還付(返却)したのは違法だとして、詐欺罪で起訴された男性とその国選弁護人が国と宮崎県に対して計320万円の損害賠償を求めていた訴訟について、10月13日、和解が成立した。

宮崎地裁延岡支部が2021年2月、警察官による還付手続の不備を認めること、県が疑義のない還付手続に努めること、県が解決金として50万円を支払うことなどを盛り込んだ和解案を提示。これに基づき、訴訟上の和解が成立した。

男性の国選弁護人を務め、今回の訴訟の原告でもある外山亮弁護士によれば、還付手続の違法性が問題となった裁判例は珍しいという。不備が認められたことには重要な意義があり、「同様の事案については、他の都道府県等についても発生し得る問題だ」としている。

逮捕時に警察官が差し押さえたスマートフォンを所持者の男性以外の人物に還付(返却)したのは違法だとして、詐欺罪で起訴された男性とその国選弁護人が国と宮崎県に対して計320万円の損害賠償を求めていた訴訟について、10月13日、和解が成立した。

宮崎地裁延岡支部が2021年2月、警察官による還付手続の不備を認めること、県が疑義のない還付手続に努めること、県が解決金として50万円を支払うことなどを盛り込んだ和解案を提示。これに基づき、訴訟上の和解が成立した。

男性の国選弁護人を務め、今回の訴訟の原告でもある外山亮弁護士によれば、還付手続の違法性が問題となった裁判例は珍しいという。不備が認められたことには重要な意義があり、「同様の事案については、他の都道府県等についても発生し得る問題だ」としている。

●男性名義のスマホではなかったが…

訴状などによると、スマホは男性が詐欺の疑いで逮捕された2015年12月に差し押さえられたもので、当時男性が交際していた女性名義で契約していたものの、男性が料金を支払うなどして常時使用していた。

その後2つの事件について詐欺罪で起訴された男性が、2016年12月にスマホなどの還付請求をしたところ、すでに同年1月時点で交際女性に返還されていたことを初めて知った。還付請求について準抗告したものの、返還済みであることを理由に、準抗告の理由なしとして却下された。

男性は、いずれの事件についても有罪となり確定。現在は仮釈放により出所しているという。

●「要件を満たさない違法な還付だったのではないか」

問題となったのは、刑事訴訟法124条1項(刑訴法222条1項で準用)に基づいておこなわれた警察による還付手続だ。

刑訴法124条1項
押収した贓物で留置の必要がないものは、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被告事件の終結を待たないで、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定でこれを被害者に還付しなければならない。

男性側は、スマホは男性自身が使用していたものであり、窃盗、詐欺などの犯罪行為によって不法に手に入れたわけではないため「贓物(ぞうぶつ)」に当たらず、男性やその国選弁護人でもあった外山弁護士への意見聴取もなかったとして、男性以外の人物にスマホを返却した還付手続は違法と主張。

スマホ内に残っているSNSでのやりとりは無罪主張の証拠であり、違法な還付手続でそのやりとりを確認できなくなったことは、男性の防御権と弁護人の弁護権を侵害したとして、2019年12月、国および宮崎県に対し、計320万円の損害賠償を求めて提訴した。

●裁判所「疑義のない還付手続に努めること」

宮崎地裁延岡支部は、提示した和解案に関する裁判所の考えとして、男性が交際女性からスマホをだまし取ったとは認めがたく、刑訴法124条が定める「贓物(ぞうぶつ)」に当たるかどうかについて疑義があるとした。

さらに、男性への意見聴取についても記録上書面化されておらず、事実として認めがたいことなどから、還付は要件を満たさずにおこなわれたものとの心証を抱いており、警察官の過失も認め得るとした。

なお、警察による本件還付手続を中止させる作為義務が検察官にあったとはいえず、国の責任は認めがたいとした。

裁判所は、県が還付手続要領やフローなどを示し、具体的な取り組みや再発防止策を実施していることを確認するとともに、今後も継続することなど適正手続を積極的に実践する姿勢を示すことが本件の解決のために重要と判断。

和解案では、警察官による還付手続の不備を認めること、県が解決金として50万円を支払うことに加え、県が疑義のない還付手続に努めることも盛り込まれた。

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