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銃刀法違反「違法なおとり捜査」理由に再審…警察による事件「でっち上げ」の問題点
2016年11月04日 10時14分

「違法なおとり捜査があった」として、銃刀法違反の罪で懲役2年が確定し、服役した元船員のロシア人男性の再審請求を認めた札幌地裁の決定に対する即時抗告審で、札幌高裁は10月26日、検察の即時抗告を棄却する決定を言い渡した。

報道によると、決定理由では、おとり捜査の事実を隠して捜査書類を作成した警察官らの「虚偽有印公文書作成罪」が判決後に明らかになったことに触れ、男性の銃刀法違反罪の成立について「強い疑念を抱かせ、裁判の公正を疑わせるに顕著な事由」があると判断した。

ロシア人男性は1997年、北海道・小樽港で拳銃を所持したとして銃刀法違反罪で逮捕・起訴され、懲役2年が確定し服役したが、その後再審(裁判のやり直し)を求め、2016年3月、札幌地裁が、道警の違法な「おとり捜査」があったことなどを理由に、再審を開始する決定をしていた。この決定に対し、札幌地検が即時抗告していたことに対する判断が、今回の高裁決定だった。

そもそも「おとり捜査」は何が問題視されているのか。今回のケースでは何が問題だったのか。刑事手続に詳しい荒木樹弁護士に聞いた。

「違法なおとり捜査があった」として、銃刀法違反の罪で懲役2年が確定し、服役した元船員のロシア人男性の再審請求を認めた札幌地裁の決定に対する即時抗告審で、札幌高裁は10月26日、検察の即時抗告を棄却する決定を言い渡した。

報道によると、決定理由では、おとり捜査の事実を隠して捜査書類を作成した警察官らの「虚偽有印公文書作成罪」が判決後に明らかになったことに触れ、男性の銃刀法違反罪の成立について「強い疑念を抱かせ、裁判の公正を疑わせるに顕著な事由」があると判断した。

ロシア人男性は1997年、北海道・小樽港で拳銃を所持したとして銃刀法違反罪で逮捕・起訴され、懲役2年が確定し服役したが、その後再審(裁判のやり直し)を求め、2016年3月、札幌地裁が、道警の違法な「おとり捜査」があったことなどを理由に、再審を開始する決定をしていた。この決定に対し、札幌地検が即時抗告していたことに対する判断が、今回の高裁決定だった。

そもそも「おとり捜査」は何が問題視されているのか。今回のケースでは何が問題だったのか。刑事手続に詳しい荒木樹弁護士に聞いた。

●刑事訴訟法に規定はないが、一定の場合は「違法」と評価される

「『おとり捜査』については、刑事訴訟法上には規定がありません。一般には、捜査の対象となった者に対して、捜査機関が犯罪の実行を働きかけ、犯罪が実行されるのを待って、対象者を現行犯逮捕するなどして検挙する捜査手法と言われています。

一般に見られるのは、銃器や薬物の犯罪の捜査です。たとえば、覚せい剤密売人を検挙するため、覚せい剤の末端使用者に成りすました捜査協力者が、覚せい剤の購入を申し込み、覚せい剤密売人と取引場所を決め、密売人と取引したその場面で捜査員が現行犯逮捕する、というのが典型例です」

荒木弁護士はこのように述べる。おとり捜査は法的にどんな問題があるのか。

「おとり捜査は、直ちに違法な捜査と呼ばれるわけではありません。犯罪への働きかけがあまりにも露骨で、犯罪を犯すつもりがなかった人に、積極的に犯罪をもちかけて、犯罪行為を招いた場合には、違法な捜査とされる場合があります」

今回のケースでは、どんな点が問題とされたのか。

「今回のロシア人の拳銃所持事件は、もともと、日本の中古車売買をしていたロシア人が、代金の代わりに拳銃との交換を持ちかけられたという事件です。

この拳銃の交換を持ちかけた人物が、北海道警の捜査協力者(おとり)だったということが問題となったのです。

この事件に関連して、捜査に関与した北海道警察の警察官が以前から、暴力団関係者から実物の拳銃を入手して虚偽の拳銃事件をでっち上げ、事件検挙数を稼いでいたということが明らかになっています。

また、拳銃と自動車の交換を持ちかけた捜査協力者(パキスタン人)の存在を否定する虚偽の捜査報告書を作成するなど、警察が組織ぐるみでおとり捜査を隠蔽していたことも明らかになっています。

裁判所は、捜査機関があらかじめ拳銃を用意し、拳銃を入手する意思がなかったロシア人に対して、積極的に自動車の交換を持ちかけ拳銃を所持させて、その経緯を警察が隠蔽し、積極的に犯罪を誘発した、つまり、『警察官が入手した拳銃を使って、ロシア人の犯罪をでっち上げた』と認めたものだと思います。

この事件は、本当に衝撃的な事件です。諸外国と比べ国民から信頼の厚い日本の警察が、何故こんなことをしたのか、個人的には、未だに理解に苦しむところです」

(弁護士ドットコムニュース)

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