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「富山出身者は閉鎖的、極力採用しない」発言が物議…「採用の自由」で押し通せる?
2017年07月19日 09時59分

総合機械メーカーの不二越(富山市)の本間博夫会長が、富山出身者を採用しないという趣旨の発言をしたと報じられた。

北日本新聞によると、発言は2017年8月に東京に本社を一本化すると発表した記者会見で出たもの。会見では「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です」と述べ、「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。なぜか。閉鎖された考え方が非常に強いです」などと述べた。一方、「ワーカーは富山から採ります」と話している。

本間氏は東京都出身、青山学院大学卒。1970年に入社し、2009年に社長、今年2月に代表権のある会長に就任した。今回の発言について、富山県内の経済団体トップや企業経営者から、批判の声があがっている。

同社は、「採用は人物本位。富山の出身者の採用を抑えることではない」としているが、もし、会長の発言通りに、採用基準の一つに出身地を入れたとしたら、法的に問題はないのか。竹花元弁護士に聞いた。

総合機械メーカーの不二越(富山市)の本間博夫会長が、富山出身者を採用しないという趣旨の発言をしたと報じられた。

北日本新聞によると、発言は2017年8月に東京に本社を一本化すると発表した記者会見で出たもの。会見では「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です」と述べ、「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。なぜか。閉鎖された考え方が非常に強いです」などと述べた。一方、「ワーカーは富山から採ります」と話している。

本間氏は東京都出身、青山学院大学卒。1970年に入社し、2009年に社長、今年2月に代表権のある会長に就任した。今回の発言について、富山県内の経済団体トップや企業経営者から、批判の声があがっている。

同社は、「採用は人物本位。富山の出身者の採用を抑えることではない」としているが、もし、会長の発言通りに、採用基準の一つに出身地を入れたとしたら、法的に問題はないのか。竹花元弁護士に聞いた。

●「採用の自由」とは?

会社はそれぞれ自由に採用基準を決められるのか。

「使用者は、誰を雇い入れるかについて広い『採用の自由』を有しています。この点は、一度労働契約を締結したら使用者が一方的に労働契約を解除する(解雇)には、厳しい『解雇権濫用法理』(労働契約法16条)が課されていることと、大きな違いがあります。

判例も、企業の採用の自由について、『企業者は、…経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、…いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限のない限り、原則として自由にこれを決定することができる』(三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日)と判示しています。

以上のとおり、使用者には採用の自由がありますので、『法律その他による特別の制限のない限り』、どのような基準で誰を雇うかを自由に決めることができます」

●厚労省から行政指導が行われる可能性も

では、採用基準に出身地を入れることも問題はないのか。

「そういうわけでもありません。厚労省は以前から、『採用のためのチェックポイント』などに基づく行政指導を行ってきました。本人に責任のない事項(本籍、出生地等)、本来自由であるべき事項(宗教、支持政党等)を申告させることや、身元調査などを行うことは、就職差別につながるおそれがあるとして、行うべきではないとされています。

採用において本籍や出生地を考慮することは好ましくないと考えられているので、今回のケースでも、出身地を採用基準にすると明言したことについて、そのような言動や実行を控えるよう会社に対して行政指導が行われる可能性があります」

●出生地や本籍などの個人情報の収集は職安法で禁止されている

法的な規制はないのか。

「募集に応じて労働者になろうとする者の個人情報の収集については、職業安定法により、業務の目的達成に必要ではない情報を収集することは禁止されています(職安法5条の4)。

同条の規定を受けて職安法指針は、

労働者の募集を行う者は、

(1)人種、民族、社会的身分、門地、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項

(2)思想及び信条

(3)労働組合への加入状況

といった個人情報を、原則として収集してはならないとしています

何をもって『業務の目的達成に必要』であるかは業種によっても異なると考えられます。しかし、本籍や出生地を知ることが『業務の目的達成に必要』である業種は想定できないと思われるので、本籍や出生地の情報を収集することは許されないと考えられます。

なお、履歴書に『現住所』を記載するのは通常行われています。現住所は候補者と郵便でのやりとりをしたり、配属地を考慮する際の参考にするなど一定の必要性が認められるので、現住所を書かせることが禁止されているとまでは考えられていません。

しかし、現住所に加えて、本籍地や出生地を記載されることは、業務の目的達成に必要でない情報を収集するものとして、法律上も許されないと解されます。これに違反をした場合は職安法に基づく改善命令の対象となりますし、改善命令に違反した場合には罰則が科せられることもあります」

結局、今回のケースの法的問題はどういうところにあるのか。

「企業が把握している情報をどのように考慮して採否を決定するかは、通常は、ブラックボックスであり、明らかにされることはありません。

しかし、会社のトップが特定の地域の出身者を採用しないと表明することは、厚労省『採用のためのチェックポイント』に違反しますし、その目的を達成するため等に本籍や出身地を申告させたり、会社が調査することは、職安法に違反すると考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

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