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「9時〜17時労働でおかしくなりそう」新社会人の涙に賛否…回避する術はあるのか?
2023年11月18日 09時37分

TikTokerブリエルさんが、「原則9時〜17時の労働で頭がおかしくなりそう」と涙ながらに訴える動画が世界的に話題になり、賛否を呼んでいます。

ブリエルさんは、新社会人として働いていますが、オフィスから離れたところに住んでいるため、7時半に家を出て、早くても18時15分ごろに帰宅する生活だそうです。

「何もする時間がない。シャワーも浴びたくないし、夕食を食べて眠る。自炊する時間も、運動するエネルギーもない」と嘆いています。

この動画に対して、日本では、「9時〜17時は早い方」「辛いならやめればいい」といった冷ややかな声の一方、「1日8時間勤務がセオリーではなく、4時間〜6時間勤務で最低限の生活ができるようになればいいのに」「もっと働き方にバラエティがあってもいいのに」など共感を示す声も出ています。

この問題について、どのように考えればいいのでしょうか。向井蘭弁護士が解説します。

TikTokerブリエルさんが、「原則9時〜17時の労働で頭がおかしくなりそう」と涙ながらに訴える動画が世界的に話題になり、賛否を呼んでいます。

ブリエルさんは、新社会人として働いていますが、オフィスから離れたところに住んでいるため、7時半に家を出て、早くても18時15分ごろに帰宅する生活だそうです。

「何もする時間がない。シャワーも浴びたくないし、夕食を食べて眠る。自炊する時間も、運動するエネルギーもない」と嘆いています。

この動画に対して、日本では、「9時〜17時は早い方」「辛いならやめればいい」といった冷ややかな声の一方、「1日8時間勤務がセオリーではなく、4時間〜6時間勤務で最低限の生活ができるようになればいいのに」「もっと働き方にバラエティがあってもいいのに」など共感を示す声も出ています。

この問題について、どのように考えればいいのでしょうか。向井蘭弁護士が解説します。

●8時間労働の起源

世界で多くの国が1日8時間の労働を上限として定めています。もちろんこれに残業時間が加わりますが、原則として1日8時間を上限としていることには変わりがありません。

1日あたりの労働時間の上限を8時間とした起源は、24時間を3等分にして、仕事、睡眠、私生活に3等分した結果ではないかと言われています。

1917年、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国が初めて国の法律として8時間労働を立法化し、その後、フランスやドイツでも相次いで8時間労働法が実現します。そして1919年、国際労働機関(ILO)第1回総会で「1日8時間・週 48 時間」という労働制度を定め、これが国際ルールとして確立されることになります。

日本では、戦後のGHQ主導により行われた1947年(昭和22年)の労働基準法の制定により、1日の労働時間を8時間に改めることになりました。

●もはや「日本人=長時間労働」では無い

1980年代は日本の経済力があまりにも強いからなのか、アメリカを初め諸外国から日本の長時間労働が問題にされたことがありました。

しかし、OECDがまとめた「2021年_年間労働時間(2022年7月20日データ更新)」の調査結果によると、日本の全就業者平均の1人当たり年間実労働時間は1,607時間となりました。 世界労働時間の平均は1,716時間となっており、世界の中での日本の順位は46か国中19位となっています。世界の平均より100時間ほど短い数値となっています。

ただし、この年間実労働時間には、フルタイム、パートタイム、年間の一時期のみ働く労働者の正規労働時間、有給および無給の時間外労働、追加就業の労働時間が含まれますので、いわゆる正社員のみの数字を集めたものではありませんが、国民気質として徐々に長時間労働を避ける、嫌がるようになってきているのではないかと思います。

●コロナ禍を経て、通勤のストレスが改めて大きいことに気づいた

今回のブリエルさんの事例は、背景に世界的なインフレ・不動産高騰があると思われます。

東京では今のところ、家賃は落ち着いておりますが、湾岸エリアのマンションや港区などの高級マンションは値上がりしており、いずれ東京都心の家賃も値上がりしていくのではないかと思われます。

そうなると仮に勤務場所が都心にあったとすると、都心から離れた手頃な家賃の物件で暮らしていれば自然と通勤時間は長くなってしまいます。

また、コロナ禍をきっかけにテレワークを経験してみて、通勤のストレスが改めて大きいことに気づかされたのではないかと思われます。

通勤時間が長くなれば、1日8時間労働でも目に見えない疲労や時間の消費が蓄積されていきます。ブリエルさんの言い分も分からないではありません。

●日本でも短時間正社員という働き方は可能だけど

日本でも短時間だけ働くことは可能でしょうか。そもそも労働基準法は週40時間を越えた労働をする約束をすることを禁止しているだけで、会社と合意できれば週40時間未満の働き方も可能です。短時間正社員という働き方も増えてきています。当然、時給制のアルバイトでも働くことは可能です。

使用者側が成果を求める仕事であれば、業務委託契約のフリーランスとして短時間稼働して、求められる業務を終えた分だけ賃金を得ることができます。

ただし、多くの企業はそれでも1日8時間(もしくはそれに近い)で週5日勤務の正社員を求めます。短時間で得られる業務量には限界があり、多くの業種において1日8時間近く働かないと求める業務量が得られないことを知っているからです。

そのため、まとまった賃金を得るためにはやはりまとまった時間働く必要が出てくることになりますし、使用者側も週40時間近い労務の提供を求めることになります。

●企業も「甘えだ」と批判するだけでなく、活用法を考えた方がいい

企業側としては「8時間働きたくない人」が一定数存在し続けることを前提に対策を打つしかないでしょう。

「8時間働きたくないのは甘えだ」ということは簡単なのですが、世の中の流れが変わり、今後も一定数「8時間働きたくない人」が出てくるのは確実であると思われます。人手不足時代では、このような「8時間働きたくない人」を活用する必要があります。活用する方法としては以下のものが挙げられます。

①短時間正社員や週4日勤務正社員

短時間正社員や週4日勤務正社員は1つの方法であると思われます。

実際に週4日勤務正社員で求人サイトを検索してみると、かなりの職種の応募があります。運転手、製造業、塾の教室運営、営業職など多岐にわたっており、求人として手応えがあるのだと思います。人手不足の業界では少しずつ普及しているような印象を受けます。

また、賃金が成果に応じて変動する仕組みも導入するべきかと思います。短時間勤務であっても成果が出れば賞与を大幅に増額するなどすれば、お互いにとってメリットのある関係を築くことができます。

②業務委託契約

また、業務委託契約も有効な選択肢です。使用者から独立した個人事業主として仕事を行うことができれば、自由に働くことが可能です。

もっとも、このような自由を求めるのであれば、相応に知識やスキルがあることが前提になりますので、単に8時間働きたくないだけの方にはなかなか仕事の依頼は来ないのではないかとも思われます。

●まとめ:固定観念にとらわれない働き方と人材活用を

今後も、深刻な人手不足時代は続くと思われます。時代と共に働く人の考えも変わりますので、固定観念にとらわれること無く人材の活用を進める必要があると思います。

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