14641.jpg
新幹線で「果物ナイフ」持った老夫婦、警察出動の騒ぎ…なぜ「違法」にならなかった?
2019年04月04日 09時45分

JR静岡駅で3月15日夕方、新幹線の車掌が、乗客の中にナイフを持っている老夫婦を見つけて、警察に通報する騒ぎがあった。

テレビ静岡などによると、老夫婦は、果物の皮をむくために「果物ナイフ」を持っていたという。新幹線は15分ほど遅れて出発したが、2人は無事に目的地に到着できたそうだ。

JR静岡駅で3月15日夕方、新幹線の車掌が、乗客の中にナイフを持っている老夫婦を見つけて、警察に通報する騒ぎがあった。

テレビ静岡などによると、老夫婦は、果物の皮をむくために「果物ナイフ」を持っていたという。新幹線は15分ほど遅れて出発したが、2人は無事に目的地に到着できたそうだ。

●正当な理由なく、果物ナイフを携帯することは「違法」

法律上、正当な理由なく、刃体の長さが6センチをこえる刃物を携帯することが禁止されており、処罰される(銃刀法22条)。また、6センチ未満の刃物を携帯することも処罰対象となっている(軽犯罪法1条2号)。

もちろん果物ナイフの携帯もこれらの法律が適用されることになる。「正当な理由」があれば不問とされるわけだが、どういう場合そうなるのだろうか。刑事事件にくわしい德永博久弁護士が解説する。

●正当な理由は「社会通念」に従って判断される

「『正当な理由』といえるためには、研磨・修理・鑑定・売買の目的など、刃物を携帯・運搬することについて、職務上または日常生活上の必要性があり、社会通念上相当と認められる場合に限定されます。

銃刀法22条および軽犯罪法1条2号のいずれにおいても、その犯罪を不成立とする要件である『正当な理由』があるかどうかについては、『社会通念』に従って判断されます。

『社会通念』とは、日常用語でいいますと、いわゆる『常識』に近い判断基準と考えるとわかりやすいと思います。ただ、その判断基準は、時代や場所などによって、絶えず変化することから、問題となったケースごとに『正当な理由』があるかどうかについて、個別具体的な事情を踏まえて、検討・判断する必要があります」

●「果物の皮をむくため」だけでは判断できない

今回のように、果物の皮をむくために果物ナイフを持っているような場合は「正当な理由」にあたるのだろうか。

「単に、『果物の皮をむくため』という理由だけで、『正当な理由』があるかどうかを判断するのではなく、『果物ナイフの所持者が、いつ、どこで、どのような態様で果物ナイフを所持していたのか』などといった諸事情まで含めて判断する必要があります。

今回は、(1)老夫婦(体力的には、他人に危害を加える危険性が一般的に低いと思われます)が、(2)新幹線という比較的長い時間乗車することを前提とする車両内の自己の座席において、(3)自分たちが食べるための果物を所持したうえで、(4)その果物の皮をむくための手段として果物ナイフを携帯していた、といえます。

これらの諸事情を踏まえれば、『正当な理由』があったと認定することが妥当だと思われます。

ただし、この結論は、今回のケースに限ってあてはまるものですので、一般的に『新幹線の中に果物ナイフを持ち込んでも、かまわない(正当な理由があるから犯罪不成立)』といった誤解をしないように留意してください」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る