14664.jpg
犯罪グループにキャッシュカード譲渡、「銀行口座」が全く使えなくなるリスク
2016年07月30日 10時13分

他人に銀行口座のキャッシュカードを貸したとして、都内に住む30代の女性が犯罪収益移転防止法違反の疑いで逮捕された。口座は還付金詐欺の振込先として使われており、高齢者2人から約200万円が振り込まれていたという。

報道によると、女性は今年5月、LINEで知り合った男にキャッシュカードを郵送し、現金1万5000円を受け取った。取り調べに対し、「収入がなくてやってしまった」などと容疑を認めているという。

簡単に高額謝礼をもらえるため、口座を売ったり、貸したりして、逮捕される人が後を断たない。美味しい話の代償はどのくらいになるのだろうか。大村真司弁護士に聞いた。

他人に銀行口座のキャッシュカードを貸したとして、都内に住む30代の女性が犯罪収益移転防止法違反の疑いで逮捕された。口座は還付金詐欺の振込先として使われており、高齢者2人から約200万円が振り込まれていたという。

報道によると、女性は今年5月、LINEで知り合った男にキャッシュカードを郵送し、現金1万5000円を受け取った。取り調べに対し、「収入がなくてやってしまった」などと容疑を認めているという。

簡単に高額謝礼をもらえるため、口座を売ったり、貸したりして、逮捕される人が後を断たない。美味しい話の代償はどのくらいになるのだろうか。大村真司弁護士に聞いた。

●犯罪に利用されていれば、有無を言わさず凍結


還付金詐欺を含むいわゆる振り込め詐欺、あるいはヤミ金融といった組織的な犯罪では、しばしば他人名義の口座が使われます。かつては、架空名義の口座も多かったようですが、「本人確認法」の制定などで金融機関のチェックが厳しくなり、実在の誰かの口座が使われることがほとんどです。多くの場合、当の犯罪とはまったく関係のない人から買ったり、あるいはヤミ金融などが貸し付けた相手から脅し取ったりといった形で手に入れるようです。

他人名義の通帳やクレジットカードは、取得すること自体犯罪です。また、提供した側も、そのような事情を知っていた場合、犯罪に該当します。法定刑は1年以下の懲役、100万円以下の罰金です。

また、実務上よく見かけるのは、他人に渡す目的で新規に口座を作るケースです。そのような目的を隠して銀行に通帳等を交付させれば、詐欺罪に問われます。詐欺の場合、法定刑は10年以下の懲役ですから、さらに重い罪ということになります。

しかし、それ以上に大変なのが、銀行口座がまったく使えなくなってしまうリスクです。犯罪に使われた口座は「振り込め詐欺救済法」によって凍結することになっていますが、各金融機関は口座の名義人について、新規口座の開設を拒否したり、既にある口座を解約したりすることが多いのです。つまり、その後長期間、銀行口座を一切持てない状態で生活していかないとならない可能性があるということです。

銀行口座がなければ、たとえば給料の振り込みを受けることもできませんし、光熱費を自動引き落としにすることもできません。そのほかにも支障が出る場面は枚挙に暇がなく、日常生活には多大な問題が生じることになります。しかも、犯罪に利用されていれば、口座は有無を言わさず凍結されるため、口座の名義人が事情を知っていたかどうかは関係ありません。

ヤミ金融事件や振り込め詐欺の被害者の事件を担当していると、 知的障害があってそそのかされたり、借金は許してやるからなどと言われ、通帳を渡したりするケースがあります。被害者ではあるのですが、その後、口座が使えない生活を余儀なくされるのです。弁護士が交渉しても銀行は口座開設を拒否する場合も多いので、悩みの種の一つです。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る