14795.jpg
元外資系証券マンの解雇は「有効」、韓国人「レイハラ」主張も退ける…東京地裁
2024年06月27日 18時09分
#解雇 #外国人差別 #レイシャルハラスメント #韓国人

韓国人であることを理由に上司から「レイシャルハラスメント」(差別的な扱い)を受けたので、会社に申し立てたところ解雇されたとして、元外資系証券マンの40代男性が、損害賠償や解雇無効を求めた裁判の判決が6月27日、東京地裁であった。角谷昌毅裁判長は、請求を棄却した。(ライター・碓氷連太郎)

画像タイトル 原告の男性

韓国人であることを理由に上司から「レイシャルハラスメント」(差別的な扱い)を受けたので、会社に申し立てたところ解雇されたとして、元外資系証券マンの40代男性が、損害賠償や解雇無効を求めた裁判の判決が6月27日、東京地裁であった。角谷昌毅裁判長は、請求を棄却した。(ライター・碓氷連太郎)

画像タイトル 原告の男性

●上司から「天皇を侮辱するな」と言われた

原告側によると、男性は2007年、モルガン・スタンレーMUFG証券に転職した。当時の上司が2012年、男性に対して、当時の李明博大統領が天皇に謝罪を求める発言をしたことを根拠に「天皇を侮辱するな」などと述べたという。

さらに、この上司は、徴用工問題に対する韓国大法院の判決への不満をぶつけたり、韓国海軍が自衛隊の哨戒機に対してレーダーを照射した問題の際に「レーダー照射、どうにかしてくれ。あなたの先輩だろ」などと発言したという。

これらの言動がレイシャルハラスメントに該当するとして、男性は2020年3月、会社にハラスメント被害の調査を求めたものの、会社側は「威圧的、敵対的または不快な職場環境を作り出すほど悪質または蔓延している」というハラスメントの定義に該当しないとした。

また、会社は、調査開始時に秘密保持契約を理由に男性に守秘義務があると主張し、社内外の第三者に話すことの一切を禁止した。調査結果に納得がいかなかった男性は、ハラスメント調査の担当者や米国本社CEOなどにメールを送ったところ、自宅待機を命じられた。

その後も、男性は調査の不当性を訴えるメールを米国本社の経営陣などに送信したところ、9月に「けん責処分」を言い渡され、2021年1月に解雇を通知された。男性は解雇無効だけでなく、ハラスメントの調査義務違反などを理由とする損害賠償も求めていた。

画像タイトル 不当判決をかかげる原告側弁護団

●裁判所は「ハラスメントに該当しない」と認定した

判決後の記者会見で、原告代理人をつとめた川口智也弁護士は「レイシャルハラスメントに対しての理解が誤っている。またハラスメントに対する守秘義務の扱いと、解雇理由についても問題がある。人権意識がなさすぎる判決だ」と判決が不当だとして怒りの声をあげた。

今回の判決では、上司の発言について、男性に「本人にはどうすることもできない、国籍を根拠にした発言は不快感を与える」「精神的苦痛を与えるものである」としながらも、口調が威圧的ではなかったことなどから「ハラスメントには該当しない」と認定された。

また、守秘義務については、調査終了後も継続していて社内で調査結果についての意見を述べたことは懲戒事由にあたるとした。また、けん責処分を出されたあと、男性が会社の業務を妨害した事実はないが、裁判所は「今後、他の人に言いふらすのではないか」という「おそれ」があることを理由に、解雇は正当であるとした。 また、他部署から異動してきた同僚が業績を上げないのに降格されずにいたことに疑問を呈したところ、上司は「なぜ彼を嫌うのか。いい人じゃないか」と答えたという。同僚について不可解な人事であると抗議したことは「誹謗中傷」であり、それも解雇事由にあたるとした。

「この判決について非常に失望していて、とても受け入れることはない」。男性は落ち着いた様子で思いを口にした。そのうえで、今後控訴して、解雇の社会的相当性がないことを主張していきたいとした。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る