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性暴力事件で医大生に無罪判決、「部屋に入ったら同意?」SNSで紛糾…裁判所はどう判断したのか
2024年12月25日 16時35分
#フラワーデモ #滋賀医科大 #飯島健太郎 #性的同意

大阪高裁の無罪判決が波紋を呼んでいる。

滋賀医科大学の学生2人が知人女性への強制性交罪に問われた裁判の控訴審で、大阪高裁は12月18日、実刑とした1審の大津地裁判決を破棄して無罪を言い渡した。

これに対してネット上では、「相手の部屋に入っただけで同意があるとみなされる」「嫌だと言っても無罪になる」などと怒りや不安の書き込みが相次いでいる。ただ、中には誤解も多い。

そこで今回の逆転無罪について、判決要旨の内容を踏まえ、X(旧ツイッター)で広がった投稿の真偽を検証する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

画像タイトル 事件の経緯

大阪高裁の無罪判決が波紋を呼んでいる。

滋賀医科大学の学生2人が知人女性への強制性交罪に問われた裁判の控訴審で、大阪高裁は12月18日、実刑とした1審の大津地裁判決を破棄して無罪を言い渡した。

これに対してネット上では、「相手の部屋に入っただけで同意があるとみなされる」「嫌だと言っても無罪になる」などと怒りや不安の書き込みが相次いでいる。ただ、中には誤解も多い。

そこで今回の逆転無罪について、判決要旨の内容を踏まえ、X(旧ツイッター)で広がった投稿の真偽を検証する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

画像タイトル 事件の経緯

●1)「部屋に入ったら同意があるとみなされる」?

最初に目についたのは、今回の判決が「相手の部屋に入ったら性的行為に同意があるとみなされる」ことを認めたと主張する書き込みだ。

しかし、判決要旨にそうした記述はない。

今回の無罪判決は、暴行・脅迫や同意の有無、その影響下での性的行為について、当時の状況を詳細に検討した上で、「(被害者とされる女性が)同意の上で性交等に及んだ疑いを払拭できない」と結論づけている。

つまり、大阪高裁が「女性に同意があった」と認定しているわけではないことに注意が必要だ。

言い換えると、「相手の部屋に入ること」が「性的行為に同意したこと」を意味すると判断したわけでは全くない、ということだ。

結果的に、検察官側が「女性に同意がなかったこと」を立証できなかったといえるだろう。

画像タイトル 大阪高裁が入る庁舎(白熊 / PIXTA)

●2)「嫌だと言っても無罪になる」?

次のような書き込みも目立っていた。

<被害者が「嫌だ」「痛い」「やめてください」と言っても無罪になるのか?>

今回の事件では確かに、被害者の女性は事件現場のマンションに向かうエレベーター内で男子大学生から性的行為を求められた際に「やだー」「ダメダメ」と言ったり、部屋に入ってから男子大学生と口腔性交した後にも「今日は無理です」「ヤバい。ほんとに嫌だ」などと伝えたとされる。

ただ、大阪高裁では、そうした女性の発言について前後の状況やその時の流れなどを詳しく検討したうえで、強制性交等罪の成立要件である「暴行・脅迫」が認められず、女性が性的行為に同意していた疑いを払拭できるだけの立証がなされていないとの判断を下した。

つまり、「嫌だ」「痛い」「やめてください」といった発言だけで犯罪が成立するかどうかを考えているわけではなく、被害者が置かれた状況やそこに至る流れなどを踏まえて検討した結果だ。

逆にいえば、状況や解釈が違えば、「嫌だ」「痛い」「やめてください」といった発言が有罪の立証につながることは十分に考えられる。

●3)「卑わいな発言という範疇」とは?

また、判決の「卑わいな発言という範疇のものと評価可能」という表現にも批判が集まっている。

これはどのような行為に対する裁判所の評価だったのか。

画像タイトル 検察官が起訴した内容や争点、裁判所の判断を整理した表

判決要旨によると、それは脅迫(3)と口腔性交(2)(表を参照)について検討する中で、使われた表現だ。

証拠とされた動画の中で、口腔性交の最中に「苦しい」と言った女性に対し、男子大学生が「が、いいってなるまでしろよお前」と発言したという。

これについて、判決では男子大学生2人と女性の間で、かわるがわる口腔性交が行われていた中での発言だとした上で、「いわゆる性行為の際に見られることもある卑わいな発言という範疇のものと評価可能である」とした。

また、「この発言の前後のやりとりの中に緊迫感やこれに類するものがない」ことを踏まえ、「既に行われている性行為の中でその一環としてなされた言動であって、女性の反抗を抑圧して性交等を行うための手段になっているものではない」として、強制性交罪における脅迫とは認めなかった。

●同じ事実に基づく別の解釈もありうる

以上のように、大阪高裁の判断は当時の状況やその前後の流れを踏まえてなされたものであるため、文脈を抜きにして判決の良し悪しを評価することは非常に難しい。

同じ事実に基づいて別の解釈(例:男子学生の発言を脅迫とみなす、など)が導き出される可能性もあるといえそうだ。

その意味で、国民が事実に基づいて判決の内容や裁判所の判断を疑問視したり批判したりする活動は、刑事司法に関わる裁判官や検察官に適切な緊張感を与えることにつながる。

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