車のフロントガラスに「初心者マーク」を付けた状態で運転する写真がXに投稿され、「法令違反ではないか」と指摘する声が上がっています。
どうやら、初心者マークを貼る位置は法律で決められているというのです。
投稿には「息子初運転」とのコメントが添えられており、微笑ましくも感じられますが、はたして「法令違反」になるのでしょうか。交通関係にくわしい西村裕一弁護士に聞きました。
●初心者マークを貼る位置は法律で決まっている
──初心者マーク(初心運転者標識)は、どんな人がどこに貼らなければいけないのでしょうか。
普通自動車の免許を取得して1年未満のドライバーは、初心者マークを付けて運転しなければなりません(道路交通法71条の5第2項)。
道路交通法では「内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に」貼るように定めています。
これを受けた政令である道路交通法施行規則では、「地上0.4メートル以上1.2メートル以下の位置に前方又は後方から見やすいように表示するものとする」と具体的に定めています(道路交通法施行規則9条の6)。
──今回のように「フロントガラスに貼る」と、どんな違反にあたるのでしょうか。
写真では車高が不明ですが、もし表示の高さが基準(地上0.4メートル以上1.2メートル以下)を外れていれば、道路交通法施行規則に違反する可能性があります。
さらに問題なのは、貼る場所が「フロントガラス」である点です。
フロントガラスに貼ることができるものは、道路運送車両の保安基準で厳格に定められています。保安基準29条によると、フロントガラスに貼り付けることができるのは、原則として「検査標章」(車検のシール)のみです。
したがって、初心者マークをフロントガラスに貼ることは保安基準違反にあたり、結果として道路交通法62条に違反する「整備不良車両」となります。
この場合、運転したり運転させたりした人は「3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金」に処される可能性があります(道路交通法119条2項)。
初心者マークを貼る位置としては、車の前面ではボンネット付近、後面はトランク付近の見やすい場所に表示するのが一般的です。
●ベテランが「初心者マーク」付きの車を運転してOK?
──今回は免許取り立ての人が運転していましたが、たとえば親など運転歴の長い人が同じ車を運転するとき、初心者マークを外す必要はあるのでしょうか。
1年未満の人と車を共有している場合、ベテランドライバーが初心者マーク付きの車を運転するケースもあります。
初心者マークの趣旨は「運転技能が未熟と考えられるため1年未満は対外的に表示する」点にあるため、1年以上のドライバーが付けたまま運転するのは望ましくありません。
ただし、法律上は、1年未満は初心者マークを付けないで「普通自動車を運転してはならない」と定めるだけで、「1年以上のドライバーが初心者マークを付けて運転してはならない」という規定はありません。
したがって、ベテランドライバーが初心者マーク付きの車を運転しても、ただちに道路交通法違反になるわけではありません。