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「未成年後見人」の祖母が孫の財産3800万円を横領――未成年後見人ってなに?
2014年11月04日 14時40分

母を交通事故で亡くした少女が、「未成年後見人」となった祖母に保険金を横領された。その原因は、宮崎家庭裁判所の監督が適切でなかったからだとして、少女側が国などに損害賠償を求めた。宮崎地裁は10月中旬、国に約2500万円の支払いを命じる判決を下した。

報道によると、少女は2007年、母親を交通事故で亡くした。少女は当時5歳で、祖母が「未成年後見人」に選ばれた。少女が受け取る保険金は、未成年後見人だった祖母の口座に入金されたが、そのうち約3800万円が祖母に横領されてしまった。その後、祖母は業務上横領罪で起訴され、懲役3年6月の有罪判決が確定したという。

裁判所は、少女の父親が「祖母は金にルーズ」と後見人の解任を申し立てていたことや、家裁側が祖母に通帳の写しや入金の報告を求めていなかったことを重視。「被害を防止する措置を怠ったと言わざるを得ない」と判断した。

この事件で問題となった「未成年後見人」とは、いったい何なのだろうか? どういった場合に未成年後見人が選任されるのだろうか。制度にくわしい山川典孝弁護士に聞いた。

母を交通事故で亡くした少女が、「未成年後見人」となった祖母に保険金を横領された。その原因は、宮崎家庭裁判所の監督が適切でなかったからだとして、少女側が国などに損害賠償を求めた。宮崎地裁は10月中旬、国に約2500万円の支払いを命じる判決を下した。

報道によると、少女は2007年、母親を交通事故で亡くした。少女は当時5歳で、祖母が「未成年後見人」に選ばれた。少女が受け取る保険金は、未成年後見人だった祖母の口座に入金されたが、そのうち約3800万円が祖母に横領されてしまった。その後、祖母は業務上横領罪で起訴され、懲役3年6月の有罪判決が確定したという。

裁判所は、少女の父親が「祖母は金にルーズ」と後見人の解任を申し立てていたことや、家裁側が祖母に通帳の写しや入金の報告を求めていなかったことを重視。「被害を防止する措置を怠ったと言わざるを得ない」と判断した。

この事件で問題となった「未成年後見人」とは、いったい何なのだろうか? どういった場合に未成年後見人が選任されるのだろうか。制度にくわしい山川典孝弁護士に聞いた。

●未成年後見人が必要になるのは?

「未成年後見人は、簡単にいうと、『親の代わりに子どもの面倒をみる人』です」

山川弁護士はこう切り出した。

「未成年後見人が選任されるパターンは、2つあります。ひとつめは、『親権者がいないとき』。これはたとえば、両親がともに亡くなった場合です」

もうひとつのパターンは何だろう?

「もうひとつは、親権者はいるのですが、その人が財産管理権をもっていない場合です」

どういうことだろうか?

「親権は、2つの権利にわけることができます。簡単にいうと、『子の成長のために監護・教育をする権利』(身上監護権)と、『子の財産を管理する権利』(財産管理権)です。

そして、子の財産管理が不適切だったりすると、親権を持っている人が、親権のうち財産管理権だけを失う場合があるのです(民法835条)。

こうした場合、未成年者の財産を管理する人が必要になり、未成年後見人が選任されるのです」

●未成年後見人は、裁判所が選ぶ

誰が未成年後見人になるのだろうか?

「未成年後見人を選ぶ方法は、2つあります。

ひとつは、『親権者』が遺言で未成年後見人を指定する方法です(民法839条)。

もうひとつは、『家庭裁判所』が未成年後見人を選任する方法です(民法840条)。

後者では、未成年者本人や、親族などの申立てに基づいて、家庭裁判所が相当と認める未成年後見人を選任します」

●家裁への報告義務がある

未成年後見人になると、どんなことをしなければならないのだろう。

「未成年後見人は通常、選任されたあと、ひと月程度で、家庭裁判所に対して、初回の報告を行います。具体的には、事務報告書や財産目録、年間収支予定表を家庭裁判所に提出するほか、未提出の預金通帳や保険証券などがあれば、添付資料として提出する必要があります。

家庭裁判所はこうした資料から、未成年(被後見人)の財産状況や生活状況などを把握するわけです。未成年後見人の報告に不自然な点などがあれば、未成年後見人に指導をしたり、追加の報告を求めることになります」

●「不正防止」の目的も

「未成年後見人は、おおむね年1回程度、家庭裁判所に報告を行うことになっています。

たとえば、東京家裁ではその際、事務報告書や財産目録、収支状況報告書に加えて、過去1年分の通帳の写しを提出することになっております。

こういった制度は、今回の事件のような、未成年後見人による不正を防止することも目的にしているのです」

つまり、家庭裁判所は「未成年後見人」が悪さをしないように、監視しているわけだ。

「そうですね。加えて、裁判所は、事案によって、未成年後見人がキチンと役目を果たしているかを監督する人(未成年後見監督人)をつけることもあります(民法849条)」

山川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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