15079.jpg
「姿勢が悪い」中学生の髪をライターで焦がした教師ーーどんな罪になる?
2016年02月15日 12時17分

兵庫県加西市の市立中学校の授業中に、男性教師が1年生の男子生徒の「髪の毛」をライターの火で焦がしていたことがわかった。この教師は1月20日、国語の授業中に「姿勢が悪い」と男子生徒を注意したが、態度を改めなかったので怒り、持っていたライターの火で生徒の髪の毛を焦がしたという。生徒にけがはなかった。

教師は同日、生徒宅を訪問し、「不適切な行為だった」として謝罪した。加西市の教育委員会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「生徒は元気に登校している。教師に対する処分の方針はまだ確定していない」と話している。

たとえ生徒が態度を改めなかったのだとしても、髪の毛をライターで焦がすことは、いきすぎた指導といえそうだ。このような行為は何らかの犯罪にあたらないのか。三村雅一弁護士に聞いた。

兵庫県加西市の市立中学校の授業中に、男性教師が1年生の男子生徒の「髪の毛」をライターの火で焦がしていたことがわかった。この教師は1月20日、国語の授業中に「姿勢が悪い」と男子生徒を注意したが、態度を改めなかったので怒り、持っていたライターの火で生徒の髪の毛を焦がしたという。生徒にけがはなかった。

教師は同日、生徒宅を訪問し、「不適切な行為だった」として謝罪した。加西市の教育委員会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「生徒は元気に登校している。教師に対する処分の方針はまだ確定していない」と話している。

たとえ生徒が態度を改めなかったのだとしても、髪の毛をライターで焦がすことは、いきすぎた指導といえそうだ。このような行為は何らかの犯罪にあたらないのか。三村雅一弁護士に聞いた。

●「傷害罪」か「暴行罪」にあたる

「本件の教師の行為は、体罰にあたります。体罰が違法な行為であることに議論の余地はありません。懲戒処分という行政上の責任や、損害賠償請求という民事上の責任が、問題となり得ます。さらに、刑事上の責任を問われる可能性もあります」

どのような責任を問われる可能性があるのか。

「刑事上の責任としては、『傷害罪』(刑法204条)か、『暴行罪』(刑法208条)にあたる可能性があると考えます。

過去には、他人の髪の毛を勝手に切る行為については、傷害ではなく『暴行』にあたるという判例(大審院明治45年6月20日判決)があります。また、女性の髪の毛の全部を根元から不整形に切除した行為については、『傷害』の罪にあたるとした判例(東京地裁昭和38年3月23日判決)もあります。

さらに、不法行為に基づく損害賠償を請求ができると考えられます。本件は公立中学校で起きていることから、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負うことになると考えられます」

●生徒が相談できる「第三者機関の窓口」を設置せよ

体罰は後をたたない。そこで、三村弁護士は次のように提言する。

「文部科学省は、体罰を防止するために、教育委員会と校長、教員が協力して、体罰の実態把握と事案発生時の報告の徹底を図るよう求めています。しかし、本件においては、体罰があったにもかかわらず、校長から教育委員会への報告がされていなかったと報じられています。ここに大きな問題があります。

文部科学省からは、体罰の禁止を徹底するための方法について通知が出されています。にもかかわらず、本件のように学校内部で隠蔽されてしまうケースが多々あるように思われます。

文部科学省からの通知内容が徹底されるべきなのはもちろん、体罰を防ぐためには、体罰を受けた児童生徒が主体的に被害を訴え、相談できる『第三者機関的な窓口』を設置し、それを児童生徒に対して周知することが不可欠であると考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る