15183.jpg
猪瀬知事の「借用証」はマネしてはいけない!弁護士が教える「正しい借用証」の書き方
2013年12月13日 19時35分

東京都の猪瀬直樹知事が医療法人の徳洲会グループから5000万円を受け取っていた問題。猪瀬知事が選挙資金ではなく、あくまで個人で借り入れた証拠として示した「借用書」(借用証)が話題となっている。その金額の大きさにそぐわない、極めてシンプルな内容だったからだ。

猪瀬知事が記者団に示した1枚の紙には、貸した側と借りた猪瀬氏の双方の名前と金額、日付などが書かれているだけで、ハンコが押されていないものだった。ネットなどでは「収入印紙が貼っていない」「巨額の借り入れなのに金利や担保、返済期日が書かれていないのは不自然」「金額は『5000万円』と記されていたが、普通は『伍千万円』では?」といった指摘がされている。

はたして、猪瀬氏の「借用証」は法的に有効なものなのだろうか。そもそも、金銭の貸し借りの際はどういうスタイルの文書を作るべきなのか。約30年の弁護士経験をもつ小松雅彦弁護士に聞いた。

東京都の猪瀬直樹知事が医療法人の徳洲会グループから5000万円を受け取っていた問題。猪瀬知事が選挙資金ではなく、あくまで個人で借り入れた証拠として示した「借用書」(借用証)が話題となっている。その金額の大きさにそぐわない、極めてシンプルな内容だったからだ。

猪瀬知事が記者団に示した1枚の紙には、貸した側と借りた猪瀬氏の双方の名前と金額、日付などが書かれているだけで、ハンコが押されていないものだった。ネットなどでは「収入印紙が貼っていない」「巨額の借り入れなのに金利や担保、返済期日が書かれていないのは不自然」「金額は『5000万円』と記されていたが、普通は『伍千万円』では?」といった指摘がされている。

はたして、猪瀬氏の「借用証」は法的に有効なものなのだろうか。そもそも、金銭の貸し借りの際はどういうスタイルの文書を作るべきなのか。約30年の弁護士経験をもつ小松雅彦弁護士に聞いた。

●猪瀬知事の借用証は「異例なもの」

「借用証(借用書、借用証書)は、金銭や物品を借りたことを証明する書類です。しかし、猪瀬氏が示した借用証は、『お金を借りた』『いつまでにいくら返す』といった通常あるべき文言がなく、捺印もない異例なものですね。

借用証は契約書ではなく、一方の当事者によって手軽に作れるものなのに、大事な事項(文言)が抜けているのはとてもおかしいと思います」

小松弁護士はこのように指摘する。あちこちから追及されている猪瀬知事の借用証は、ベテラン弁護士の目にもやはり「異例なもの」と映ったとのことだ。収入印紙が貼られていない点はどうか?

「税務当局は借用証も契約書として扱います。つまり、借用書はいわゆる『課税文書』にあたりますので、5000万円だと、収入印紙額は2万円となります。ただ、実際には、印紙を貼っていない借用証も多いのですが・・・」

では、猪瀬氏の借用証は、金銭の貸し借りを証明できる代物なのだろうか?

「もし裁判で、このような文書が相手方から出されたら、『金銭消費貸借契約の重要な事項が抜けているから証拠としての価値に乏しい、借金の事実はない』という主張をするかもしれません。

しかし裁判では、このような異例の文書も1つの証拠として扱われ、他の証拠等も含めて総合的に判断されますので、全く無意味ということではありません」

●お金の貸し借りの際には『金銭消費貸借契約書』をつくる

どうやら、猪瀬知事の借用証が一般的なものから「ズレた形式」であることは、間違いなさそうだ。では、通常の金銭の貸し借りにおいて、どういうスタイルの文書を用意するべきなのだろうか。

「お金の貸し借りの際に作るべき標準的な書類は、『金銭消費貸借契約書』です。

まず、(1)貸主と借主の住所・氏名の記載、捺印をします。そして、(2)いつ借りたか(書面作成日にすることが多い)、(3)いくら借りたか、(4)いつ返すのか、(5)返済は分割か一括か、(6)返済は持参か送金か、(7)利息・損害金はどうするのか、(8)保証人に関する事項(保証人がいるときはその住所氏名・捺印)等の合意内容が記載されるべきでしょう。

さらに、確かに当事者の意思による書面だということを裏付けるために、印鑑は実印が望ましく、印鑑証明を添付することもあります」

小松弁護士はこのように「金銭消費貸借契約書」の作り方を説明している。猪瀬氏への資金提供問題をめぐっては、都議会も厳しく追及しているが、少なくとも、お金の貸し借りの際にお手本にすべき借用書ではなかった、とはいえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る