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「スマホで買える太陽光発電所」業者が破産 出資者1万2000人「省庁が推してたのに…」
2023年04月08日 09時19分

太陽光発電の投資を募る「ワットストア」を運営していた山形県の企業が2023年2月末、東京地裁から破産開始決定を受けた。東京商工リサーチによると、負債は債権者1万2194人に対して38億4084万円だという。

運営会社「チェンジ・ザ・ワールド」の池田友喜社長は、破産申請時の理由について2022年6月1日に施行された改正預託法に抵触し、事業継続ができなくなったと文書で説明している。

しかし複数の債権者によると、2022年秋や冬にも販促キャンペーンを繰り返し、資金を集めていたという。消費者被害に詳しい阿部克臣弁護士は「事業継続が不可能だったにもかかわらず勧誘を続けていたことになり、違法な勧誘にあたる可能性がある」と指摘する。

会社は2020年に環境省や経済産業省の表彰を受けており、今国会で野党議員が政府の姿勢を問題視。河野太郎消費者担当大臣は3月22日、預託法違反のおそれのある事業者を推薦・表彰していないか洗い出すよう各省庁に依頼したことを会見で明らかにした。

代表の写真(会社説明動画より)

太陽光発電の投資を募る「ワットストア」を運営していた山形県の企業が2023年2月末、東京地裁から破産開始決定を受けた。東京商工リサーチによると、負債は債権者1万2194人に対して38億4084万円だという。

運営会社「チェンジ・ザ・ワールド」の池田友喜社長は、破産申請時の理由について2022年6月1日に施行された改正預託法に抵触し、事業継続ができなくなったと文書で説明している。

しかし複数の債権者によると、2022年秋や冬にも販促キャンペーンを繰り返し、資金を集めていたという。消費者被害に詳しい阿部克臣弁護士は「事業継続が不可能だったにもかかわらず勧誘を続けていたことになり、違法な勧誘にあたる可能性がある」と指摘する。

会社は2020年に環境省や経済産業省の表彰を受けており、今国会で野党議員が政府の姿勢を問題視。河野太郎消費者担当大臣は3月22日、預託法違反のおそれのある事業者を推薦・表彰していないか洗い出すよう各省庁に依頼したことを会見で明らかにした。

代表の写真(会社説明動画より)

●弁護士「現時点で詐欺とは判断できない」

預託法改正は、多くの被害者を生んだ販売預託商法を原則禁止とするために2021年6月に決まった。磁気治療ベストなどを買わせるジャパンライフ事件や、和牛のオーナー制度の安愚楽牧場事件などの悪徳商法が問題化したためだ。

ワットストアは2017年7月にサービスを開始。農地に太陽光パネルを設置するソーラーシェアリング方式の発電所を各地に設置し、出資者はワットを購入することで発電所を共有し、売電収入をサイト内通貨「チェンジコイン」で配当として受け取れるという仕組みだった。

300円という少額から投資できるため「スマホで買える太陽光発電所」というキャッチフレーズで、出資者を募集。大手航空会社のマイルや携帯会社のポイントなどへの還元を売りに事業を拡大した。

阿部弁護士は「このスキーム全体がポンジー的なもの(出資資金を運用して還元するとかたり、実際には集めたお金を“配当金”などと偽ることで、運用で利益が生まれているように装う詐欺の一種)なのかは、現時点の情報では判断できません」とする。

ただし、改正預託法の施行以降も事業継続が困難だと分かっていたのに勧誘を続けていたとすれば問題だとする。

「(加工食品の通信販売業で代表らが出資法違反などで実刑判決を受けた)ケフィア事業振興会の事案では、破綻直前の出資勧誘につき刑事の詐欺罪に問われた者もいます」

環境省HPで紹介された実際の画面(現在は削除)

●国会で議題に 消費者大臣「問題意識は共有」

預託法違反のおそれがあるにもかかわらず、2021年の改正決定後も出資者がいたのは、国の複数の機関が事業に「お墨付き」を与えていたことも背景にある。

2020年には東北経済局が選ぶスタートアップ企業「J-Startup TOHOKU」に名を連ねたほか、環境省の「グッドライフアワード」を受賞。また環境省のポータルサイト「再エネスタート」でも紹介記事が出ていた。

約53万円出資していたという20代のAさん(中国地方在住)がYouTubeの広告に惹かれて購入したのは2021年6月だった。

「省庁や大手企業のポイントもあったので安心していました。法改正の決定後もウェブサイトには掲載されていたのに、破産になってから削除して何事もなかったように言うのはおかしいと思います」と疑問を呈する。

1500万円超をつぎこんだ50代の女性(関西地方在住)も「農地も活用できて環境にも優しいと聞いて、タンス預金よりはいいかなと2021年8月以降、購入を増やしていきました」と話す。

近年は風力発電のキャンペーンも始まり「数時間で完売」などと購入を急がせるようなメールも多かったという。最後に購入したのは、改正法施行後の2022年11月だった。

「投資は自己責任ではあるけれど、省庁の表彰などで信用度が高かったのは確かです。夫にも金額は言えずにいます。破産が発表された2〜3月は眠れなかった。高い勉強代では終わりたくありません」

3月16日の参院消費者特別委員会で舟山康江議員(国民民主)から表彰の責任を問われた経産省や環境省の担当者は「応募や推薦だった」などと主体的な選定を否定。舟山議員は「法改正は未然防止のためだったはず。被害が出て初めて分かるのでは意味がない」と厳しく批判した。

これを受け、河野大臣は「問題意識を共有する」と答弁。3月22日の閣僚懇談会で各大臣に対し、省庁が表彰や推薦した企業に預託法違反のおそれがないか調べるよう改めて依頼をしたという。

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