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誹謗中傷でプロバイダから「意見照会」、発信者情報の開示に「不同意」選ぶとどうなる? 「無視」は最悪の結果になるおそれも
2025年03月16日 08時13分

インターネットやSNSで、誹謗中傷など他人の権利侵害をした投稿者を特定するための法的な手続きにおいて、プロバイダから発信者情報(個人情報)を開示してよいかどうかの意向を問われる「意見照会」が投稿者に届くことがある。

開示に「同意する」と回答すべきなのか。あるいは不開示と答えたり無視したりすると、どのような展開が待っているのだろうか。インターネット上のトラブルにくわしい弁護士が解説する。

インターネットやSNSで、誹謗中傷など他人の権利侵害をした投稿者を特定するための法的な手続きにおいて、プロバイダから発信者情報(個人情報)を開示してよいかどうかの意向を問われる「意見照会」が投稿者に届くことがある。

開示に「同意する」と回答すべきなのか。あるいは不開示と答えたり無視したりすると、どのような展開が待っているのだろうか。インターネット上のトラブルにくわしい弁護士が解説する。

●チケットサイトの“転売ヤー”に届いた「意見照会」

弁護士ドットコムに寄せられた相談によると、あるチケットサイトで転売したという相談者(出品者)のもとに意見照会があったという。

イベント主催者による開示請求について、相談者は「開示に同意せずに対応したい」「同意しない場合、不利になるのか」と気になっている。

この相談のほかにも、名誉毀損の口コミをネット掲示板に書いてしまった人たちなどから、意見照会への対応をめぐって数多くの相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

もし発信者情報が開示された場合、相手側から損害賠償を求められたり、ときには刑事告訴されることもありうる。

権利侵害にあたりそうな投稿をしてしまった人たちには、開示に同意しなかったり、回答を無視した場合、自分の身元が特定されることを避けられるのではないか、という思惑も透けて見える。

はたして、意見照会に対する回答次第で、どのような展開が待っているのか。インターネット上のトラブルにくわしい日向一仁弁護士に聞いた。

●回答書には何を書く?

——発信者情報開示請求における「意見照会」の制度とはどのようなものでしょうか

いわゆる「プロバイダ責任制限法」で定められた一連の手続きの中の一つです。

たとえば、ネット上の書き込みで権利侵害された場合、被害者は、プロバイダやサーバの管理・運営者といった「特定電気通信役務提供者」に対して、保有されている発信者情報の開示を請求できます。

開示請求を受けたプロバイダは、その情報の発信者(書き込んだ人)に対して、情報の開示の可否について意見を聞くことになっています。これが「意見照会」と呼ばれるものです。発信者には、意見照会の通知や回答書などが届きます。

画像タイトル いつか届くかも(bluet / PIXTA)※写真はイメージです

——回答書にはどんな内容を書くのでしょうか

発信者は、発信者情報の開示に同意するか否かと、同意しない場合にはその理由も回答書に記載して、回答期限までに返送します。回答期限は2週間程度ということが多いのですが、それぞれのケースで異なることもあります。

——発信者から任意の意見照会の回答書を受け取った場合、その回答次第でプロバイダは開示についてどのように決めるのでしょうか

発信者が開示に同意した場合には、住所・氏名など発信者情報が開示請求者に開示されます。

発信者が開示に不同意とした場合や回答がない(無視した)場合には、プロバイダ側で権利侵害の有無を検討して、開示するかどうかを判断することになります。

プロバイダが開示妥当と判断した場合には、発信者情報が開示されますが、発信者側が「不同意」と回答していた場合には、プロバイダが、発信者の同意がないということで開示に消極的になり、開示しない場合もあります。

このような検討のうえで、プロバイダが開示を拒否した場合には、それが開示請求者に伝えられます。

この場合、開示請求者が、発信者情報開示を求める裁判手続きをおこなうことがあります。この裁判手続きで、裁判所がプロバイダに発信者情報の開示を命令すると、プロバイダは発信者情報を開示します。

●意見照会を無視すれば、最悪、賠償額が増えることも

——発信者側が意見照会に回答しない(無視)場合、どのようなデメリットがありますか

無視するとプロバイダは反論がないものとして扱います。

そのため、自分の書き込みが「権利侵害に該当しない」と考えた場合には、無視せずに、そのように考える理由を記載して回答したほうがよいでしょう。

しかし、その反論が法的な観点から妥当なものかどうか判断することは難しいので、回答の際には弁護士への相談をおすすめします。

意見照会に記載された書き込みに心当たりがある場合、無視しても、発信者情報の開示を免れるわけではないことには、注意しなければいけません。

たとえば、インターネット上で誹謗中傷を理由とした発信者情報開示請求がおこなわれ、書き込みをしたことに心当たりがあるケースを考えてみましょう。

書き込んだ人が意見照会を無視したことで、被害者が開示のために裁判手続きをするようなことになれば、被害者からの印象がさらに悪くなるだけでなく、その裁判手続きにかかった弁護士費用の賠償まで求められることがあります。

そうなると示談する場合の条件が厳しくなってしまうのです。

示談しない場合でも、民事の損害賠償請求訴訟を起こされて、裁判で賠償責任が認められてしまう可能性もあります。

簡単にいえば、意見照会を無視したことで、支払う賠償額が増える可能性があるということです。

画像タイトル 意見照会の内容に心当たりのある女性(Luce / PIXTA)※イメージです

さらに、被害者が刑事告訴した場合には、名誉毀損罪に問われるなど、刑事責任まで問題になってしまいます。

意見照会に対して、同意・不同意・無視にかかわらず、刑事告訴のリスクは考えられます。

ただし、開示に同意して、早期に謝罪して示談に至った場合には、告訴しないでもらえることもありえます。名誉毀損罪は親告罪なので、すでに告訴していた場合に取り下げてもらえば、起訴されません。

そのため、意見照会が届いた場合には、状況次第では、早期に謝罪の意向を示して示談を選択することも重要になります。のちのち不利益につながることもあるので、無視することはやめて、よくわからなければ、弁護士などに相談しましょう。

●「本当に心当たりがない」でも無視は悪手→同居の家族がやっている可能性も

——チケットサイトに出品していた投稿者からの意見照会では、どのように対応すべきでしょうか

転売目的でチケット売買をして、チケットサイトから意見照会が届いたというケースでは、イベント主催者が出品について不正転売や業務妨害などを理由としていると考えられます。

この場合、意見照会に同意しないのであれば、回答書に、そういった不正転売に該当しないことなどを理由として記載します。

主催者のチケット売買に関するルールに関しても確認することも必要です。もし不正転売に心当たりがあれば、早期に謝罪や示談に向けて動いたほうがよいでしょう。

なお、意見照会の通知の内容に「まったく心当たりがない」というケースもあると思われます。

そのような場合であっても、自分の契約しているプロバイダを通じて問題となっている投稿がされていると考えましょう。

無視せずに、同じプロバイダを利用している家族や同居されている人、最近家に遊びに来た友人らに心当たりがないか確認すべきです。

「問題となる書き込みや投稿をしない」。これが何よりも大切ですが、万一、意見照会が届いてしまった場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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