「猛暑なので北海道に住む両親の家にエアコンを設置したいけど、拒否されて困っている」ーー。都内で自営業を営むMさん(40代)は、北海道に住む両親のことで頭を悩ませている。
北海道でも異例の暑さが続いているが、Mさんの実家にはエアコンが設置されていない。北海道はこれまで、夏の暑さが他の地域と比較して短期間で終わるため、エアコンを設置していない家庭も少なくなかったという。
しかし、今年の猛暑は北海道も例外ではなく、40度に迫る暑さとなった日もある。こうした中で、Mさんは「費用を出すからエアコンをつけて」と両親に伝えているのだが、両親は頑なに「いらない」といって受け付けないという。
Mさんは「いっそ、両親に黙って設置工事の依頼のしてはどうか」とまで考えている。いくら両親とはいえ、勝手に実家にエアコンを設置することはできるのだろうか。青木一愛弁護士に聞いた。
● 両親の意思に反して工事業者が自宅に立ち入ったら「住居侵入罪」になりかねない
ーーエアコンを設置するとなると、業者が両親の自宅に入ることが必須となりますが、両親の意思に反してまで自宅に入ることは認められるのでしょうか。
この場合、ご両親がエアコン設置の事情を一切知らないとなると、業者の方をご自宅に上げるか上げないかで一悶着が起きてしまうことになります。
業者の方も、ご両親が明示的に自宅への立ち入りを拒否する意思を明確に示している状況となると「お子さんから頼まれてますので」と言って強引に立ち入ってしまえば住居侵入罪(刑法第130条)が成立しかねません。
このような状況ではエアコン設置工事は行って頂けないことになろうかと思われます。
●心配する子どもの気持ちは考慮されないの?
ーー子どもとしては、両親の身を案じてエアコンを設置しようとしています。そうした目的は考慮されないのでしょうか。
お子さんとしては、ご両親に万が一のことがあってはならないとのことで、扶養義務があるのだから積極的に動いた方が良いとのお考えかもしれません。
しかし、民法の扶養義務は、扶養を求める側からの意思表示があることが前提であるため、ご両親からこのような意思表示が無い状況だとすると、扶養義務に基づく具体的な行為を行うことまでは求められていない、ということになります。
ご両親が認知症等で正常な判断ができない場合には後見制度を利用する必要があるかもしれませんが、そのような常況にないのであれば、多少危なっかしい面があったとしてもご両親の判断を見守っていく、というのが第一義的なスタンスとなるでしょう。