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ブライダル業界の取引、独禁法違反の疑い「4割」…公取委は何を問題視したのか?
2017年04月02日 09時45分

公正取引委員会は3月22日、ブライダルや葬儀に関する取引について、独占禁止法や下請法などに違反する実態があるとの調査結果を発表した。

ブライダル業者や葬儀業者に3500通、納入業者に7000通の調査票を送り、それぞれ1603、3456の回答を得た。納入業者の約38%は、ブライダル業者から独禁法上問題となり得る行為を受けたという回答した(435取引)。

その中でもっとも多かったのは、「商品やサービスの購入・利用を要請された」(24%)というケース。「年間取引高に応じて、ブライダル業者から一方的に(イベントチケットを)『お宅は○○万円買ってもらうから』などと言われ、全く異論を差し挟む余地がなかった」といったケースが紹介されていた。

このほかにも、「新聞広告の協賛金の提供を要請される」「新郎新婦の名前等を入れたオリジナル商品を返品された」などのケースがあった。

今回問題とされているブライダル業者の行為について、公正取引委員会は、なぜ独禁法や下請法上問題があると考えているのか。独禁法の問題に詳しい籔内俊輔弁護士に聞いた。

公正取引委員会は3月22日、ブライダルや葬儀に関する取引について、独占禁止法や下請法などに違反する実態があるとの調査結果を発表した。

ブライダル業者や葬儀業者に3500通、納入業者に7000通の調査票を送り、それぞれ1603、3456の回答を得た。納入業者の約38%は、ブライダル業者から独禁法上問題となり得る行為を受けたという回答した(435取引)。

その中でもっとも多かったのは、「商品やサービスの購入・利用を要請された」(24%)というケース。「年間取引高に応じて、ブライダル業者から一方的に(イベントチケットを)『お宅は○○万円買ってもらうから』などと言われ、全く異論を差し挟む余地がなかった」といったケースが紹介されていた。

このほかにも、「新聞広告の協賛金の提供を要請される」「新郎新婦の名前等を入れたオリジナル商品を返品された」などのケースがあった。

今回問題とされているブライダル業者の行為について、公正取引委員会は、なぜ独禁法や下請法上問題があると考えているのか。独禁法の問題に詳しい籔内俊輔弁護士に聞いた。

●「応じたくないが、今後の取引への影響を考えると受け入れざるを得ない」

公取委は、今回の実態調査の結果として、それぞれの業界において、ブライダル業者や葬儀業者が、料理、花、返礼品・引出物等の納入や人材派遣・演出等を行う取引先に対して不利益を与える要請をした場合に、取引先としては、「応じたくないが、今後の取引への影響を考えると受け入れざるを得ない」といったケースが少なからず存在することを問題視しています。

具体的には次のようなケースです。

(1)ブライダル業者や葬儀業者が取り扱っている商品・サービスについて購買担当者等の取引に影響を及ぼしうる者からの購入要請、購入目標を定めて購入要請をして購入実績が低いと取引量を減らす等(商品・サービスの購入・利用の要請)

(2)取引先からの仕入の増加等に直接関係しない販促企画についての協賛金提供要請や、事前に負担額や算出根拠、目的等を明確にしてない協賛金提供要請等(金銭・物品の提供の要請)

(3)取引先と事前に設定した単価を下回る低い単価を一方的に指定したり、当初の予定よりも多く商品等を納入したのに代金を据え置いたりする等(採算確保が困難な取引(買いたたき))

このように、取引先に対して、事前予測が困難な不利益を課したり、合理性に欠ける重い負担を一方的に課したりする行為は、独占禁止法で禁止されている「優越的地位の濫用」にあたる可能性があります。

また、包装等に氏名を記載した返礼品等の他に転用できない商品(仕様が定まった商品)の納入取引には、取引の当事者間の資本金額によっては、下請法が適用される可能性がありますが、下請法でも同様に上記のような行為は禁止されています。

●「強い立場を利用し取引先に不当に不利益を課している場合、優越的地位の濫用の可能性」

ブライダル業と葬儀業においては、市場規模自体は縮小傾向にあり、葬儀や披露宴の小規模化・多様化に伴う売上減少や新規参入の増加で、市場での競争が激しくなっています。そのしわ寄せが、取引先に対しても及んでいるという実態も一部にあるようです。

ブライダル業者や葬儀業者としては、(1)から(3)のような要請に柔軟に対応してくれる自社にメリットのある取引先と付き合うようにしたいという思いもあってか、そのような行為が法律上問題になるという意識が低いのかもしれません。

しかし、ブライダル業者や葬儀業者が、(1)から(3)のような要請をして、これを取引先が受け入れている事実から、取引先との関係で立場が強いことが伺われます。そのため、そうした立場を利用して取引先に不当に不利益を課している場合には、優越的地位の濫用として問題になると考えられます。

独禁法や下請法上問題がない取引を行うためには、例えば、商品・サービスの購入・利用の要請については、ノルマを課したり、取引への影響を示唆したりせず、また、取引の窓口になっている購買担当者から要請をしたりしないようにするといった対応が考えられます。

そして、協賛金の提供要請や買いたたきについても、取引先との十分な協議を行い、要請の根拠を合理的に説明したり、合理性のある範囲・内容の要請に留めたりすることが必要と考えられます。

(弁護士ドットコムニュース)

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