15661.jpg
「定価20万円」の着物を「35万円」で販売…「いくらで売ってもいい」こんなのアリ?
2016年09月13日 00時00分

弁護士ドットコムライフの体験談募集に、50代の女性が、大手着物店で販売の仕事をしていたときの経験を投稿しました。女性が働いていた店では、客が来店すると、言葉巧みに客の身体に着物(反物の状態)や帯を巻き付けて、客が気に入れば着物はいくら、帯はいくらと明細を出すそうです。しかし、ここで1つ問題が。

女性いわく、着物は「洋服と違いハンガーにぶらさがった商品を自由に見る訳じゃない」ため、客は自分の身体に巻き付けられた着物や帯の定価が分からないのだとか。それをいいことに、店員の中には、着物を定価よりも高く売ったり、仕立て代込みの価格にもかかわらず、別途仕立て代を請求する人がいたといいます。女性によると、20万円ほどの着物を35万円で売っていた店員もいたそうです。

このような販売方法に不信感を抱いた女性は、上司に「違法ではないか」と疑問をぶつけました。しかし上司からは「あくまでも定価は幾らぐらいで売れば良いかの目安で会社が付けている」という理由で、いくらで売ってもいいのだと言われたそうです。

客が本来の値段を知らないことを利用して、店側が値段をつり上げて販売することは、法的に問題ないのでしょうか?上田孝治弁護士の解説をお届けします。

弁護士ドットコムライフの体験談募集に、50代の女性が、大手着物店で販売の仕事をしていたときの経験を投稿しました。女性が働いていた店では、客が来店すると、言葉巧みに客の身体に着物(反物の状態)や帯を巻き付けて、客が気に入れば着物はいくら、帯はいくらと明細を出すそうです。しかし、ここで1つ問題が。

女性いわく、着物は「洋服と違いハンガーにぶらさがった商品を自由に見る訳じゃない」ため、客は自分の身体に巻き付けられた着物や帯の定価が分からないのだとか。それをいいことに、店員の中には、着物を定価よりも高く売ったり、仕立て代込みの価格にもかかわらず、別途仕立て代を請求する人がいたといいます。女性によると、20万円ほどの着物を35万円で売っていた店員もいたそうです。

このような販売方法に不信感を抱いた女性は、上司に「違法ではないか」と疑問をぶつけました。しかし上司からは「あくまでも定価は幾らぐらいで売れば良いかの目安で会社が付けている」という理由で、いくらで売ってもいいのだと言われたそうです。

客が本来の値段を知らないことを利用して、店側が値段をつり上げて販売することは、法的に問題ないのでしょうか?上田孝治弁護士の解説をお届けします。

● 価格の決め方は問題ないが、不当表示であれば違法になりうる

商品の販売価格は、契約当事者が合意すればその価格で決まるのが大原則です。したがって、店側が価格を伝え、客側がそれを了承すれば、その価格での販売契約が成立したということになります。

この点、今回の着物のケースでは、定価と言われているものが店側では内部的な「目安」とされ、実際に販売する際に、個々の具体的な価格を決めていたようです。

仮に、店側が、価格を誤って表示するなどして、本来販売する予定だった価格よりも高く売ってしまったということであれば、代金の取り過ぎですから、返金する必要があるでしょう。逆に、低い価格で売ってしまった場合は、店側の錯誤無効が成立するかどうかということになりますが、今回とはケースが異なります。

繰り返しになりますが、あくまでも、販売価格の決め方としては、店側が伝えた価格で客側が了承すればその金額で決まりますので、今回のケースのような価格の決め方に問題はありません。

もっとも、この価格の決め方とは別の問題として、店側が店頭や商品などで表示している価格が、実際の販売価格よりも安い場合は、不当表示として違法になる可能性がありますし、販売方法や販売量なども合わせて総合的に考えると、販売行為自体が不法行為に該当し、損害賠償請求の対象になることも考えられます。

(弁護士ドットコムライフ)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る