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「3年以内に資格試験に受からなければ離婚します」 妻が夫に書かせた「公約」は有効?
2019年11月26日 08時43分

3年以内で試験に合格します。もしも合格しなかったら妻と離婚します——。

ある女性が資格の取得を目指す夫にこんな「公約」(原文ママ)を書かせたとSNSに投稿しました(現在は削除済み)。

他にも、弁護士ドットコムニュースの取材によると、妻から「司法試験に合格しなかったら離婚します」と言われ、勉強を頑張ったという男性弁護士のケースもありました。こちらは口約束だったそうです。

もし夫たちが資格試験に合格できなかった場合、夫が離婚したくなかったとしても、「資格試験に合格しなかったから」という理由で離婚は認められるのでしょうか。鶴岡大輔弁護士に聞きました。

3年以内で試験に合格します。もしも合格しなかったら妻と離婚します——。

ある女性が資格の取得を目指す夫にこんな「公約」(原文ママ)を書かせたとSNSに投稿しました(現在は削除済み)。

他にも、弁護士ドットコムニュースの取材によると、妻から「司法試験に合格しなかったら離婚します」と言われ、勉強を頑張ったという男性弁護士のケースもありました。こちらは口約束だったそうです。

もし夫たちが資格試験に合格できなかった場合、夫が離婚したくなかったとしても、「資格試験に合格しなかったから」という理由で離婚は認められるのでしょうか。鶴岡大輔弁護士に聞きました。

●「民法90条に反しているので無効と判断される可能性」

妻が夫の資格試験不合格を理由に離婚を申し出て、夫が拒否している場合、「3年以内に試験に受からなければ離婚します」という文書は法的に効力はあるのでしょうか。

「SNSに投稿した女性と夫の男性は書面で、『3年以内に資格試験に受からなければ離婚します』という約束をしているようです。

しかし、民法90条は、公の秩序または善良の風俗に反する行為は無効とする、と定めています。結婚や離婚といった行為に条件を付けることは、この民法90条に反すると考えられています。

なぜなら、本来離婚するかどうかは、離婚するときの夫婦それぞれの意思に従うか、裁判所が強制的に離婚させる場合は、離婚するときまでの夫婦の諸事情を検討し、『婚姻を継続しがたい重大な事由』があるかないかで判断すべきことだからです。

そのため、この女性と夫の約束は、民法90条に反しているので無効と判断される可能性が高いと思います。これは約束が口約束でも書面でも変わりありません。

したがって、『3年以内に試験に受からなければ離婚します』という約束に反したからといって、すぐに離婚が認められるということにならないと思います。

それでもご相談者様が離婚を望むのであれば、夫が資格試験に受からなかったことをきっかけに、夫婦間で喧嘩が絶えなくなり、婚姻関係が破綻したということを立証する必要が出てきます」

●「夫に対するモラハラ」にあたる?

妻が「資格試験に合格しなかったら離婚します」と夫に書かせることは、「夫に対するモラハラではないか」という声もネットにありました。もし夫から離婚を申し出る場合、モラハラとして認められるのでしょうか?

「たしかに、資格試験に合格しなかったら離婚しますと書かせることは、モラハラとされる余地はあるように思えます。

しかし、モラハラにあたるかどうかは、妻の言い方や回数、夫の拒否の態様など、書面を書かせた具体的な状況によりますので、妻が夫の意思に反して無理やり書かせたという場合でないと離婚を認めるほどのモラハラには当たらないと判断される可能性が高いです。

夫が離婚を求める場合は、単に『資格試験に合格しなかったから離婚します』と書かされたと主張するのではなく、書かされたときの状況を詳細に主張し、それがどれほど苦痛であったのか、裁判官に分かりやすく示す必要が出てきます。

さらに、夫が受けた精神的苦痛から、妻との夫婦生活を続けていくことが出来なくなったこと(例えば、妻のモラハラをきっかけに別居して数年経っているなど)を主張立証していければ、離婚が認められる可能性が高くなると思います」

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