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最強クラス「台風」が北上中 「屋根瓦」が飛んでケガ人が出たら、誰の責任なのか?
2014年07月09日 14時36分

「7月としては過去最強クラス」とも呼ばれる大型で強い台風8号が猛威をふるっている。沖縄本島では、9日朝から猛烈な雨が降っており、停電も相次いでいる。

気象庁は9日午前8時45分、沖縄本島地方に特別警報を発表し、「重大な危険が差し迫った異常事態です」「土砂崩れや浸水による重大な災害が既に発生していてもおかしくない状況です」と注意を呼びかけている。

今後、台風は日本列島の各地で甚大な被害をもたらす可能性がある。暴風で他人の家の瓦が飛んできて、家や車や身体が傷つけられることもあるかもしれない。そんなとき、瓦がのっていた家の持ち主に対して、賠償金を求めることはできるだろうか。

「これから台風がやってくる地域の方々が心配です」と語る沖縄在住の田村ゆかり弁護士に聞いた。

「7月としては過去最強クラス」とも呼ばれる大型で強い台風8号が猛威をふるっている。沖縄本島では、9日朝から猛烈な雨が降っており、停電も相次いでいる。

気象庁は9日午前8時45分、沖縄本島地方に特別警報を発表し、「重大な危険が差し迫った異常事態です」「土砂崩れや浸水による重大な災害が既に発生していてもおかしくない状況です」と注意を呼びかけている。

今後、台風は日本列島の各地で甚大な被害をもたらす可能性がある。暴風で他人の家の瓦が飛んできて、家や車や身体が傷つけられることもあるかもしれない。そんなとき、瓦がのっていた家の持ち主に対して、賠償金を求めることはできるだろうか。

「これから台風がやってくる地域の方々が心配です」と語る沖縄在住の田村ゆかり弁護士に聞いた。

●家を「借りている人」にも賠償責任が発生する可能性あり

田村弁護士によると、今回のケースで損害賠償を求めるには、民法717条1項の「工作物責任」が問題になるという。そこでは、次のように定めている。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」

法律の条文なので、難しい言葉が並んでいるが、どのような意味だろうか。

「まず、『工作物』には家も含まれます。そして、『瑕疵』(かし)とは、工作物がその種類に応じて通常備えているべき安全性・設備を欠いている状態のことです。

つまり、もし家に『瑕疵』があり、そのために瓦が飛ばされた結果、家や車が壊れたり、けがをしたりしたら、その家の『占有者』が損害賠償責任を負うことになります」

「占有者」というのは、その家に住むなどして、事実上、支配している人のことだ。家の状態をコントロールできる立場にあるので、それに応じた責任があるということだろう。

「もし、その家が持家ということならば、所有者と『占有者』は基本的に同じ人ですから、家の持ち主が責任を負います。アパートなどを借りている賃借人の場合は、賃借人も『占有者』として責任を負います」

また、強風や豪雨などの自然力が荷担していた場合であっても、「工作物の設置又は保存に瑕疵がある以上は、自然力の荷担という事情だけで、責任を免れることはできないと考えられています」と、田村弁護士は指摘する。

●「占有者」は賠償責任を免れられても、「所有者」は・・・

では、家の持ち主や賃借人などは、責任を免れることはできないのだろうか。

「民法717条1項は、ただし書きで『占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない』と定めています。

したがって、『占有者』が、損害発生防止のために必要な注意をしていた場合には賠償責任を免れることができますが、『所有者』は、たとえ損害発生防止のために必要な注意をしていても、損害賠償責任を免れられません」

すなわち、賃借人などの「占有者」は責任を免れられる可能性があるが、「所有者」である持ち主は、免れることができないことになる。田村弁護士は、本件で賠償金を求めるポイントについて、次のように整理する。

「家の『所有者』と『占有者』が同じであれば、『所有者』に対して損害賠償を請求することができます。それぞれが異なる場合は、被害者はまず『占有者』に対して請求することになりますが、『占有者』が損害発生防止のために必要な注意をしていた場合には、『所有者』に対して請求することができるということになります」

いずれにしても、台風で飛んできた瓦で被害にあった人は、その家の所有者か占有者に損害賠償を請求できるということだ。逆にいえば、家に住んでいる人は賠償責任を負う可能性があるわけなので、家のメンテナンスに注意を払うようにしたほうがいいだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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