15703.jpg
「アンネの日記」破損事件――もし300冊以上破ったら「罰金」約1億円?
2014年03月14日 19時46分

第二次大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の最中にあって、後世に残る「日記」をつづっていた少女アンネ・フランク。そんな彼女の関連書籍が、東京都内の複数の公立図書館で、破られていたことが発覚し、大きな波紋を広げている。報道によると、被害を受けた書籍は『アンネの日記』をはじめホロコースト関連の書籍など、300冊を超えるという。

歴史的な悲劇であるホロコーストを象徴する『アンネの日記』が傷つけられたとあって、この事件は海外にまで飛び火している。アメリカのユダヤ系人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは、「強いショックと懸念」を表明した。また、日本政府も菅義偉官房長官が「きわめて遺憾なことであり、恥ずべきこと」と会見で述べ、犯行を非難している。

事件は、3月13日になって新たな展開を迎えた。書店への不法侵入で逮捕されていた男が、図書館で本を破ったことを認めるような供述をしている、というニュースが流れたのだ。警視庁は慎重に捜査を進めているということで、真相解明にはまだ時間がかかる見込みだ。

ところで今回の事件では、公立図書館の本が傷つけられたわけだが、犯行をおこなった人物はどのような罪に問われうるのだろうか。また、仮に同一人物が300冊を破ったとすると、「300の罪を犯した」とされるのだろうか。元検事で刑事事件にくわしい山田直子弁護士に聞いた。

第二次大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の最中にあって、後世に残る「日記」をつづっていた少女アンネ・フランク。そんな彼女の関連書籍が、東京都内の複数の公立図書館で、破られていたことが発覚し、大きな波紋を広げている。報道によると、被害を受けた書籍は『アンネの日記』をはじめホロコースト関連の書籍など、300冊を超えるという。

歴史的な悲劇であるホロコーストを象徴する『アンネの日記』が傷つけられたとあって、この事件は海外にまで飛び火している。アメリカのユダヤ系人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは、「強いショックと懸念」を表明した。また、日本政府も菅義偉官房長官が「きわめて遺憾なことであり、恥ずべきこと」と会見で述べ、犯行を非難している。

事件は、3月13日になって新たな展開を迎えた。書店への不法侵入で逮捕されていた男が、図書館で本を破ったことを認めるような供述をしている、というニュースが流れたのだ。警視庁は慎重に捜査を進めているということで、真相解明にはまだ時間がかかる見込みだ。

ところで今回の事件では、公立図書館の本が傷つけられたわけだが、犯行をおこなった人物はどのような罪に問われうるのだろうか。また、仮に同一人物が300冊を破ったとすると、「300の罪を犯した」とされるのだろうか。元検事で刑事事件にくわしい山田直子弁護士に聞いた。

●「併合罪」という仕組みがある

「書籍を破ったり、汚すなどの行為は器物損壊罪(刑法261条)にあたります。器物損壊罪は親告罪とされているため(刑法264条)、図書館運営者の告訴があった場合のみ、起訴されることとなります」

図書館の本を傷つけた場合の罪は、「器物損壊罪」ということだが、破った冊数と成立する犯罪数の間にはどんな関係性があるのだろうか?

「300冊の書籍を、それぞれ別の機会で破損する行為を犯した場合は、この器物損壊罪の犯罪事実が300件成立します。

300件分の器物損壊罪につき、一回の裁判で判決を受ける時は、これらの各罪は併合罪(刑法45条)として扱われます」

その「併合罪」として、まとめて処理されるそうだが、刑罰はどうなるのだろうか。

「併合罪については、『併合罪加重』という決まりがあります」

このように山田弁護士は説明する。

●罰金が1億円近くになってしまう?

具体的には、どんな風に決まるのだろうか? ちょっとややこしいが、それは次のようなものだ。

「器物損壊罪は、法定刑が、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料とされています。

もし、懲役刑が選択され、2件以上の器物損壊罪について『併合罪加重』とされた場合は、懲役刑の長期上限が1.5倍の4年6カ月までに引きあげられます。懲役刑の場合、このような上限があるため、2件でも300件でも上限に変わりはありません。

一方、罰金刑が選択された場合には、このような上限がないため、300件の場合は、罰金上限30万円を300倍した9000万円が上限となります」

つまり、懲役刑については、どれだけ多数の本を破っても4年6カ月を超えることはないが、罰金刑のほうは、1億円近くになる可能性もあるというわけだ。そうなると、罰金刑の方が"厳しい”と受け止められるケースも、理論上はありそうだ。

山田弁護士は「ただ、現実的には、このようなケースでは、懲役刑が選択されて、求刑・判決宣告となると思います」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る