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「税の書道展」の正体…壁一面の書道作品「確定申告」は何が目的? プロパガンダ?
2018年01月17日 09時00分

壁一面に並んだ達筆の「確定申告」「青色申告」「ぜいきん」――。

毎年秋になると、税務署や公民館などの公共スペースに突如現れる税をテーマにした書道作品群。すべて税関連ワードであることや、漢字が多いこともあって、なかなかの迫力のある光景になる。

なかには「納税思想の高揚」「自主納税の推進」といった迫力ある題字がずらりと並ぶ自治体もあり、今年もTwitter上で話題になった。

しかし、このイベントについて税のPRという趣旨は理解できるものの、誰がなんのために実施しているか知っている人は意外と少ないのではないだろうか。また、インパクトの強い題字は誰が決めているのか。関係者に詳細を伺ってみた。

壁一面に並んだ達筆の「確定申告」「青色申告」「ぜいきん」――。

毎年秋になると、税務署や公民館などの公共スペースに突如現れる税をテーマにした書道作品群。すべて税関連ワードであることや、漢字が多いこともあって、なかなかの迫力のある光景になる。

なかには「納税思想の高揚」「自主納税の推進」といった迫力ある題字がずらりと並ぶ自治体もあり、今年もTwitter上で話題になった。

しかし、このイベントについて税のPRという趣旨は理解できるものの、誰がなんのために実施しているか知っている人は意外と少ないのではないだろうか。また、インパクトの強い題字は誰が決めているのか。関係者に詳細を伺ってみた。

●題字はただの参考題で、課題は自由なのだけど…

まずは、話題になった「納税思想の高揚」「自主納税の推進」という書道作品を掲示していた弘前市納税貯蓄組合連合会。題字にこだわりがあるのかと思いきや、担当者によれば、書道展の課題は自由なのだという。

「掲示している題は、参考題の1つとして挙げたもの。しかし、参考題をそのまま作品とされる方がほとんどです」

では、その例は誰が考えたのかというと「県連が作成した募集要項にある参考題を長年転載して使っている」のだそう。

●書道展は納税協力団体の個性の出しどころ

弘前市納税貯蓄組合連合会が主催している書道作品の募集イベントでは、市内の小中学校から作品を募集し、優秀作品の掲示や表彰だけでなく、表彰式の開催、記念品の贈呈を行っている。募集規模から考えると、掲示や表彰される確率が高く、地域に根差した手厚いイベントだといえるだろう。

「書道作品のを募集する『納税作品展』は国税庁が主催して全国で募集を行う『税の作文』とは別に、県や地域が独自に行っているイベントなので」と担当者。書道作品の募集は県連と弘前市から補助金で運営されており、地域住民が税に親しむことを目的に企画が行われている。

つまり、地域が違えば、書道展も募集要項や開催概要が違うということだ。

なかには書道の展示を盛大なイベントにしている地域もある。

鹿児島市では税の週間(毎年11月11日~11月17日)に合わせて「ザ・タックス フェスタ」というイベントを開催。書道の優秀作品を展示するほか、表彰式、高校生による税に関する書道パフォーマンス、税金クイズ、税に関するステージショー、ミニライブも組み合わせ、大々的に税のアピールを行っている。

主催者の鹿児島法人会の担当者によると「年々盛大に、規模が大きくなっている」というこのイベント。鹿児島法人会と協力して書道作品の募集を行っている鹿児島税務署の担当者も「地域を管轄する熊本国税局管内ではいちばん盛大だと思います」と語る。同イベントのほかにも、書道作品は地元の商業施設で展示するなど、地域住民の目に付きやすいよう工夫をしているそうだ。

一方、鹿児島市でも小学生の部では自由課題の書道作品も受け付けているものの、「提示した課題に対する応募が大半ですね。自由課題は『国税』があったくらいで、毎年ほとんど応募がありません」(鹿児島税務署・担当者)とのこと。

●「税を考える週間」は税務当局に対する不満から始まった

Twitterでは、このような税の書道展について、「プロパガンダ臭がする」などの声もあがっている。過去には、金賞になった作品が「増税」だったことから、「とても政治的に勘ぐってしまう」などと投稿している人もいる。

プロパガンダとは、「特定の考えを押しつけるための宣伝。特に、政治的意図をもつ宣伝」(大辞林)のことだ。ただ、これまでみてきたように、特に大した政治的意図はないようだ。むしろ、なさすぎると言ってもいいかもしれない。

これらの作品を実際に見てみたらどうなのだろうか。弁護士ドットコムニュース編集部では、ライターの平塚太陽氏に依頼し、とある書道展に行ってもらった。

区民センターの一角を借りた会場には、200を超える作品が所狭しと並べられていた。日没後もあってか、来場者もほとんどいない。平塚氏は、「子どもたちが頑張って書いた力作ばかりですが、さすがにこれだけ並ぶと何らかの『狂気』のようなものを感じざるをえません」と語る。

書道作品の実物を目の当たりにすると、やはりインパクトはあるようだ。平塚氏は「でも、何か、やらされている感というか、政治的な意図が無いにしても、背後に大人の影を感じてしまいます。子供が税金について考えるきっかけを与えるのであれば、減税とか、国が嫌がるようなキーワードも含めて、もっとみんなで自由にお題を考えられるようになるといいですね」と指摘している。

各地の書道展と連動している、国税庁の「税を考える週間」は、1947年に、申告納税制度が導入され、1949年に国税局が発足する中で、税務当局に対する不満が強かったことから、1954年に「納税者の声を聞く月間」として始まったそうだ(国税庁HPより)。

しかし、日本人は、会社員の源泉徴収制度などの影響で、納税者としての意識が乏しいと指摘されることがある。それでも、人口減少社会の到来により、税と社会保障はこれから厳しい時代を迎えるのは確実だ。そのしわ寄せが及ぶのは、子どもたちだ。不満があるなら、もっと表に出してもいいだろう。

2018年を迎えた日本。今年は何が税の書道のお題にふさわしいのだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

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