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ギャンブル大国で「死の崖っぷち」依存症に苦しんだ壮絶体験、「自己責任論」では救えない現実
2025年06月27日 13時09分
#ギャンブル依存症 #オンラインカジノ

「ギャンブル依存症が病気だという理解が進んでいない」。そう語るのは、自身もかつてギャンブルにのめり込み、現在は公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表として当事者支援を続ける田中紀子さんだ。

芸能人やスポーツ選手の摘発をきっかけにオンラインカジノの規制強化が求められている。しかしその一方で、依存症に苦しむ人々への理解や支援は、いまだ十分とは言えない。

厚労省の推計では、ギャンブル依存の疑いがある人は約320万人に上る。競馬、競艇、パチンコ、そして議論が続くカジノ構想──。日本は『ギャンブル大国』と呼ばれても不思議ではない。

「ギャンブル依存症は誰でも陥る可能性がある」。依存に至ったきっかけや回復までの過程、そして国に求めたい対策について、田中さんが語った。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)

「ギャンブル依存症が病気だという理解が進んでいない」。そう語るのは、自身もかつてギャンブルにのめり込み、現在は公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表として当事者支援を続ける田中紀子さんだ。

芸能人やスポーツ選手の摘発をきっかけにオンラインカジノの規制強化が求められている。しかしその一方で、依存症に苦しむ人々への理解や支援は、いまだ十分とは言えない。

厚労省の推計では、ギャンブル依存の疑いがある人は約320万人に上る。競馬、競艇、パチンコ、そして議論が続くカジノ構想──。日本は『ギャンブル大国』と呼ばれても不思議ではない。

「ギャンブル依存症は誰でも陥る可能性がある」。依存に至ったきっかけや回復までの過程、そして国に求めたい対策について、田中さんが語った。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)

●「夫との出会い」が依存の引き金に

田中さんがギャンブル依存症に陥った直接のきっかけは、「夫との出会い」だった。

「夫は付き合った当初からギャンブル依存症でした。でも、私にとってはそれがおかしいとは思わなかった。懐かしいし、楽しいし、相性がいいくらいに思っていたんです」

なぜ、違和感を持たなかったのか。その背景には、田中さんが育った家庭環境がある。父親もギャンブル依存症で、会社の金を横領して解雇された。祖父も99歳で亡くなる直前までパチンコに通い詰めていたという。

「お年玉で花札やセブンブリッジをやったり、小学校2年生のときにパチンコに行って補導もあります。ギャンブルをしていることが異常だと思っていませんでした」。物心ついたときから、ギャンブルは"身近な"ものだった。

田中さんが夫と交際当時、のめり込んだのは競艇と闇カジノ。1990年代中盤は、今ほど規制が厳しくなく、街中に闇カジノが点在していたという。

「芸能人や政治家、それこそ弁護士も普通に来ていました。アルバイト募集欄には闇カジノのスタッフ募集が載っていた。それくらい野放しだったんです」

●夫の借金で見え始めた「依存」の輪郭

田中さんは最後まで自身が依存症だと自覚できなかったという。しかし、夫の借金が発覚したことが転機となった。

当時、田中さんは2人の子どもの育児に追われ、3年ほどギャンブルから離れていた。「とにかく忙しかったので、夫もやっていないと思っていた。それでも借金がわかって、これはおかしいと思いました」

夫はサラリーマンとして優秀だった。加えて、家族思いで家事育児にも協力的だったという。ギャンブル依存症になるとは、にわかには信じられなかった。

「依存症というのは、私の祖父のように仕事もしないで一日中パチンコに行くような人だと思っていました。仕事をして給料をもらっている人と、依存症が結びつかなかったんです」

夫を通じて、田中さんは初めてギャンブル依存症の輪郭をはっきりと意識するようになった。それは自身の中にも深く根付いていた。

●「普通の生活」の裏にある苦悩

ギャンブル依存症を認識してからの生活について、田中さんは「普通のサラリーマン家庭を装っていた」と語る。家を買い、車を持ち、ママ友とも平気な顔をして付き合っていた。

しかし、頭の中は常に借金のことでいっぱいだった。

「実際、家計は火の車。どうやってお金を工面しようかと。本当に死の崖っぷちに立っているような感じでした」

我が子の顔を見ながら、「こんな母親ならいないほうがいい」という思いと「私が死んだらこの子はどうなるんだろう」という思いが交錯していた。

●一人では克服できなかった

絶望の中で田中さんを救ったのが、同じギャンブル依存症の仲間だった。2004年につながった自助グループで出会った。

ギャンブルが原因で、当時勤めていた会社の査定が下がってしまった。お金のことだからこそ、ギャンブルで取り返そうと考えた田中さん。そんなとき、仲間が声をかけてくれた。

「私たちは傲慢だった。社会でいっぱい恥をかいて、自分の小ささと謙虚な気持ちを知るのよ」

その言葉が、当時の田中さんに深く刺さった。それ以来、20年以上ギャンブルには一切手を出していない。一人では決して克服できなかったと、今も強く感じている。

「それまでの人生には後悔と苦しみしかありませんでした。あんな家に生まれなければよかったという思い、親への恨みや悔しさが、何度も頭の中で繰り返されていました。

でも(自助グループの)回復プログラムを通して、回復を実感したときに、あの経験も無駄ではなかったと思えるようになったんです。過去に落とし前がついたような気がしました」

●「自己責任」では救えない

「国がギャンブルを産業として推進している以上、アルコールとは責任の度合いがまったく違う」と田中さんは指摘する。

日本では、公営競技の名のもとに、競馬や競艇、競輪などといったギャンブルがおこなわれている。パチンコも「三店方式」により、特殊景品の現金化が黙認されているのが現状だ。

「ギャンブル依存症は『自己責任』という風潮が今も根強いです。私が子どもの頃、うつ病も『甘え』だと言われていましたが、薬が開発されたことで病気として理解が進みました。

ギャンブル依存症も同じです。精神論ではなく、科学的に対策を考える必要があります。そのためは、国が主導して啓発と人権教育に取り組むべきだと思います」

田中さんは「ギャンブル依存症は回復できる病気」と強調する。

「当事者が忌避感が強く、相談したくないというのであれば、家族だけでも相談に来てください。それだけで助かる可能性はぐっと高まります。できるだけ早く相談に来ることが重要です」

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