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海賊版サイトは「漫画界の将来に暗い影」 赤松健さんら被害の深刻さ訴える
2020年12月14日 19時10分

漫画などが違法にアップロードされた海賊版サイトの被害が急増して、歯止めがかからなくなっているとして、『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』で知られる漫画家の赤松健さんらが12月14日、東京・丸の内の外国特派員協会で記者会見を開いた。

赤松さんは「お金の問題以上に新人漫画家のやる気が失われることを一番危惧している」「そのことが漫画界の将来に暗い影を落としている」と話した。同席した福井健策弁護士は「海賊版サイトが巧妙化している」という認識を示した。

こうした状況を受けて、大手出版社は、来年1月施行の改正著作権法に合わせて、海賊版と知りながら、違法ダウンロードすることについて、少しでも読者にやめてもらえるような啓発キャンペーンを展開する予定という。

漫画などが違法にアップロードされた海賊版サイトの被害が急増して、歯止めがかからなくなっているとして、『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』で知られる漫画家の赤松健さんらが12月14日、東京・丸の内の外国特派員協会で記者会見を開いた。

赤松さんは「お金の問題以上に新人漫画家のやる気が失われることを一番危惧している」「そのことが漫画界の将来に暗い影を落としている」と話した。同席した福井健策弁護士は「海賊版サイトが巧妙化している」という認識を示した。

こうした状況を受けて、大手出版社は、来年1月施行の改正著作権法に合わせて、海賊版と知りながら、違法ダウンロードすることについて、少しでも読者にやめてもらえるような啓発キャンペーンを展開する予定という。

●今年に入って爆発的にアクセスが増えている

海賊版サイトをめぐっては、2018年に注目をあつめた『漫画村』の問題を経て、出版業界とIT・通信業界が協力し、さまざまな対策をとっている。しかし、そうした体制をかいくぐり、コロナの影響もあって、アクセスをあつめているサイトがあるという。

会見に同席した集英社の伊東敦さんによると、今年に入ってから、海賊版サイトへのアクセスが爆発的に増えており、国内向け海賊版サイト(上位10サイト)は月1億8000万アクセス、英語による海外向け海賊版サイト(上位3サイト)は月3億アクセスにものぼっている。

ある海賊版サイトが使っているITサービス(サーバ会社など)を調べてみたところ、すべて海外企業によるものだったことがわかったそうだ。伊東さんは「運営者が日本にいない可能性があり、非常に対策が困難になっている」と述べた。

●海外の政府やネットコミュニティの協力も必要になっている

海賊版サイトはどのように巧妙化しているのだろうか。福井弁護士は会見で次のように語った。

「海賊版サイトは、海外の確信犯的サーバにおかれて、匿名性の髙いドメイン事業者や中継事業者の協力で身元を隠して運営されています。

2年前の漫画村問題以降、海賊版対策の手法はかなり進化を遂げて、通信業界やIT業界との協力で強力な手段がとられてきました。ただ、今のところは海賊版サイトも同じように巧妙していて、対策を阻む壁になっています。たとえば、大量の削除通知もおこなっていますが、海外サーバにあるものは無視されたり、一度削除されても再掲載されたりしています。

海外の弁護士の協力を得て、国内外で訴訟などの法的手続きも積極的におこなっています。しかし、こうした確信犯的なサーバは、身元解明が非常に困難な地域におかれていることが多く、身元が解明されるときには、本拠地を移転して逃げてしまっていることがあります。早いときには、週単位で本拠地をうつしています。

海賊版サイトに(日本企業が)広告を出さないという取り組みも進んではいます。しかし、たとえばアダルト広告のようなアウトサイダーはそういう取り組みには協力してくれません。興味も持ちません。

グーグルやツイッターのような会社と協力して、検索結果の上位に出てこない、SNSサイトで海賊版サイト拡散しない、といった抑制もおこなっています。しかし、削除されにくい、抑制されにくいかたちで、拡散手段が生み出されていきますから、いたちごっこになっています。

IT業界や通信業界と協力して、普及・啓発も業界全体をあげておこなわれています。ただし、海賊版被害が深刻だということは、海外では知られていません。実際、ここまでくると、そうしたサーバがおかれている海外の政府やネットコミュニティの協力がないと厳しいところまできています」

●新人漫画家のやる気が失われることを危惧

会見には、海外メディアの記者も参加していた。主な質疑応答は以下の通り。

フランスの日刊紙特派員:おそらくフランスの出版社も被害者だと思う。関心が髙いと思われる。まず、ファイル、単行本、どちらがアップされているのか。また、技術的に対策をとることができるのか。たとえば、スキャンできない紙などを使うことは考えられる。

赤松さん:昔は裁断されてスキャンされていましたが、(今は)誰か1人が電子書籍を買って、スクショ(スクリーンショット)でデータ化されています。

伊東さん:スクリーンショットは、やはりスマホやタブレットの大事な機能なので、それを制限することは、ちょっと今のネット社会ではありえないと思います。紙をスキャンできないように技術的にすることはできますが、おそらくコミックス1冊あたり相当金額がかかるので、安く流通することができなくなります。

赤松さん:電子的に透かし入れる実験は?

伊東さん:検討しましたが、技術的にちゃんと買ってる読者の使い勝手が悪くなりうるので、導入をためらうところがあります。

弁護士ドットコム:今年になって増加したのはコロナ影響ということでよいのか。また、(今年10月から始まった)リーチサイト規制の効果は期待できるのか。

福井弁護士:まず原因ですが、コロナもあるだろうと思います。おそらく複合的で、もう一つは海賊版サイト側の巧妙化だと思うんです。一昨年から、海賊版対策が進化したことでずっと抑え込めていたが、昨年後半から、その対策が効かない相手が増えてきた実感がありました。身元の隠し方がより巧妙だからです。じわじわと増えてきたところ、コロナがきて爆発したというイメージがあります。

リーチサイトは、海賊版サイトへのリンク集を違法化するもので、その規制は当然、一定の効果は期待できると思います。日本語の誘導サイトは国内に本拠地があることが少なくないと思うからです。ただし、それ以外の、たとえば海外の本拠地にあって、身元をくらましているサイトに対しては、やっぱり効果は限定的です。

なぜなら、海賊版サイトも昔から違法だっけど、身元を隠しているから対策をとりきれないわけですよね。リーチサイトが違法になっても身元を隠されたら、似たような限界があると思います。

赤松さん:来年からダウンロード違法になりますよね。

福井弁護士:違法になります。

赤松さん:少し効果が見込めますか。

福井弁護士:そうですね。

ジャーナリスト、司会・神保哲生さん:違法になるけど、どうやってトラックダウンができるのか?

福井弁護士:(ダウンロード違法化の)立法に若干関わったので申し上げるが、政府は、違法ダウンロードした一般人を摘発しようということは考えていないが、アナウンス効果、つまり海賊版サイトと知りながらダウンロードすることは流石に違法だよと伝える効果が大きいと、おそらく考えていると思います。もちろん、(違法ダウンロードは)決してほめられた行為ではないので、おすすめはしないことは言うまでもないです。

神保さん:啓蒙・啓発として、広報はどれくらいやっているか?

伊東さん:今年6月、STOP海賊版の小冊子をつくって配布したり、ウェブサイトにアップして周知徹底をしています。新年1月から改正著作権法のダウンロード違法化が施行されますので、それに合わせて海賊版と知りながら、ダウンロードして読むことは違法ですよと強く訴えて、海賊版は法的にはダメだということを主張して、読み手が少しでもやめてくれるキャンペーンを大々的に展開する予定です。

神保さん:実際に影響はどれくらいあるのか。経営が苦しくなってるところが出てきているのか。漫画家がやっていけなくなってきてるのか。最悪どうなるのか。

赤松さん:お金の問題もあるにはあるが、一番危惧しているのは(新人漫画家のやる気が失われることです)。私のようなベテランは紙の漫画をまだ買ってもらえます。新人は電子版だけというケースが増えてきています。電子版しか出ていない新人作家が、電子版の海賊版をされると、悔しさと金額的被害以外にもやる気を失ってしまいます。漫画界の将来に暗い影を落としていると考えています。

フランスの日刊紙の特派員:海外ではフランスでは、漫画ファンが多いから、強いメッセージを。

赤松さん:今、日本の漫画は盛り上がっています。ヒット作を連発しています。ここで海賊版をたたけば、(漫画が)完璧のメディアとして機能していくはずです。そういうことを海外の人に知っていただきたい。

福井弁護士:民間の努力も大変なもので、集英社も月12万件の削除要請をしています。そういう民間の努力で効果があがっているところもあります。今こそみなさんの協力が必要です。漫画家の未来のために国際社会の協力を訴えたいと思います。

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