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「今すぐ会社を出て行け」 日本IBMの「ロックアウト解雇」を弁護士はどう見る?
2013年07月26日 12時45分

近年、大規模なリストラが続く日本IBMで、「金曜解雇」や「ロックアウト解雇」と呼ばれる突然の解雇が相次いだと報道されている。

東京新聞によると、今年5月31日金曜日の午後4時、上司に作業の進行状況を報告していた45歳の女性主任の所に、突然部長と人事担当者があらわれた。部長らは女性主任の業績が低いとして、「貴殿を6月12日付けで解雇します」「今日の就業時間終了までに私物をまとめて出て行ってください」と宣告した。翌日からは会社に立ち入ることも許されない、文字通りの「ロックアウト(締め出し)」だった。解雇通知書には、数日以内に自主退職に応じれば退職金を上乗せすると記されていたという。

また、東京新聞が紹介した全日本金属情報機器労働組合日本IBM支部の話によれば、このような「ロックアウト解雇」は昨年7月から始まり、すでに同支部の所属者だけで26人が解雇されたという。解雇理由の文面にはいずれも、具体的に何がいけなかったのかについては書かれていなかったとしている。先の女性主任は6月、他の従業員ら4人とともに『不当解雇だ』と、会社を提訴した。

このような形の解雇は海外では珍しくないようだが、日本でも普通になっているのだろうか。また、日本の労働法や判例が認める「解雇の条件」にあてはまると言えるのだろうか。労働問題が専門の波多野進弁護士に聞いた。

●解雇するためには「客観的に合理的で、社会通念上相当な理由」が必要

「有名大企業までが『ロックアウト解雇』を行い出したのは最近のことだと思われますが、『明日から会社に来るな』『会社に入ってはならない』といった解雇処分は以前からあって、私自身も訴訟を担当したことがあります。

呼び方が耳慣れないため新しく感じるかもしれないですが、訴訟としては通常の解雇問題と同じように考えることになります。論点は、(1)解雇が有効かどうか、(2)実際には働いていない期間分の給与を請求できるのか、の2点でしょう」

――ではまず、今回のようなケースで、解雇は「有効」なのか?

「本件のような場合には『解雇権の濫用』として、解雇が無効とされる可能性が高いと思われます。解雇は『客観的に合理的、かつ、社会通念上相当な理由』がない限り無効だと、労働契約法16条に明記されています。なお、『正当な理由があった』と立証する責任は使用者側にあるのですが、立証は実際のところ、相当困難です。

報道によれば、『解雇の意思表示』は突然一方的に行われていて、話し合いもなかった。また、解雇の理由も単に『業績が低い』と述べるだけで、具体的な内容が示されていない。これでは、解雇無効になる可能性が高いと思われます。

なお、特別な事情もないのに従業員を突然勤務先から閉め出すような対応をすれば、裁判所には『使用者側の不相当な対応』と評価され、解雇無効とされる事情の一つとなるでしょう」

――では、次に、「実際には働いていない期間」の給与はどうなる?

「使用者側が一方的に就労を拒絶してきたのですから、閉め出されてから解雇の日付までの期間の給与は請求できるでしょう。

また、解雇が無効と認められれば、解雇後の給与も請求できることになります」

――ロックアウト解雇をされた従業員にアドバイスはある?

「まずは落ち着いて、労働問題に詳しい弁護士に相談することでしょう。通常の解雇事件と同じように、就労拒否をされた期間の賃金や、解雇された後の賃金の請求などについて、適切な法的手続きをとることが重要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

近年、大規模なリストラが続く日本IBMで、「金曜解雇」や「ロックアウト解雇」と呼ばれる突然の解雇が相次いだと報道されている。

東京新聞によると、今年5月31日金曜日の午後4時、上司に作業の進行状況を報告していた45歳の女性主任の所に、突然部長と人事担当者があらわれた。部長らは女性主任の業績が低いとして、「貴殿を6月12日付けで解雇します」「今日の就業時間終了までに私物をまとめて出て行ってください」と宣告した。翌日からは会社に立ち入ることも許されない、文字通りの「ロックアウト(締め出し)」だった。解雇通知書には、数日以内に自主退職に応じれば退職金を上乗せすると記されていたという。

また、東京新聞が紹介した全日本金属情報機器労働組合日本IBM支部の話によれば、このような「ロックアウト解雇」は昨年7月から始まり、すでに同支部の所属者だけで26人が解雇されたという。解雇理由の文面にはいずれも、具体的に何がいけなかったのかについては書かれていなかったとしている。先の女性主任は6月、他の従業員ら4人とともに『不当解雇だ』と、会社を提訴した。

このような形の解雇は海外では珍しくないようだが、日本でも普通になっているのだろうか。また、日本の労働法や判例が認める「解雇の条件」にあてはまると言えるのだろうか。労働問題が専門の波多野進弁護士に聞いた。

●解雇するためには「客観的に合理的で、社会通念上相当な理由」が必要

「有名大企業までが『ロックアウト解雇』を行い出したのは最近のことだと思われますが、『明日から会社に来るな』『会社に入ってはならない』といった解雇処分は以前からあって、私自身も訴訟を担当したことがあります。

呼び方が耳慣れないため新しく感じるかもしれないですが、訴訟としては通常の解雇問題と同じように考えることになります。論点は、(1)解雇が有効かどうか、(2)実際には働いていない期間分の給与を請求できるのか、の2点でしょう」

――ではまず、今回のようなケースで、解雇は「有効」なのか?

「本件のような場合には『解雇権の濫用』として、解雇が無効とされる可能性が高いと思われます。解雇は『客観的に合理的、かつ、社会通念上相当な理由』がない限り無効だと、労働契約法16条に明記されています。なお、『正当な理由があった』と立証する責任は使用者側にあるのですが、立証は実際のところ、相当困難です。

報道によれば、『解雇の意思表示』は突然一方的に行われていて、話し合いもなかった。また、解雇の理由も単に『業績が低い』と述べるだけで、具体的な内容が示されていない。これでは、解雇無効になる可能性が高いと思われます。

なお、特別な事情もないのに従業員を突然勤務先から閉め出すような対応をすれば、裁判所には『使用者側の不相当な対応』と評価され、解雇無効とされる事情の一つとなるでしょう」

――では、次に、「実際には働いていない期間」の給与はどうなる?

「使用者側が一方的に就労を拒絶してきたのですから、閉め出されてから解雇の日付までの期間の給与は請求できるでしょう。

また、解雇が無効と認められれば、解雇後の給与も請求できることになります」

――ロックアウト解雇をされた従業員にアドバイスはある?

「まずは落ち着いて、労働問題に詳しい弁護士に相談することでしょう。通常の解雇事件と同じように、就労拒否をされた期間の賃金や、解雇された後の賃金の請求などについて、適切な法的手続きをとることが重要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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