15962.jpg
「無職の子ども」家から追い出せる? 家財を無断で売られ、もう限界
2019年01月30日 09時49分

無職の子どもを、家から追い出すことはできますかーー。弁護士ドットコムに対して、このような相談がありました。

相談者によると、子どもは成人しているとのこと。なかなか外に出てくれないのか、途方に暮れている様子です。他の相談者からも、無職の子ども(30代)が家に置いてある時計やバッグを無断で売ってしまい困っている、という声が複数寄せられています。

このような場合、家族としては追い出すことができるのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。

無職の子どもを、家から追い出すことはできますかーー。弁護士ドットコムに対して、このような相談がありました。

相談者によると、子どもは成人しているとのこと。なかなか外に出てくれないのか、途方に暮れている様子です。他の相談者からも、無職の子ども(30代)が家に置いてある時計やバッグを無断で売ってしまい困っている、という声が複数寄せられています。

このような場合、家族としては追い出すことができるのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。

●子どもが成熟しているかが重要な要素

ーー親は子どもに対して、どのような義務を負っているでしょうか

「まず、親であり子であるということは、法律上は『直系血族』ですので、お互いに扶養する義務があります(民法877条1項)が、それ以外のことは法律で明確には定められておらず、実務上の運用を参考にせざるを得ません。

また、扶養を受ける者と扶養をする者の間で、扶養の内容や程度について見解の対立がある場合には、家庭裁判所による扶養調停(不調の場合は審判)の手続を利用し、裁判所の関与のもとで決めるほかに方法がありません」

ーー子どもが未成年であるうちは責任は重いのでしょうか

「はい。一般的には、親の子に対する扶養義務は、特に子が未成年である間は重いものとされ、親自身の生活水準をある程度犠牲にしても果たすべきものと解されています。

しかし、子が成熟(「成年」ではない)している場合には、親の子に対する扶養義務は、前述のような重いものではなく、あくまで、親自身の生活に余裕がある範囲で果たせばよいものと解されています」

ーー単純に年齢ではなく、経済的な自立が期待できるかなど「成熟」度合いが重要な要素ということですね

「はい。問題は、子が成熟しているかどうかです。ただこれも、当事者間に対立がある場合には一方の意向だけで勝手には決められず、最後は家庭裁判所の判断を仰ぐことになります」

●困ったら、早期に裁判手続きの利用を

ーー子どもが自立しないことに加え、家族のものを無断で売り払うなどの行為をした場合、追い出すことはできますか

「結局のところ、親が所有権(自己所有の家の場合)もしくは賃借権(賃貸家屋の場合)を有する家から、その権利を行使して子を追い出す(=退去明渡しを求める)ことができるかという問題に尽きます。

扶養の内容および程度を定める一環と理解するなら、親の側から家庭裁判所に扶養の調停を申し立てることができますし、単純に明渡しを求めるなら地方裁判所もしくは簡易裁判所に明渡請求訴訟を提起することもできます。

最終的に追い出すことができるかどうかは、弁護士が決められることではなく、裁判所が決めることですから、早期に裁判手続を利用されることをおすすめします」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る