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「お客様を持っていくな」退職時、契約書へのサインを命じられた! 応じる義務は?
2017年11月28日 09時34分

会社に退職願を出したところ、「お客様を持っていかないようにと、契約書を書かせる」と命じられた人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。この人に限らず、営業して秘密の漏えいを警戒した会社側から、退職するにあたり、契約書にサインして欲しいと言われた人からの相談は複数寄せられている。

退職時、このような契約に応じる義務はあるのか。江上裕之弁護士に聞いた。

会社に退職願を出したところ、「お客様を持っていかないようにと、契約書を書かせる」と命じられた人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。この人に限らず、営業して秘密の漏えいを警戒した会社側から、退職するにあたり、契約書にサインして欲しいと言われた人からの相談は複数寄せられている。

退職時、このような契約に応じる義務はあるのか。江上裕之弁護士に聞いた。

●契約書に応じる義務はあるのか?

「企業秘密の漏えい防止は会社にとって大きな関心事となっており、退職後の従業員にも一定の守秘義務を求める企業は少なくありません。しかし、在職中の労働者が秘密保持義務を負う点に異論はないとしても、その義務が退職後まで及ぶかについては争いのあるところです」

今回のケースを江上弁護士はどうみるだろうか。

「一般的に、退職後の労働者が秘密保持義務を負うのは、(1)労働契約(信義則もしくは特約を含む)に基づくものと、(2)不正競争防止法に基づくもの、に分けられます。

今回のケースでは、退職時に秘密保持についての契約書作成を求められたということです。退職に伴い、秘密保持についての新たな契約を結ぶかは労働者の自由ですから、労働者が契約書の作成に応じる義務はありません。

断りきれずにこのような書面に署名押印してしまったという方もおられるでしょうが、あまりに過度の誓約になる場合、合意が無効とされることもあります」

では退社後に注意が必要な点はないのか。

「こうした書面がなくても、『営業秘密』(不正競争防止法2条6項)については退職後も漏えいが禁止される場合があります。営業秘密にあたる情報を不正に持ち出して利用したり、第三者が不正に持ち出された情報であると知りながら利用したりした場合、不正競争防止法1条3項によって損害賠償などを請求される可能性があります。

日々の業務の中で身につけるノウハウや知識は営業秘密とはみなされませんが、何が営業秘密に該当するか正確に把握しておく必要もあるでしょう。秘密保持義務を負う範囲については、事案ごとに慎重な検討が必要なため、早期に弁護士に相談することをおすすめします」

(弁護士ドットコムニュース)

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