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現役裁判官が地域手当めぐり国を提訴、弁護士の8割が評価<アンケート>
2024年08月23日 10時08分
#弁護士アンケート #地域手当 #裁判官 #竹内浩史判事

裁判官も含めた国家公務員に適用される地域手当によって実質的に報酬が減っているのは「違憲だ」などとして、現役裁判官である津地裁の竹内浩史判事が7月、国を相手に提訴しました。

地域手当は赴任地により支給額に差があり、もっとも高い東京23区では月給の20%が支給されますが、支給がない地域もあります。また、前任地の一定割合が支給される「異動保障」もありますが、期間は異動後2年間に限られます。

竹内判事は大阪高裁(16%)→名古屋高裁(15%)→津地裁(6%)と転勤し、現在4年目のため異動保障は終わっています。この間昇給がなかったため、過去3年間で報酬が計約240万円減ったと主張しています。

弁護士ドットコムでは、会員弁護士に、裁判官の地域手当について支給額の妥当性や意見を尋ねるアンケートを実施し、281人から回答が寄せられました(実施期間:7月14日〜18日)。

竹内判事の提訴について、「どの裁判官も思っていたけど言えなかったことを、弁護士任官の裁判官が訴訟で世に問題提起をした意義は非常に大きい」などと、弁護士の8割が評価していました。

また、地域手当の支給額については半数近くが「不当」「やや不当」と回答し、元裁判官からは「異動が差別人事に利用され、組織内での評価を気にして裁判官の判断が歪む」「転勤が退職の原因になった若い裁判官を何人もみている」という声があり、悩みや不安を抱える人の姿が浮かびました。

裁判官も含めた国家公務員に適用される地域手当によって実質的に報酬が減っているのは「違憲だ」などとして、現役裁判官である津地裁の竹内浩史判事が7月、国を相手に提訴しました。

地域手当は赴任地により支給額に差があり、もっとも高い東京23区では月給の20%が支給されますが、支給がない地域もあります。また、前任地の一定割合が支給される「異動保障」もありますが、期間は異動後2年間に限られます。

竹内判事は大阪高裁(16%)→名古屋高裁(15%)→津地裁(6%)と転勤し、現在4年目のため異動保障は終わっています。この間昇給がなかったため、過去3年間で報酬が計約240万円減ったと主張しています。

弁護士ドットコムでは、会員弁護士に、裁判官の地域手当について支給額の妥当性や意見を尋ねるアンケートを実施し、281人から回答が寄せられました(実施期間:7月14日〜18日)。

竹内判事の提訴について、「どの裁判官も思っていたけど言えなかったことを、弁護士任官の裁判官が訴訟で世に問題提起をした意義は非常に大きい」などと、弁護士の8割が評価していました。

また、地域手当の支給額については半数近くが「不当」「やや不当」と回答し、元裁判官からは「異動が差別人事に利用され、組織内での評価を気にして裁判官の判断が歪む」「転勤が退職の原因になった若い裁判官を何人もみている」という声があり、悩みや不安を抱える人の姿が浮かびました。

●地域手当の金額設定、弁護士の半数近くが「不当」

裁判官の地域手当について、(A)地域手当を設けることの是非と(B)現状の地域手当の金額の妥当性を尋ねました。

(A)地域手当を設けることについては「妥当」「やや妥当」が52.7%と過半数を超え、「不当」「やや不当」の23.9%を上回りました。

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一方、(B)現状の金額については「妥当」「やや妥当」の26.7%に対し、「不当」「やや不当」が43.0%で逆転する結果となりました。

弁護士の多数は、裁判官の地域手当自体には肯定的であるものの、現状の金額設定には問題があると考えていることが分かります。

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●「不当」の理由、最多は「裁判官の判断がゆがむから」

裁判官の地域手当について問題があると感じる弁護士に対し、その理由を複数回答で尋ねました。最多は「裁判官の判断がゆがむから」で45.4%でした。人事評価を気にして、裁判官が裁判所組織の意向に沿った判断をしてしまうことを懸念している様子がうかがえます。

続いて多かったのが「全国均一の司法が実現できなくなるから」で41.5%でした。組織にとって都合の良い裁判官が地域手当の高い勤務地に配属されるなどして、裁判官の能力に地域差が出ているのではないかと危惧している弁護士が多いようです。

以下、「金額の算定方法に問題があるから」(36.9%)、「同一労働同一賃金に反するから」(35.4%)、「民間や地方公務員の賃金格差の固定化、採用に影響するから」(14.6%)、「その他」(7.7%)と続きました。

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●元裁判官の弁護士「転勤配置が裁判官統制の一番有力な手段となっている」

裁判官の転勤制度について自由にコメントしてもらったところ、元裁判官の弁護士からは次のような意見がありました。

【裁判官の判断がゆがむ】

・転勤配置が裁判官統制の一番有力な手段となっている。判事任官研修の時に人事課長が「家を買った以上は一つ拠点ができるから、単身赴任をする際の負担が半減するし、辞めることもできないから単身赴任をさせる条件がそろう」と話したことが忘れられない

・異動が差別人事に利用されている。組織内での評価を気にして、裁判官の判断が歪む。優遇される裁判官は、東京中心に転勤して、ずっと高額の地域手当を得、差別される裁判官は、ずっと地域手当がほとんどないまま転勤する

【転勤や地方勤務の負担が大きい】

・転勤は家族に多大な影響を与え、退職の原因になった若い裁判官を何人もみている

・地方の方が都会よりも生活費、文化的費用、子の大学費用等が必要なのであるから、むしろ僻地手当を出すべき

【嫌なら転勤を拒否するべき】

・子どもに「ふるさと」を持たせるため、(裁判官は原則意思に反して転所等されないとする裁判所法48条を行使して)約10年間転所をともなう転勤に同意しなかった。個々の裁判官が自身にメリットがあれば転勤に同意すればよいだけ

⚫️「判断が固定化しない点はメリット」「裁判の迅速化を妨げる一番の要因」

裁判官の経験のない弁護士からは次のような意見がありました。

【裁判の公平性が保たれる】

「転勤によって判断が固定化しない点はメリット」

「裁判官が入れ替わり当地の司法機能がきちんとはたらく」

「裁判の公平性を確保するためには、やむを得ない」

【事件に影響を及ぼす】

「訴訟の動向が途中で変わった結果、敗訴して、控訴することになり大変だった」 「勝ち筋が負け筋になること(その逆も)もあり、一長一短」

「異動が近くなると露骨に審理が遅くなる裁判官を複数経験した」

【新しい方法や制度を設けるべき】

「転勤が馴れ合い防止目的なら都道府県内の転勤枠も用意すべき」

「オンラインで裁判をするようになる中で、物理的な裁判所の必要性は減っている。高裁は東京と大阪の2か所だけでよいのではないか」

●弁護士の8割が提訴を「評価」

現職の裁判官が実名で国を訴えたことについての賛否を問うたところ、「評価する」「やや評価する」が80.1%となり、弁護士の多くが竹内判事の提訴を好意的に見ていることが分かりました。

その理由として以下のような意見がありました。

・どの裁判官も思っていたけど言えなかったことを、弁護士任官の裁判官が訴訟で世に問題提起をした意義は非常に大きい

・地域手当の格差については、裁判官からも不満の声が上がっており、辞める若手裁判官も多いと聞くため、改善が必要

一方で、裁判の行方自体については、「問題意識は理解できるが、法的根拠が難しい」「担当裁判官としては現行制度を否定する判決は書きづらいのではないか」などの意見も多く見られました。

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