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性犯罪者は「去勢」すべきなのか? 日本での「法制化の可能性」を弁護士に聞いた
2014年12月30日 09時22分

性犯罪者は「去勢」されても仕方ないのかーー。児童へのわいせつ行為など性犯罪のニュースが毎日のように報じられるなか、「なんで刑罰に去勢を加えないんだ?」という問いかけがインターネットで盛り上がっている。コメントをみると「性犯罪の抑止力になる」「男の犯罪者が激減すると思う」など肯定的な声が少なくない。

日本では、物理的に性器を切除する刑や、薬によって性衝動を抑える化学的去勢の刑罰はない。隣の韓国では2012年に初めて、児童に性的暴行を加えた男に化学的去勢の命令が下った。米・テキサス州では、本人の希望で男性器の除去手術ができる州法が制定されているという。

日本でも、法律を改正して、性犯罪者の去勢を検討すべきなのだろうか。刑事政策にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。

性犯罪者は「去勢」されても仕方ないのかーー。児童へのわいせつ行為など性犯罪のニュースが毎日のように報じられるなか、「なんで刑罰に去勢を加えないんだ?」という問いかけがインターネットで盛り上がっている。コメントをみると「性犯罪の抑止力になる」「男の犯罪者が激減すると思う」など肯定的な声が少なくない。

日本では、物理的に性器を切除する刑や、薬によって性衝動を抑える化学的去勢の刑罰はない。隣の韓国では2012年に初めて、児童に性的暴行を加えた男に化学的去勢の命令が下った。米・テキサス州では、本人の希望で男性器の除去手術ができる州法が制定されているという。

日本でも、法律を改正して、性犯罪者の去勢を検討すべきなのだろうか。刑事政策にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。

●「残虐な刑罰」は憲法違反

「まず、わが国の刑法が認める刑罰は、死刑、懲役、禁固、拘留、罰金、科料、没収の7種類です(刑法9条)。裁判官は、法律に規定していない刑罰を科すことはできません。

とりわけ、受刑者の身体に損傷を与えるような『身体刑』は、『残虐な刑罰』として許されません(憲法36条)。したがって、日本では、物理的に性器を切除するという刑罰を制定することは、憲法違反となるでしょう」

では、薬物療法で性的な衝動を抑えるという「化学的去勢」については、どうだろう。

「『罰』という意味ではなく、『治療的対応』の一環として、検討の余地はあるでしょう。

そもそも刑罰は、単に、犯罪者に『罰』を与えるだけではなく、犯罪者を更生させて『再犯防止』を図ることも目的にしています。性衝動を抑えられず性犯罪を繰り返している犯罪者には、再犯防止のためにも『治療的対応』が必要になってきます」

たしかに化学的去勢は、再犯防止のために有効なようにも思える。

●「性衝動」を薬で抑えるのは人権侵害?

「現在、刑務所や保護観察所では、薬物犯罪者や性犯罪者に対して、『認知行動療法』を基礎にした『更生プログラム』が用意されています。これは、罪を犯す自分を正当化するような『認知の歪み』を修正するものです。

しかし、まだ再犯率を抑えるのに十分とはいえません。ですから、性的な衝動を抑える『薬物療法』、つまり化学的去勢も検討の余地はあるでしょう」

化学的去勢の導入には、どんな問題が発生するだろうか。

「薬物療法は、人の生理的機能に影響を及ぼすものですから、副作用のおそれがあります。また、性衝動は、人間の自然な衝動です。個人の人間性に直結するものとも言えます。これを外界から薬の力で抑圧することは、個人の尊厳を害し、人権侵害にあたるから許されないという考えもあります。

また、『化学的去勢』に再犯防止の実効性があるのか、疑問を呈する人もいます。いずれにしても、慎重に検討する必要性があるでしょうね」

萩原弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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