全国各地で記録的な大雨が相次ぎ、地下駐車場が浸水するケースが起きている。
三重県四日市市では9月12日夜、短時間の豪雨で地下駐車場「くすの木パーキング」の地下1階と地下2階が水没した。
国交省などによると、地下1階だけで180台が確認されたという(精査中)。浸水は地下1階で1.2メートル、地下2階では天井に達する3.5メートルに及んだとみられる。
SNSでは、駐車場にとめていた車が水没した場合、誰が弁償するのか、という点が話題になっている。
自動車所有者の自己負担なのか、それとも駐車場の管理者に責任があるのか。天災と管理責任の境界について、秋山直人弁護士に聞いた。
●管理会社側が責任を負う場合は?
──今回のように記録的な大雨で駐車場が水没し、車が故障や廃車になった場合、自己責任なのでしょうか。それとも管理者の賠償責任が生じる余地はありますか。
地下駐車場の賃貸借契約では、自然災害など不可抗力による損害について、賃貸人は賠償責任を負わないと定められていることが多いです。
観測史上最大級の雨量といった異常な豪雨は、事前に想定して有効な対策を取ることが難しいため、賃貸人や委託された管理会社は、契約上の責任を免れる可能性が高いでしょう。
一方で、シーズン中に何度も発生するような通常の大雨で浸水が起き、止水板の設置などで容易に浸水が防げたと考えられる場合には、不可抗力とは認められず、賃貸人に賠償責任が生じることもあります。
●管理者に求められる義務
──近年は「想定外」の豪雨が増えています。駐車場の管理者にはどのような対応義務があるのでしょうか。
観測史上例のない豪雨まで想定する義務はありませんが、通常想定される規模の大雨に耐えられるよう備える必要はあります。また、大規模な浸水被害が発生した場合には、そのことを知っている賃貸人は、当該事実を賃貸借契約時に賃借人に対して説明する義務が、信義則上認められると考えられます。
●保険で補償は受けられる?
──実際に車が水没してしまった場合、どのような補償が受けられますか。
自動車保険(車両保険)で水害・水没被害を補償する契約内容になっていれば、今回のような浸水被害は保険でカバーされます。ただし、地震による津波での浸水は、通常の車両保険では対象外で、特約への加入が必要です。
そのため、多くの場合は車両保険で対応でき、駐車場の賃貸人に賠償を求めるケースは限定的だといえます。