1637.jpg
偽サイトに誘導する「迷惑メール」 送っても犯罪にならないの?
2013年08月22日 17時25分

ここ数年、「迷惑メール」の手口が巧妙になってきている。以前は、あからさまにいかがわしく、一目で迷惑メールとわかるものが目立ったが、最近では思わず感心してしまうほどよく出来たメールが届く。

先日は、楽天市場のキャンペーン期間中に、「楽"店"市場」と名乗る注文確認のメールが送られた。案の定、楽天市場とは全く関係がない迷惑メールだった。ほかにも、大手SNSや配送業者のロゴで安心させておいて、怪しげなサイトへのアクセスをうながすようなメールが、日常的に送られている。また、大手銀行のネットバンキングも、迷惑メールによって偽サイトへ誘導される例があるとして、大々的に注意を呼びかけている。

迷惑メールはこのように巧妙化するばかりで、一向に減る気配がないが、発信元はきちんとお咎めを受けているのだろうか。迷惑メールを送る行為そのものが、犯罪にはならないのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●『迷惑メール』については法整備が必要だ

「その迷惑メールが『特定電子メール』にあたれば、『特定電子メールの送信の適正化等に関する法律』の対象となります。この法律の禁止事項に違反すれば、刑事罰の対象となります」

――特定電子メールって?

「特定電子メールは『自己または他人の営業につき広告または宣伝を行う手段として送信するメール』と定義されています」

――どんな禁止事項がある?

「まず、特定電子メールを送る際には、送信用メールアドレスやIPアドレス、ドメイン名を偽ることが禁じられています。違反した場合には1年以下の懲役または100万円以下(法人の場合は行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下)の罰金が科せられます」

――ほかにも規制がある?

「はい。営業のために多数の電子メール送信する目的で、架空の電子メールアドレス宛に送信してはならないという規制もあります。手当たり次第の送信を禁止するということです。

また、メール受け取りの承諾や要請をしていない人に対して、特定電子メールを送ることも禁止されています(オプトイン規制)。

これらに違反すると、まずは総務大臣・内閣総理大臣の改善命令が出されます。そして改善命令に従わない場合には、先ほどと同様の刑罰が科せられます」

――「特定電子メール」にあたらない迷惑メールはどうなる?

「広告や宣伝の手段となっていない『迷惑メール』は、上記法律による刑罰の対象とはなりません。

たとえば、クレジットカード情報や口座情報を盗み取るためにニセのサイトに誘導するようなフィッシングメールや、ワンクリック詐欺を誘引するメールなどについて、『送信すること自体』は刑罰の対象とはなっていません。

もちろん詐欺などを行えば犯罪として処罰されますが、今後は、そうした迷惑メールの送信自体も刑罰の対象となるように法整備をする必要があるでしょう」

迷惑メールが巧妙になっている現状からすれば、規制対象を広げるべきなのかもしれない。一方、メールの利用者もフィッシングサイトに誘導するメールを安易にクリックしないよう、注意する必要があるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

ここ数年、「迷惑メール」の手口が巧妙になってきている。以前は、あからさまにいかがわしく、一目で迷惑メールとわかるものが目立ったが、最近では思わず感心してしまうほどよく出来たメールが届く。

先日は、楽天市場のキャンペーン期間中に、「楽"店"市場」と名乗る注文確認のメールが送られた。案の定、楽天市場とは全く関係がない迷惑メールだった。ほかにも、大手SNSや配送業者のロゴで安心させておいて、怪しげなサイトへのアクセスをうながすようなメールが、日常的に送られている。また、大手銀行のネットバンキングも、迷惑メールによって偽サイトへ誘導される例があるとして、大々的に注意を呼びかけている。

迷惑メールはこのように巧妙化するばかりで、一向に減る気配がないが、発信元はきちんとお咎めを受けているのだろうか。迷惑メールを送る行為そのものが、犯罪にはならないのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●『迷惑メール』については法整備が必要だ

「その迷惑メールが『特定電子メール』にあたれば、『特定電子メールの送信の適正化等に関する法律』の対象となります。この法律の禁止事項に違反すれば、刑事罰の対象となります」

――特定電子メールって?

「特定電子メールは『自己または他人の営業につき広告または宣伝を行う手段として送信するメール』と定義されています」

――どんな禁止事項がある?

「まず、特定電子メールを送る際には、送信用メールアドレスやIPアドレス、ドメイン名を偽ることが禁じられています。違反した場合には1年以下の懲役または100万円以下(法人の場合は行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下)の罰金が科せられます」

――ほかにも規制がある?

「はい。営業のために多数の電子メール送信する目的で、架空の電子メールアドレス宛に送信してはならないという規制もあります。手当たり次第の送信を禁止するということです。

また、メール受け取りの承諾や要請をしていない人に対して、特定電子メールを送ることも禁止されています(オプトイン規制)。

これらに違反すると、まずは総務大臣・内閣総理大臣の改善命令が出されます。そして改善命令に従わない場合には、先ほどと同様の刑罰が科せられます」

――「特定電子メール」にあたらない迷惑メールはどうなる?

「広告や宣伝の手段となっていない『迷惑メール』は、上記法律による刑罰の対象とはなりません。

たとえば、クレジットカード情報や口座情報を盗み取るためにニセのサイトに誘導するようなフィッシングメールや、ワンクリック詐欺を誘引するメールなどについて、『送信すること自体』は刑罰の対象とはなっていません。

もちろん詐欺などを行えば犯罪として処罰されますが、今後は、そうした迷惑メールの送信自体も刑罰の対象となるように法整備をする必要があるでしょう」

迷惑メールが巧妙になっている現状からすれば、規制対象を広げるべきなのかもしれない。一方、メールの利用者もフィッシングサイトに誘導するメールを安易にクリックしないよう、注意する必要があるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る