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竹田恒泰さん、二審も敗訴 「差別主義者」ツイートは名誉毀損にあらず「公正な論評」
2021年08月24日 16時28分

明治天皇の玄孫(やしゃご/孫の孫)で作家の竹田恒泰さんが、「差別主義者」などとツイートされたことで名誉を傷つけられたとして、戦史研究家の山崎雅弘さんに損害賠償などをもとめていた裁判で、東京高裁(髙橋譲裁判長)は8月24日、竹田さんの請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。

一審の東京地裁と同じく、ツイートを「論評」と認めた控訴審判決を受けて、山崎さんは「私の一連の投稿が、社会から差別をなくすという公益に寄与する公正な論評だと認められました」とコメントした。

明治天皇の玄孫(やしゃご/孫の孫)で作家の竹田恒泰さんが、「差別主義者」などとツイートされたことで名誉を傷つけられたとして、戦史研究家の山崎雅弘さんに損害賠償などをもとめていた裁判で、東京高裁(髙橋譲裁判長)は8月24日、竹田さんの請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。

一審の東京地裁と同じく、ツイートを「論評」と認めた控訴審判決を受けて、山崎さんは「私の一連の投稿が、社会から差別をなくすという公益に寄与する公正な論評だと認められました」とコメントした。

●「教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者」と指摘していた

山崎さんは2019年11月8日、富山県朝日町の教育委員会が竹田さんを講師とした講演会を主催することについて取り上げ、「この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる」などツイートした。

竹田氏は一連の5つのツイートを名誉毀損だとして、損害賠償や投稿の削除などをもとめて提訴したが、東京地裁は論評であり、違法性はないとして請求を棄却していた。

東京高裁もまた、竹田さんのツイートや発言、著作などの言論を踏まえたうえで、山崎さんのツイートが論評にあたると評価した。

山崎さんの代理人をつとめる佃克彦弁護士によれば、一審でツイートが「公正な論評」とされたことで、竹田さん側は控訴審で新たに2点の主張を強調したという。

1点目の主張は、山崎さんは論評(ツイート)の時点で竹田さんの著作などの言論を認識しておらず、訴えられてから過去の言論を掘り起こしたというもの。

2点目の主張は、仮にツイートが論評であったとしても、人格攻撃にあたるとするもの。

●高裁は、竹田さんが強調した点を否定した

高裁判決は、1点目の主張については「山崎さんが竹田さんの言動の内容を認識し、各ツイートの前提とした事実が認められる」とした。

また、2点目についても「各ツイートの表現それ自体で竹田さんに対する人身攻撃とみられる内容であるとまではいえないし、山崎さんによる各ツイートが、私的な感情に基づいて、竹田さんの評価をおとしめたり、講演会の実施を妨げたりする目的など、人身攻撃としてされたものであることを認めるに足りる証拠はない」と否定した。

さらに、判決はツイートが「公共の利害に関する事実にかかるものであることは明らかである」ともしている。

佃弁護士は「高裁は、事実に基づく論評である限り、言論が規制やブレーキをかけられるべきではないとのメッセージを送ってくれた」と述べた。

●内田樹さん「歴史的な意義は大きい」

会見では山崎さんと、支援する会代表で神戸女学院大学名誉教授の内田樹さんのコメントが発表された。

〈原判決よりもさらに明確に、私の一連の投稿が、社会から差別をなくすという公益に寄与する公正な論評だと認められました。東京地裁の判決に続き、東京高裁でも公正かつ良識的な判決が下されたものと認識しています〉(山崎さん)

〈控訴人の差別主義的な言動について、原判決よりさらに踏み込んできびしくとらえた判決でした。差別主義者は公的な場に立ったり、公教育に関与する資格がないという山崎さんの意見が「合理的な論評」であると再確認されたことの歴史的な意義は大きいと思います〉(内田さん)

山崎さんと内田樹さんのコメント 山崎さんと内田樹さんのコメント

●負けても原告にダメージはない

被告の全面勝訴が続くも、「スラップ訴訟」(佃弁護士)に課題は残る。

高裁は一審、二審の訴訟費用を、竹田さんの負担と命じたが、「費用は多くても5万円程度だと思う。(金銭的なダメージは)まったくない」(佃弁護士)という。

一方で、訴えられた側は、時間的にも金銭的にも大きな負担を強いられた。

「きちんとした言論であれば、訴えても勝ち目はない。しかし、訴えられた側に負担があるのは、制度自体の問題」(佃弁護士)であるとした。

なお、山崎さんを応援するため、約1400人から1300万円もの資金が集まった。

「ある種の言論について、苦々しく思っていた人たちがいて、誰かが窮地に陥ったときに支援しようと、どっと支援してくれた。苦々しく思っていた人たちが、世の中にきちんといたということだと思います」(佃弁護士)

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