16426.jpg
化学兵器使用は国際法違反!? ニュースでよく耳にする「国際法」ってなに?
2013年09月15日 14時00分

ニュースでおなじみの「国際法」という言葉。最近では、中東・シリアでの紛争をめぐって、米国が「シリアで化学兵器が使われたのは『国際法』違反だ」と主張したり、ロシアが「国連安保理の承認なしに軍事介入することは『国際法』に違反する」と反発するなど、登場するケースが増えているようだ。

だが「国際法って何?」と聞かれて、即答できる人は少ないだろう。国際法とはいったいどんな法律なのだろうか。また、違反すると「処罰」されることもあるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。

●国際法に違反すると「制裁」や「刑事罰」を科される

「国際法は『国際社会を規律する法』ですが、憲法や民法、刑法のように、どこかにまとめて文書化されているものではありません。『国際法』という名前の単一の法律があるわけではないのです。

国際法は、様々な形のルール(法源)から成り立っています。法源となるのは(1)条約、(2)慣習法、(3)法の一般原則、(4)判例、(5)学説などです。国際社会を規律する様々なルールを総称して『国際法』と呼んでいるのです」

――国際法違反の判断や、処罰はどういった形で行われるの?

「もっともイメージしやすい典型例は、『国連決議』や『国連安保理決議』が出され、決議に基づく経済制裁が、違反国に対して行われるケースでしょう。この場合の『国連決議』や『国連安保理決議』が、国際法にあたります。

シリアの紛争で問題になっている化学兵器については、1925年のジュネーブ議定書で使用が禁止されているほか、1997年の化学兵器禁止条約で開発・生産・保有を包括的に禁じています。これも国際法といえますが、シリアはジュネーブ議定書の締約国なので、『化学兵器を使用すると国際法違反』ということができます。

また、国際司法裁判所(ICJ)や、国際刑事裁判所(ICC)で裁判が行われ、その結果、『A国はB国に対して賠償金を支払え』といった、判決が下される場合もあります」

●「個人」に刑事罰が科されるケースもある

――国際法の対象となるのは、国家だけ?

「以前はそう考えられていました。しかし、今では範囲が広がり、国家や国際機関だけではなく、個人や多国籍企業にも効力が及ぶようになっています。たとえば、国連安保理が特別に(ad hocに)設置した刑事裁判所が、個人に対して刑事罰を課した例もあります。

具体的には、旧ユーゴスラビアやルワンダでの民族虐殺などに対して設置された特別法廷で、『ジュネーブ条約違反』や『ジェノサイド罪』などを理由に、戦犯個人が刑事罰を課されています」

(弁護士ドットコムニュース)

ニュースでおなじみの「国際法」という言葉。最近では、中東・シリアでの紛争をめぐって、米国が「シリアで化学兵器が使われたのは『国際法』違反だ」と主張したり、ロシアが「国連安保理の承認なしに軍事介入することは『国際法』に違反する」と反発するなど、登場するケースが増えているようだ。

だが「国際法って何?」と聞かれて、即答できる人は少ないだろう。国際法とはいったいどんな法律なのだろうか。また、違反すると「処罰」されることもあるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。

●国際法に違反すると「制裁」や「刑事罰」を科される

「国際法は『国際社会を規律する法』ですが、憲法や民法、刑法のように、どこかにまとめて文書化されているものではありません。『国際法』という名前の単一の法律があるわけではないのです。

国際法は、様々な形のルール(法源)から成り立っています。法源となるのは(1)条約、(2)慣習法、(3)法の一般原則、(4)判例、(5)学説などです。国際社会を規律する様々なルールを総称して『国際法』と呼んでいるのです」

――国際法違反の判断や、処罰はどういった形で行われるの?

「もっともイメージしやすい典型例は、『国連決議』や『国連安保理決議』が出され、決議に基づく経済制裁が、違反国に対して行われるケースでしょう。この場合の『国連決議』や『国連安保理決議』が、国際法にあたります。

シリアの紛争で問題になっている化学兵器については、1925年のジュネーブ議定書で使用が禁止されているほか、1997年の化学兵器禁止条約で開発・生産・保有を包括的に禁じています。これも国際法といえますが、シリアはジュネーブ議定書の締約国なので、『化学兵器を使用すると国際法違反』ということができます。

また、国際司法裁判所(ICJ)や、国際刑事裁判所(ICC)で裁判が行われ、その結果、『A国はB国に対して賠償金を支払え』といった、判決が下される場合もあります」

●「個人」に刑事罰が科されるケースもある

――国際法の対象となるのは、国家だけ?

「以前はそう考えられていました。しかし、今では範囲が広がり、国家や国際機関だけではなく、個人や多国籍企業にも効力が及ぶようになっています。たとえば、国連安保理が特別に(ad hocに)設置した刑事裁判所が、個人に対して刑事罰を課した例もあります。

具体的には、旧ユーゴスラビアやルワンダでの民族虐殺などに対して設置された特別法廷で、『ジュネーブ条約違反』や『ジェノサイド罪』などを理由に、戦犯個人が刑事罰を課されています」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る