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たまたま目撃した「他人のトラブル」 携帯で「撮影」するのは違法なのか
2013年03月21日 20時12分

横浜市の路上で3月10日午前4時半ごろ、20代の男性2人が見ず知らずの男から殴る蹴るの暴行を受け、そのうちの1人が死亡するという事件があった。報道によると、男性2人組が居酒屋を出た際に通りがかった別の男性とトラブルになったが、そのトラブルを携帯電話で撮影していた男がいたため、これを見とがめたところ、男が殴りかかってきたらしい。

なにか事件や事故があったときに、そこに居合わせた人が携帯で写真やビデオを撮影するというのは、よくあることだ。しかし他人の目をひくようなトラブルであっても、その当事者からすれば、「携帯で撮影されたくない」と思うのは自然な感情だろう。

はたして、たまたま目撃したトラブルや事件・事故を、携帯で撮影することは違法なのだろうか。新聞やテレビのカメラマンならば普通にやっていることだが、一般の人が撮影することは、法律的にどうなのだろうか。相沢祐太弁護士に聞いた。

●携帯での無断撮影は「肖像権」や「プラバシー権」を侵害する可能性あり

「最近、高性能のカメラ付携帯電話の普及に伴い、他人の様子を無断で撮影したり、ネット上にアップしたりすることに特に抵抗がない方が多いようです。しかし、そのような行為は、撮影された人にとっては、いわゆる『肖像権』や『プライバシー権』といった人格的利益が侵害されたということで、損害賠償の問題が生じる可能性があると、肝に銘じておくべきでしょう」

このように相沢弁護士は、「携帯での撮影」が、他人の肖像権やプライバシー権を侵害する可能性を指摘する。

「もちろん、すべての無断撮影が肖像権等の侵害になるというわけではありません。違法となるか否か、損害賠償義務があるか否かについては、撮影された人の社会的地位やその活動内容、撮影の場所、目的、態様や撮影の必要性等を総合考慮して、撮影された人にとって、『社会生活上受忍すべき限度』を超えるものであったか否かによって、判断されることになります(最高裁平成17年11月10日判決)」

つまり、さまざまな要素を考慮して、社会生活を送るうえで受け入れるべき程度といえるかどうかで、他人の様子の無断撮影が違法かどうか決まってくるというわけだ。ただ、これでもまだあいまいな感じがする。実際には、どのよう場合がOKで、どのような場合がNGなのだろう。

●軽いノリで「他人のトラブル」を撮影するのは避けたほうがいい

「たとえば、現に公道上で発生している刑事事件や事故について、マスメディアが報道目的で撮影し、報道することについては 『社会生活上受忍すべき範囲内』であるとして、肖像権の侵害には当たらないことが多いと思います。

他方、特に正当な目的がなく、単なる興味本位で他人の口論を撮影したり、SNSにアップしたりした場合には、そのトラブルの犯罪性や切迫性の有無や程度にもよりますが、公道上であっても、受忍限度を超えるものであり、肖像権の侵害に当たると判断される可能性があるでしょう」

このように説明したうえで、相沢弁護士は次のようにアドバイスしている。

「いずれにしても、最終的な判断は、裁判所が事後的に行うものであり、撮影する瞬間には誰も確実な判断はできません。したがって、軽いノリで他人のトラブルを撮影するのは避けたほうがいいでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

横浜市の路上で3月10日午前4時半ごろ、20代の男性2人が見ず知らずの男から殴る蹴るの暴行を受け、そのうちの1人が死亡するという事件があった。報道によると、男性2人組が居酒屋を出た際に通りがかった別の男性とトラブルになったが、そのトラブルを携帯電話で撮影していた男がいたため、これを見とがめたところ、男が殴りかかってきたらしい。

なにか事件や事故があったときに、そこに居合わせた人が携帯で写真やビデオを撮影するというのは、よくあることだ。しかし他人の目をひくようなトラブルであっても、その当事者からすれば、「携帯で撮影されたくない」と思うのは自然な感情だろう。

はたして、たまたま目撃したトラブルや事件・事故を、携帯で撮影することは違法なのだろうか。新聞やテレビのカメラマンならば普通にやっていることだが、一般の人が撮影することは、法律的にどうなのだろうか。相沢祐太弁護士に聞いた。

●携帯での無断撮影は「肖像権」や「プラバシー権」を侵害する可能性あり

「最近、高性能のカメラ付携帯電話の普及に伴い、他人の様子を無断で撮影したり、ネット上にアップしたりすることに特に抵抗がない方が多いようです。しかし、そのような行為は、撮影された人にとっては、いわゆる『肖像権』や『プライバシー権』といった人格的利益が侵害されたということで、損害賠償の問題が生じる可能性があると、肝に銘じておくべきでしょう」

このように相沢弁護士は、「携帯での撮影」が、他人の肖像権やプライバシー権を侵害する可能性を指摘する。

「もちろん、すべての無断撮影が肖像権等の侵害になるというわけではありません。違法となるか否か、損害賠償義務があるか否かについては、撮影された人の社会的地位やその活動内容、撮影の場所、目的、態様や撮影の必要性等を総合考慮して、撮影された人にとって、『社会生活上受忍すべき限度』を超えるものであったか否かによって、判断されることになります(最高裁平成17年11月10日判決)」

つまり、さまざまな要素を考慮して、社会生活を送るうえで受け入れるべき程度といえるかどうかで、他人の様子の無断撮影が違法かどうか決まってくるというわけだ。ただ、これでもまだあいまいな感じがする。実際には、どのよう場合がOKで、どのような場合がNGなのだろう。

●軽いノリで「他人のトラブル」を撮影するのは避けたほうがいい

「たとえば、現に公道上で発生している刑事事件や事故について、マスメディアが報道目的で撮影し、報道することについては 『社会生活上受忍すべき範囲内』であるとして、肖像権の侵害には当たらないことが多いと思います。

他方、特に正当な目的がなく、単なる興味本位で他人の口論を撮影したり、SNSにアップしたりした場合には、そのトラブルの犯罪性や切迫性の有無や程度にもよりますが、公道上であっても、受忍限度を超えるものであり、肖像権の侵害に当たると判断される可能性があるでしょう」

このように説明したうえで、相沢弁護士は次のようにアドバイスしている。

「いずれにしても、最終的な判断は、裁判所が事後的に行うものであり、撮影する瞬間には誰も確実な判断はできません。したがって、軽いノリで他人のトラブルを撮影するのは避けたほうがいいでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

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