16582.jpg
厚労省が児童福祉司の「国家資格化」を検討・・・虐待防止の切り札になるか?
2015年10月03日 09時23分

厚生労働省は9月上旬、「児童福祉司」の国家資格化など、児童虐待の対応強化策を盛り込んだ報告書を公表した。報道によると、厚労省はこれを受けて、来年の通常国会で児童福祉法の改正案を提出する方針だという。

児童福祉司は、虐待や家庭の不和、非行などに悩む親や子どもから相談を受け、問題解決をはかる児童相談所の職員だ。現在は、大学で心理学や社会学を専攻し、児童相談所で1年以上の実務経験を積むなどすれば資格を得られる。報告書は、児童福祉司の専門性を高め、児童虐待への対応を強化するために、国家資格化を検討すべきだと明記している。

このほか、報告書では、虐待の見落としや対応の遅れなどを防ぐために、関係機関同士の連携強化を提言。また、虐待を予防するためには、妊娠期からリスクに着目して支援につなげるべきだとして、望まない妊娠をした女性の情報を把握することや、妊娠期〜子育て期にわたる継続した支援の必要性などを挙げている。

今回、厚労省が出した報告書の内容は、児童虐待を防ぐ切り札になるのだろうか。児童虐待の問題に関わる榎本清弁護士に意見を聞いた。

厚生労働省は9月上旬、「児童福祉司」の国家資格化など、児童虐待の対応強化策を盛り込んだ報告書を公表した。報道によると、厚労省はこれを受けて、来年の通常国会で児童福祉法の改正案を提出する方針だという。

児童福祉司は、虐待や家庭の不和、非行などに悩む親や子どもから相談を受け、問題解決をはかる児童相談所の職員だ。現在は、大学で心理学や社会学を専攻し、児童相談所で1年以上の実務経験を積むなどすれば資格を得られる。報告書は、児童福祉司の専門性を高め、児童虐待への対応を強化するために、国家資格化を検討すべきだと明記している。

このほか、報告書では、虐待の見落としや対応の遅れなどを防ぐために、関係機関同士の連携強化を提言。また、虐待を予防するためには、妊娠期からリスクに着目して支援につなげるべきだとして、望まない妊娠をした女性の情報を把握することや、妊娠期〜子育て期にわたる継続した支援の必要性などを挙げている。

今回、厚労省が出した報告書の内容は、児童虐待を防ぐ切り札になるのだろうか。児童虐待の問題に関わる榎本清弁護士に意見を聞いた。

●国家資格化のメリットとは?

「本報告書には、従来から論文や報告書で指摘されてきた問題点が網羅されています。具体的には、児童福祉司の人数不足、関係諸機関の連携の不十分さ等の現行の児童虐待防止の制度面・運用面の当面の問題点、改善点です。

さらに現場の声を踏まえて検討を深めたものとなっており、この報告書にある提言が実施できれば、その効果は十分期待できるものと思われます」

このように榎本弁護士は評価するが、問題点も指摘する。

「報告書の性質上やむを得ないことではありますが、抽象論にとどまっているものが多くなっています。実施するにあたっては、具体化が不可欠なので、さらなる議論の深化が期待されます。

児童福祉司の国家資格化については、児童福祉司の専門性を入口の時点で一定程度確保できるというメリットがあります。

しかし、国家資格化は、その制度設計や運用の仕方にもよりますが、間口を狭めることにもつながりかねません。児童福祉司に関するもう一つの課題である人数不足の解消という面では逆効果ではないかという指摘もあります」

榎本弁護士は、児童福祉司の国家資格化をどう評価するのだろうか。

「現在すでに存在する社会福祉士や精神保健福祉士という資格との関係を考えると、新たに同種の国家資格を創設するのは不経済ともいえます。むしろ既存のそれらの資格を有効活用するほうがより効率的に専門性を向上できるのではないか、という指摘もあります。

児童福祉司の専門性の向上のためには、国家資格化を検討する必要はあります。しかし同時に、児童福祉司の専門職採用や専門研修制度の拡充という点も考慮しつつ、検討する必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る