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全国初の「ヘイトスピーチ対策条例」が大阪市で成立ーーどう評価すべきか?
2016年02月13日 10時52分

大阪市議会は1月中旬、全国ではじめてヘイトスピーチ対策の条例を制定・公布した。大阪市の吉村洋文市長は、この条例を「運用準備と周知の期間を考え、7〜8月に施行したい」との考えを示している。

大阪市の条例は、ヘイトスピーチについて「特定の人種や民族の個人・集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で誹謗中傷するもの」などと定義。大学教授や弁護士らが委員となる「大阪市ヘイトスピーチ審査会」が発言内容を審査、その意見をもとに大阪市がヘイトスピーチを行ったと認定した団体などの名称や発言内容、氏名を公表する。

当初、条例案には、ヘイトスピーチに関する訴訟や仮処分等をする場合には、予算の範囲内において、費用の貸し付けなどの支援をするとも盛り込まれていた。しかし、最終的には、削除された。

ヘイトスピーチ対策は、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いで、規制することに抵抗を示す声もある。吉村市長は会見で、審査会のメンバーについて「表現の自由にかかわる大事な条例なので、憲法、法律にも造形の深い方、社会的ないろいろな事象について造詣の深い専門家、そういった方々になっていただきたい」と話している。

ヘイトスピーチ対策に取り組んできた弁護士は、大阪市の条例をどう評価するのだろうか。神原元弁護士に聞いた。

大阪市議会は1月中旬、全国ではじめてヘイトスピーチ対策の条例を制定・公布した。大阪市の吉村洋文市長は、この条例を「運用準備と周知の期間を考え、7〜8月に施行したい」との考えを示している。

大阪市の条例は、ヘイトスピーチについて「特定の人種や民族の個人・集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で誹謗中傷するもの」などと定義。大学教授や弁護士らが委員となる「大阪市ヘイトスピーチ審査会」が発言内容を審査、その意見をもとに大阪市がヘイトスピーチを行ったと認定した団体などの名称や発言内容、氏名を公表する。

当初、条例案には、ヘイトスピーチに関する訴訟や仮処分等をする場合には、予算の範囲内において、費用の貸し付けなどの支援をするとも盛り込まれていた。しかし、最終的には、削除された。

ヘイトスピーチ対策は、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いで、規制することに抵抗を示す声もある。吉村市長は会見で、審査会のメンバーについて「表現の自由にかかわる大事な条例なので、憲法、法律にも造形の深い方、社会的ないろいろな事象について造詣の深い専門家、そういった方々になっていただきたい」と話している。

ヘイトスピーチ対策に取り組んできた弁護士は、大阪市の条例をどう評価するのだろうか。神原元弁護士に聞いた。

●「表現の自由」への配慮は?

「ヘイトスピーチについては、表現の自由との関係で、規制の可否が永らく議論されてきました。今回の大阪市の条例は、議論の膠着状態を打ち破って『とにかくやれることをやってみよう』と一歩を踏み出した点で、非常に意味のあるものだと思っています。

大阪市の条例は、 ヘイトスピーチの要件を『社会からの排除等といった目的性』、『侮蔑・誹謗中傷といった態様面』、『不特定多数の者が表現内容を知り得るといった対象者の不特定性』などと厳しく限定しています。

また、認定にあたって学識経験者の意見を聞くことにする等、手続き的にも慎重にしていることが、この条例の特徴だといえます。

これらは、表現の自由にも十分に配慮したものといえるでしょう。

条例が定めるヘイトスピーチの要件が限定的なものであったとしても、この条例は、ヘイトスピーチの根絶を願う立場から十分に評価できるものです。なにより『ヘイトスピーチは違法であり、これを規制できるのだ』ということを公に宣言すること自体、非常に画期的であり、インパクトがあることだからです。

このように、ヘイトスピーチについては、まず自治体で規制の実績を作っていき、最終的には、国の法律で全国的な規制を定めていく、という方向がよいかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

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