4月29日、愛知県岡崎市の山中にある廃墟ホテルで、白骨化した成人の遺体が発見されました。NHKなどの報道によると、現場を訪れていた若者らが偶然遺体を見つけ、警察に通報したということです。
報道によれば、遺体は白いシャツに黒いズボン、黄色のスニーカーを着用しており、成人とみられるものの、性別や身元は不明。警察は自殺の可能性もあるとみて調べを進めているそうです。
遺体発見の現場は長年放置された廃墟でした。そもそも、このような立ち入りは法的に問題ないのでしょうか。検討してみました。
●建造物侵入罪には該当しない可能性が高い
正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入した場合には、建造物侵入罪(刑法130条前段、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)に問われます。
廃墟でも「建造物」にはあたりうるのですが、管理者が誰もいなくなってしまっている場合、人の「看守する」とはいえず、建造物侵入罪は成立しません。
報道によると、この建物はかつてはホテルとして使用されていたようですが、10年以上前には廃墟になっていたとみられています。そうすると、建造物侵入罪は成立しない可能性が高いです。
建造物侵入罪の条文(弁護士ドットコムニュース編集部作成)
●軽犯罪法1条1号違反となる
軽犯罪法1条1号は、人が住んでおらず、且つ、看守していない建物の内に正当な理由がなくてひそんだ場合を処罰しています。(拘留または科料。拘留は1日〜29日の身柄拘束、科料は1000円〜1万円未満を支払う)
この条文は、廃屋などの住居・建造物侵入にあたらない場所への立ち入りについて、犯罪者の根城や不良青少年のたまり場となるなど、社会的に望ましくない行為に利用されることを防止するため、このような場所に潜むことを禁じたものといわれています。(「実務のための軽犯罪法解説」東京法令出版p37参照)
軽微な犯罪と扱われているため、実際に起訴されて刑事裁判になることは非常に少ないと思われますが、逮捕される可能性も(少ないですが)ありますし、そうでなくても書類送検されて略式起訴(科料を支払って終わり)となることはありえます。
略式でも起訴されれば前科がつきます。
また、ほかの重大事件との関連を疑われる場合もあり、その場合には逮捕・勾留や、場合によっては起訴されるリスクが高まります。
「肝試しの名所」と呼ばれる廃屋は、全国各地にありますが、安易な気持ちで立ち入ると思わぬ不利益を受ける場合があります。
また、老朽化が進んでいる廃屋の場合、床が抜けたり天井や壁などが崩れたりする危険もあります。くれぐれも立ち入らないようにしましょう。
軽犯罪法1条1号の条文(弁護士ドットコムニュース編集部作成)