16799.jpg
刑務所にいた過去、会社に打ち明けたらクビ「社会の目があるから…」 再起できず苦悩
2019年05月06日 09時34分

「刑務所に入っていた人を会社に置いておくのは、社会の目があるからちょっと…」。宮原さん(30代・仮名)は会社でこのように言われ、職場を去った。

3月19日、東京・霞が関の弁護士会館で開催された講演会「出所者の生活・就労支援と弁護士活動について」(主催:第一東京弁護士会刑事法制委員会)で、体験談を語った宮原さん。(過去記事:「2度と刑務所に戻らない」出所者の決意を支援、元受刑者の取組み https://www.bengo4.com/c_1009/n_9403/

仕事を始めて2、3カ月経ったころに誘われた会社の飲み会で、服役していたことを打ち明けたのだという。

宮原さんだけではない。弁護士ドットコムにも「無遅刻・無欠勤で働いてきましたが、前科があることを話したところ、クビと言われました。その日のうちに辞めさせられました」という悩みが寄せられている。

服役経験や前科があることは知られたくない事実だ。しかし、前科を隠していたことがバレてしまったら、解雇されても仕方がないのだろうか。労働問題にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

「刑務所に入っていた人を会社に置いておくのは、社会の目があるからちょっと…」。宮原さん(30代・仮名)は会社でこのように言われ、職場を去った。

3月19日、東京・霞が関の弁護士会館で開催された講演会「出所者の生活・就労支援と弁護士活動について」(主催:第一東京弁護士会刑事法制委員会)で、体験談を語った宮原さん。(過去記事:「2度と刑務所に戻らない」出所者の決意を支援、元受刑者の取組み https://www.bengo4.com/c_1009/n_9403/

仕事を始めて2、3カ月経ったころに誘われた会社の飲み会で、服役していたことを打ち明けたのだという。

宮原さんだけではない。弁護士ドットコムにも「無遅刻・無欠勤で働いてきましたが、前科があることを話したところ、クビと言われました。その日のうちに辞めさせられました」という悩みが寄せられている。

服役経験や前科があることは知られたくない事実だ。しかし、前科を隠していたことがバレてしまったら、解雇されても仕方がないのだろうか。労働問題にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

●採用時に告げなかったら「経歴詐称」となるのか

履歴書には、賞罰を記入する欄が存在することもあるが、前科を記入していなかった場合、経歴詐称となるのか。

「採用の判断に影響する事柄を伏せることは経歴詐称になります。そのため、今までは前科を伏せることも経歴詐称と考えられていました。

しかし、2017年に施行された改正個人情報保護法で、前科は『要配慮事項』となり、本人の同意なく前科の情報を取得できないことになりました。

そのため、履歴書の賞罰欄は『前科を伏せたい者にまで前科の記載を求めるものではない』と解される余地があります。

また、履歴書に賞罰の記入欄がなく、採用面接でも前科の有無を聞かれなかったという場合も、先ほど説明した改正個人情報保護法の趣旨からして、経歴詐称にならないといえるでしょう」

●バレてしまったら、解雇されてしまう可能性

履歴書に書かなくてもよかったとしても、採用後に前科があることがバレてしまった場合、会社としては、解雇することは可能なのか。

「会社側は採用時、労働者について『労働力があるか』という判断をします。その判断に大きく影響するような事柄を『詐称』することは、信義則違反として許されません。

判例にも、有罪確定判決の秘匿を理由に、懲戒解雇を認めたものがあります」

となると、前科がバレたら、解雇されても仕方ないのだろうか。

「いいえ。必ずしも、そういうわけではありません。採用後、相当期間にわたって大過なく勤務した場合、経歴詐称の信義則違反は『治癒される』と言われています」

●前科があるというだけで解雇することに合理性はあるのか

今回の事例の場合はどうなのか。宮原さんは採用されてから2、3カ月後に刑務所にいたことを打ち明け、退職を迫られている。

「勤務していた期間が短いため、いわゆる『治癒』論で労働者を救済するのはむずかしいでしょう。また、前科を自ら明かしている場合は個人情報保護法違反の問題にはなりません。

そうすると、先の判例の存在からして解雇やむなしとなりそうです。

しかし、前科が何年も前で、その後立派に更生している人を単に前科があるというだけで解雇することに合理性があるのか躊躇を覚えます。

無論、前科が直近で、その犯罪が職務と関係するような場合などは解雇やむなしとなる可能性もあります。たしかに判例はありますが、今後はその前科の中身など慎重に判断されるようになるのではないでしょうか」

大川弁護士は「もしどんな場合でも『前科』があるという理由で解雇が許されるとなれば、前科がある人は社会内で更生できません」と指摘していた。

「生き直したい」。そう願って、再び社会に復帰するために努力している人もいる。社会の中で更生するためには、本人の努力だけでなく、周囲の理解も不可欠といえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る