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百田尚樹氏「サイン会」爆破予告があっても開催ーー主催者は「中止」しなくていいの?
2016年03月29日 10時37分

「永遠の0(ゼロ)」や「海賊とよばれた男」などの小説で知られる作家の百田尚樹さんのサイン会が3月中旬、兵庫県西宮市の商業施設で開かれた。このサイン会が開かれる直前、男の声で「百田尚樹のサイン会を開くと爆破する」という予告電話が施設内の書店にかかってきたという。

報道によると、百田さんのサイン会は3月12日、西宮市の阪急西宮ガーデンズで開かれた。サイン会は当初、同施設内にある書店「ブックファースト」で開かれる予定だったが、爆破予告があったため、同施設の別の部屋に会場をうつした。さらに、警察が施設内を捜索したうえで、参加者約100人の手荷物を点検するなど、厳重な警備の中でおこなわれたという。

百田さんは同日、ツイッター上で「爆破なんて簡単にはできません」「警察の中止要請に対して、ブックファーストさんと阪急西宮ガーデンズさんが『中止にはしない』という毅然とした態度を取ってくれました」「別の店なら中止になっていた可能性もあります」など、施設側を賞賛するコメントをつぶやいた。

兵庫県警が威力業務妨害の疑いで捜査しているということだが、今回のように、爆破予告がある場合、イベント中止になることがある。万が一の事態を回避するために、主催者がイベントを中止する法的な義務はあるのか、ないのか。村上英樹弁護士に聞いた。

「永遠の0(ゼロ)」や「海賊とよばれた男」などの小説で知られる作家の百田尚樹さんのサイン会が3月中旬、兵庫県西宮市の商業施設で開かれた。このサイン会が開かれる直前、男の声で「百田尚樹のサイン会を開くと爆破する」という予告電話が施設内の書店にかかってきたという。

報道によると、百田さんのサイン会は3月12日、西宮市の阪急西宮ガーデンズで開かれた。サイン会は当初、同施設内にある書店「ブックファースト」で開かれる予定だったが、爆破予告があったため、同施設の別の部屋に会場をうつした。さらに、警察が施設内を捜索したうえで、参加者約100人の手荷物を点検するなど、厳重な警備の中でおこなわれたという。

百田さんは同日、ツイッター上で「爆破なんて簡単にはできません」「警察の中止要請に対して、ブックファーストさんと阪急西宮ガーデンズさんが『中止にはしない』という毅然とした態度を取ってくれました」「別の店なら中止になっていた可能性もあります」など、施設側を賞賛するコメントをつぶやいた。

兵庫県警が威力業務妨害の疑いで捜査しているということだが、今回のように、爆破予告がある場合、イベント中止になることがある。万が一の事態を回避するために、主催者がイベントを中止する法的な義務はあるのか、ないのか。村上英樹弁護士に聞いた。

●イベント主催者側は安全対策をとる義務がある

「爆破予告など、来場者への危険が予想される場合、イベントの主催者や施設管理者には、来場者の安全に配慮すべき法的義務があると考えられます。

もちろん、実際に、爆破行為やテロなどがあれば、最も悪いのは爆破行為等をした人であって、それが重大な犯罪になることはいうまでもありません。

しかし、誰かの犯罪行為によるものであっても、来場者への危険を予知でき、対策ができる場合、主催者などは安全対策をとらなければならないでしょう」

村上弁護士はこのように述べる。もし仮に、安全対策を怠って、死傷者が出るような事態になれば、主催者や施設管理者は責任を問われるのだろうか。

「そのような場合、主催者や施設管理者は、民法上の責任(不法行為責任など)に基づく損害賠償責任を追及される可能性があります。ただ、どの程度の安全対策が必要かはケースバイケースです」

●主催者側は「ギリギリの判断」を迫られる

百田さんのサイン会のケースはどうだろうか。

「今回は、厳重な警備や、手荷物検査をおこなうなどの措置によって、安全対策をとっています。主催者や施設管理者としては、これらの安全対策によって必要な法的義務をはたしているという立場だと思われます」

今回のような爆破予告があると、イベントが中止されることがよくあるが・・・・

「たしかに、安全を最優先すればイベントを中止にしてしまうことが最も手堅いことです。実際に、政治的テーマを扱った集会や映画の上映などについて、予定されたイベントや施設の利用が中止となったケースが過去にあります。

しかし、爆破予告やテロ予告などは卑劣な行為です。爆破予告が一つあれば、集会やイベントが中止になるのでは、言論の自由もなくなってしまいます。党派や思想の方向性にかかわらず、言論が封殺されるようなことになれば、民主主義社会が機能しなくなってしまいます。

一方で、本当に爆破行為がある可能性もあり、主催者や施設管理者としては、来場者の安全を守るために十分な措置をとらなければなりません。警備を厳重にしても100%防ぐことは困難です。先ほど述べた通り、万一、死傷者が出たときに法的責任を問われる可能性もあります。

結局、施設管理者や主催者とすれば、このような『板挟み』状態の中でギリギリの判断を迫られることになります」


村上弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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