16876.jpg
我がもの顔で道路を占拠する「奈良のシカ」 誰かが別の場所に「移動」させてもいい?
2014年08月08日 11時04分

夕涼みをするために、奈良公園のシカたちが道路に続々と集結。そんな異様な光景の写真や動画がツイッターで拡散されて話題になっている。我がもの顔で歩くシカたちは、歩道だけでなく、車道も占拠している。すぐそばを自動車が通過していくので、危険な光景にもみえる。

この奈良公園のシカたちは、誰が管理しているのか。奈良県のホームページによると、国の天然記念物に指定されている野生動物で、誰かが所有して、飼育しているわけではないそうだ。

ネット上では「事故が起こらないか心配」「管理しろよ」という意見もある。もし仮に、「交通事故が起こらないように」と考えた人が、シカを捕獲して別の場所に追いやったとしたら、法的に問題があるのだろうか。動物問題にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。

夕涼みをするために、奈良公園のシカたちが道路に続々と集結。そんな異様な光景の写真や動画がツイッターで拡散されて話題になっている。我がもの顔で歩くシカたちは、歩道だけでなく、車道も占拠している。すぐそばを自動車が通過していくので、危険な光景にもみえる。

この奈良公園のシカたちは、誰が管理しているのか。奈良県のホームページによると、国の天然記念物に指定されている野生動物で、誰かが所有して、飼育しているわけではないそうだ。

ネット上では「事故が起こらないか心配」「管理しろよ」という意見もある。もし仮に、「交通事故が起こらないように」と考えた人が、シカを捕獲して別の場所に追いやったとしたら、法的に問題があるのだろうか。動物問題にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。

●天然記念物にケガを負わせたら犯罪?

「奈良公園のシカは、1980年代に春日大社が所有権を放棄して以来、所有者がいない状態です。また、1957年には、文化財保護法に基づく国の天然記念物に指定されています。

文化財保護法では『天然記念物の現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、5年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する』と定められています」

では、シカを捕獲すると、犯罪になるのだろうか。

「さきほどの規定を奈良のシカに当てはめてみると、シカの現状に手を加えたり、個体数に影響を与える行為をしてはならないと考えられます。

捕獲や移送の過程で、シカがけがを負ったり、死亡したりすれば、罪となる可能性が高いでしょう」

なるほど、奈良県のホームページにも「個人が捕まえたり、傷つけたりすることは違法行為です」と書かれていたが、このような法的な理由があったのか。

●シカを撃ち殺して「実刑判決」というケースも

実際に裁判になったケースもあるのだろうか?

「シカ肉を売る目的で奈良公園のシカをボーガンで撃ち殺した男性が、文化財保護法違反の罪で起訴され、2010年に懲役6カ月の実刑判決を受けています。

ただ、判決の量刑は、その被告人の前科前歴など、報道されていない事情も考慮されるので、このケースだけを見て、奈良公園のシカを殺すと実刑判決を受ける、と一概にいえません」

では、危険な状態のシカを見かけた場合にはどうすればいいのだろうか。

「良かれと思ってしたことでも、違法と判断される可能性があるので、自分たちだけで何とかしようとせず、『一般財団法人奈良の鹿愛護会』など関係者に連絡して、適切に対応してもらうことが相当でしょう」

細川弁護士はこう締めくくった。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る