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車からの「落とし物」で事故が発生 「荷物を落とした」運転者の責任は?
2013年11月16日 21時08分

走行中の自動車から「意外な物」が落ちたことがきっかけで、痛ましい事故が起きた。発生したのは、10月下旬。神奈川県藤沢市内の県道を走っていた軽ワゴン車の屋根から、サーフボードが落下したのが、悲劇の始まりだった。

後続車の運転者がハンドルを切って避けようとしたが、勢いあまって中央分離帯を越え、対向車線に飛び出してしまう。飛び出した車は、反対側から走ってきた軽乗用車と正面衝突。軽乗用車を運転していた30代の男性が頭を打って、意識不明の重体となったのだという。

このように自動車から物が落ちたことがきっかけで事故が発生したとき、落下物を載せていた車の運転者は何らかの罪に問われるのだろうか。今回のように、落下物が直接、他人の自動車にぶつかったわけではない場合でも、責任が生じるのだろうか。交通事故問題にくわしい阿部泰典弁護士に聞いた。

走行中の自動車から「意外な物」が落ちたことがきっかけで、痛ましい事故が起きた。発生したのは、10月下旬。神奈川県藤沢市内の県道を走っていた軽ワゴン車の屋根から、サーフボードが落下したのが、悲劇の始まりだった。

後続車の運転者がハンドルを切って避けようとしたが、勢いあまって中央分離帯を越え、対向車線に飛び出してしまう。飛び出した車は、反対側から走ってきた軽乗用車と正面衝突。軽乗用車を運転していた30代の男性が頭を打って、意識不明の重体となったのだという。

このように自動車から物が落ちたことがきっかけで事故が発生したとき、落下物を載せていた車の運転者は何らかの罪に問われるのだろうか。今回のように、落下物が直接、他人の自動車にぶつかったわけではない場合でも、責任が生じるのだろうか。交通事故問題にくわしい阿部泰典弁護士に聞いた。

●「たかが落し物」と軽くみることはできない

「車の屋根からサーフボードが落ちた場合、通常は、運転者によるルーフキャリアの設置か、ルーフキャリアへのボードの設置に、不備があったものと考えられます。

それによって事故が起きた場合、軽ワゴン車の運転者には『過失』が認められることになります。刑事責任としては自動車運転過失傷害罪となり、民事責任としては損害賠償義務が発生するものと考えられます」

阿部弁護士はこのように解説する。自動車運転過失傷害罪は最高刑が懲役7年という重い罪だ。しかも、民事での損害賠償の義務もある。「たかが落し物」と軽くみることは決してできない。

今回の事件では、先行車(A)から落下したサーフボードが後続車(B)を直撃したわけではない。それを避けようとした後続車(B)が別の軽乗用車(C)にぶつかり、その車(C)の運転者が大ケガを負ったのだ。このような場合でも、サーフボードを落とした軽ワゴン車(A)の運転者は責任を負うことになるのだろうか。

「たしかに、本件では、落下物が直接、対向車線の軽乗用車にぶつかったわけではありません。したがって、後続車の運転者が車間距離を十分にとっていなかったために、サーフボードを避けようと対向車線に飛び出してしまった可能性もあります」

●「後続車の車間距離が近かった」としても免責されない

では、後続の車が車間距離をとっていなかったと主張すれば、サーフボードを落とした軽ワゴン車の運転者は責任を免れることができるのだろうか?

「それについては、軽ワゴン車の運転者の『過失』と、対向車線の軽自動車の運転者の傷害との間に、法律上の『因果関係』が認められるかが問題となります」

この「因果関係」が否定されれば、軽ワゴン車運転者の法律上の責任も否定されることになるが……。

「一般に、車間距離を十分にとっていない後続車は少なからず存在するのが現状です。サーフボードを落とした軽ワゴンの運転者にとっても、そうした後続車の存在は予測可能な範囲の事情です。したがって、この事件でも『因果関係』は認められるものと考えられます」

たとえ後ろの車の車間距離が十分でなかったとしても、それを理由に免責されることは難しいということだ。

「ただ、もしルーフキャリアの製品自体に不備があり、その結果、サーフボードが落下した場合は、軽ワゴンの運転者にとっては予見可能性がなく『不可抗力』ということになりますので、刑事や民事の責任は問われないことになります」

どうやらルーフキャリアが不良品であったなどという例外的な場合を除き、運転者は落し物による事故の責任から逃れられないようだ。車のルーフキャリアに荷物を取り付ける際には、きちんと固定されているか、十分に確認したほうがいいだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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