17081.jpg
共同執筆の「学術論文」で不正発覚! 他の著者は「不正行為者」に賠償請求できるか?
2014年05月13日 20時31分

英科学誌『ネイチャー』掲載の論文をめぐって、理化学研究所(理研)の調査委員会は、筆頭著者である小保方晴子研究ユニットリーダーの「研究不正」を認定した。それを受け、理研は小保方リーダーに論文の撤回を勧告した。

そこで気になるのが、共著者の存在だ。学術論文は、複数の研究者が協力して作り上げることが少なくない。もし、自分の担当部分はまじめにこなしたのに、他の著者が行った不正のおかげで論文撤回となったら、「とばっちり」を受けたともいえそうだ。

このような場合、他の著者たちは、研究不正を行った著者に対して、損害賠償を求めることができるのだろうか。小保方氏と同じ早稲田大学理工学部出身の三平聡史弁護士に聞いた。

英科学誌『ネイチャー』掲載の論文をめぐって、理化学研究所(理研)の調査委員会は、筆頭著者である小保方晴子研究ユニットリーダーの「研究不正」を認定した。それを受け、理研は小保方リーダーに論文の撤回を勧告した。

そこで気になるのが、共著者の存在だ。学術論文は、複数の研究者が協力して作り上げることが少なくない。もし、自分の担当部分はまじめにこなしたのに、他の著者が行った不正のおかげで論文撤回となったら、「とばっちり」を受けたともいえそうだ。

このような場合、他の著者たちは、研究不正を行った著者に対して、損害賠償を求めることができるのだろうか。小保方氏と同じ早稲田大学理工学部出身の三平聡史弁護士に聞いた。

●共著者にも責任がある

「仮に、次のようなケースを想定してみましょう。

(1)論文の著者のうちの1人が、研究不正を行った

(2)他の共著者は、自ら不正行為を行っていない

(3)他の共著者は、不正を見逃した

こうした場合、信用が傷ついたり、懲戒処分を受けたりといった『損害』が、不正を実行した本人だけではなく、共著者全員に発生することになります」

――元をたどれば、研究不正を行った人の責任なのではないか。

「もちろんその人の責任が最も大きいですね。とはいえ、『すべて1人の責任』とすることはできません。他の共著者も不正に気付き、阻止する機会があったはずだからです」

●権限が大きい人ほど、責任も重い

――それぞれの共著者が、どれぐらいの責任を負うべき?

「似たような事例が問題になった裁判で、裁判所は次のような考え方を示しています。

権限が大きい人ほど、不正を阻止できる可能性が大きい。したがって、権限が大きい人ほど、その『責任』(非難可能性)も重い。

一方で、権限が大きい、上の役職の人ほど、信用、名誉が傷付く程度、つまり『損害』も大きい。

この責任の大きさと損害の大きさは正比例する」

――そう考えると、どういう結論になる?

「共著者の『責任』と『損害』が正比例するなら、それぞれの共著者は『自分の責任に応じた損害を受けている』ということになります。

ひとりひとりの共著者が、相応の責任に応じた損害を受けているとすれば、他の共著者に損害賠償を請求することはできないということになります」

●損害賠償を請求できるケースもある

――著者同士の損害賠償請求はできないということだが、共著者が不正研究に気づくのが難しいケースもあるのでは?

「そうですね。たとえば研究不正をした人が『不正発覚を防ぐ工作』を行っていた場合は話が別です。

先ほどの考えを当てはめると、他の共著者に『不正防止をする機会』がなければ、責任(非難可能性)も発生しないということになります。

つまり、そうした場合なら、『研究不正をした人』が全責任を負うため、他の共著者が不正研究をした人に対して、自分が被った損害の賠償請求をすることができます」

三平弁護士はこのように結論付けていた。

なお、三平弁護士の事務所ページ(http://www.mc-law.jp/rodo/12612/)では、より詳細な説明がされている。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る