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なぜケンコーコムは再び「違憲訴訟」を起こしたのか? 代理人弁護士に聞いた
2014年02月28日 19時36分

薬のネット販売をめぐる問題が再燃している。薬のネット販売を手がける「ケンコーコム」は1月下旬、昨年12月改正の薬事法で新たに設けられた市販薬のネット販売規制が「違憲だ」とする訴えを、東京地裁に起こした。

昨年12月に改正された薬事法は、市販薬のネット販売を認める一方で、新たに規制を設け、医療用から市販薬に切り替わって間もない薬については、ネット販売を一定期間禁止することとした。

今回、ケンコーコムはどんな内容の訴えを起こしたのか。また国を相手取って提訴したのは、なぜか。裁判のポイントについて、ケンコーコム代理人の阿部泰隆弁護士と関葉子弁護士に聞いた。

薬のネット販売をめぐる問題が再燃している。薬のネット販売を手がける「ケンコーコム」は1月下旬、昨年12月改正の薬事法で新たに設けられた市販薬のネット販売規制が「違憲だ」とする訴えを、東京地裁に起こした。

昨年12月に改正された薬事法は、市販薬のネット販売を認める一方で、新たに規制を設け、医療用から市販薬に切り替わって間もない薬については、ネット販売を一定期間禁止することとした。

今回、ケンコーコムはどんな内容の訴えを起こしたのか。また国を相手取って提訴したのは、なぜか。裁判のポイントについて、ケンコーコム代理人の阿部泰隆弁護士と関葉子弁護士に聞いた。

●2009年「ネット販売禁止」の厚労省令がきっかけ

「問題の発端は、従来可能だった第1類、第2類の市販薬のネット販売が、2009年の厚労省令で禁止されたことです。これに対して、ケンコーコムは『禁止は違憲・違法だ』として裁判を起こし、2013年1月に最高裁で勝訴して、再びネット販売が可能になっていました」

阿部弁護士はこう説明する。市販薬は、リスクが高い順に第1類~第3類の3つに分類されている。このうち第1類と第2類の禁止をめぐる前回の裁判では、ケンコーコム側の主張が認められたわけだ。

こうして「認められた」かっこうのネット販売に対し、昨年末の法改正で新たな規制がかけられた。どんな内容なのだろうか?

「昨年末の改正薬事法では、第1類のうち、医療用医薬品から市販薬へ切り替えられた直後のもの(スイッチOTC)等について、新たに『要指導医薬品』というカテゴリが作られました。

そして、『要指導医薬品』の指定を受けた市販薬については、そのリスクが不明であるとして、ネット販売が一定期間(3年と想定)禁止されることとなりました」

●「省令」ではなく「法律」で禁止された

ケンコーコムは、どの点を「問題視」したのだろうか?関弁護士は次のように答える。

「そもそもこうした市販薬は、従来からネット販売されてきたものです。もし、『要指導医薬品』の指定がなされ、販売ができなくなれば、ケンコーコムは甚大な損害を被ることになるため、今回、その指定について差止訴訟を提起することになりました」

そもそも、ネット販売を禁じる厚労省令は最高裁判決で認められなかったのに、なぜまた、新たな法改正がなされたのだろうか?

「昨年の最高裁判決は、『省令でネット販売を禁止する薬事法上の授権がない』という理由付けをとるものでした。そこで、今度は省令ではなく、法律で禁止することにしたと思われます」

つまり、「省令」が違法とされたのは、それを出した厚労大臣に、ネット販売を禁止する権限を与える法律の規定が存在しなかった、という理由だったわけだ。今度の相手は『省令』ではなく、『法律』だが、ケンコーコム側としては、どんな主張をするのだろうか?

●この裁判は「重要な憲法訴訟になる」と代理人

阿部弁護士の回答は次のようなものだ。

「そもそもの話ですが、市販薬については、ネット販売の場合に、対面販売よりも副作用が有意に発生したという実証的なデータはありません。

また、未知の副作用は、販売方法によって防げるものでもありません。したがって、規制をする法律の必要性や合理性はありません。

合理性がなく、営業の自由を過度に制限する法律は、一般に『違憲』と解されていますので、今回の薬事法の内容も違憲だと考えています」

阿部弁護士はこう述べたうえで、「本件は重要な憲法訴訟となると考えられます」と締めくくっていた。市販薬もネット販売も、どちらも身近な存在。今後の裁判には大きな注目が集まりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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