17146.jpg
地域の「子ども神輿」強制参加は違法じゃないの? 拒否すればペナルティ徴収も
2025年10月11日 08時33分
#強制参加 #子ども神輿 #地域の祭り

「子ども神輿という地域のイベントに、地元の中学生が強制参加させられる制度は違法ではないでしょうか」——こんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の住む地域では、子どもが神輿を担ぐ行事があり、原則として、子どもたちには参加する義務があるそうです。しかし、今年はさまざまな事情で、参加できない子どもたちが多い状況のようです。

自治会の大人たちは、「地域に住んでいるなら参加は当然」と、こうした状況に不満をもち、不参加者からはご祝儀と称して強制的にお金を徴収しようと考えているようです。

子ども神輿への参加を強制することはできるのでしょうか。また、不参加の場合にご祝儀の支払いを強制することはできるのでしょうか。

「子ども神輿という地域のイベントに、地元の中学生が強制参加させられる制度は違法ではないでしょうか」——こんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の住む地域では、子どもが神輿を担ぐ行事があり、原則として、子どもたちには参加する義務があるそうです。しかし、今年はさまざまな事情で、参加できない子どもたちが多い状況のようです。

自治会の大人たちは、「地域に住んでいるなら参加は当然」と、こうした状況に不満をもち、不参加者からはご祝儀と称して強制的にお金を徴収しようと考えているようです。

子ども神輿への参加を強制することはできるのでしょうか。また、不参加の場合にご祝儀の支払いを強制することはできるのでしょうか。

●信教の自由を不当に侵害し、違法となる可能性

まず、子ども神輿のような祭りや、それに伴うご祝儀は、神道などの宗教的な慣習に由来するものと考えられます。

憲法20条は、信教の自由を保障しており、何人も宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されないと定めています(同条2項)。

「宗教上の行為」にあたるかどうかは、宗教的色彩がどの程度濃いのかといった点を、個々のケースの具体的な事情を考慮して判断されます。

本件で問題となっている子ども神輿というイベントは、地域行事としての側面(地域の連帯感の醸成、子どもの健全育成など)をたしかに有するものの、「御神輿を担いで神社に参詣する」というイベントの性質上、宗教的色彩が強いと判断される可能性は非常に高いと考えられます。

そのため、神輿を伴う祭事への参加やご祝儀の納付といった宗教的な行事への参加・費用負担を、法的に強制することは難しいと考えられます。

●集会・結社の自由の観点からも問題

画像タイトル 画像はイメージです(しまじろう / PIXTA)

また、集会・結社の自由(憲法21条1項)からも問題です。

自治会や子ども会は、任意参加の団体のはずです。その活動への参加は基本的に個人の自由であり、原則として参加義務は生じないといえます。

なお、自治会や子ども会は公権力ではないため、憲法の規定が直接適用されるわけではありませんが、参加を強制することは信教の自由や集会・結社の自由との関係で問題があるため、民法上の不法行為(709条)となる可能性があります。

●不参加者への「ご祝儀の強制徴収」も任意性に反する可能性

ご祝儀の強制徴収の問題についても、同様に考えられます。

そもそもご祝儀とは、行事に対する祝いの気持ちを表すものであり、任意に支払われるべきものです。参加・不参加に関わらず強制的に徴収することは、上で説明したのと同じように違法となると考えられます。

さらに、この事例では不参加の理由に「部活の大会」「不登校」「いじめ」といった子どもの健全な成長に関わる事情が含まれています。

子どもの成長をサポートすべき大人が、伝統に固執するあまり、子どもに精神的苦痛を与えるような強制的な言動をすることは避けるべきです。この点からも、過度な圧力を伴う強制徴収は、望ましい対応とはいえません。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る