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「自殺示唆の便箋回収していた」被疑者が留置場で自殺、警察は責任問われる?  高槻女性殺害事件
2022年09月08日 10時13分

大阪府高槻市で2021年7月に女性(54)が殺害された事件で、殺人などの疑いで逮捕されていた養子の男性(28)が9月1日7時ごろ、警察署の留置場で自殺を図り、同日夜に死亡した問題が波紋を呼んでいる。

報道によると、男性が救急搬送された際、着用していたTシャツの裾部分が裂かれていたという。また、他に私物のTシャツ複数枚が裾の裂かれた状態で見つかっており、Tシャツの裾を束ねて自殺を図ったものとみられる。

署員が8月29日夕方に留置場を巡回していた際、男性の居室内からペンとノートを発見。翌30日にノートを確認した際、家族に宛てた自殺をほのめかす複数枚の便箋が挟まれていたという。

府警は、本部留置管理課の次長が便箋があったことを把握した日について、本来9月1日に把握していたにもかかわらず、当初は9月2日の未明と説明するなど、次長が過去の説明とつじつまを合わせる為に虚偽の説明をしていたとも報じられており、適正な対応がなされていたかどうか疑念も生じている。

この事件については、保険金目当てに養母を殺害した疑いがあるなどとして報じられていたが、黙秘を続けていた被疑者が死亡という結果となった。留置場での自殺防止を防げなかった場合、警察が何か責任を問われることはあるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

大阪府高槻市で2021年7月に女性(54)が殺害された事件で、殺人などの疑いで逮捕されていた養子の男性(28)が9月1日7時ごろ、警察署の留置場で自殺を図り、同日夜に死亡した問題が波紋を呼んでいる。

報道によると、男性が救急搬送された際、着用していたTシャツの裾部分が裂かれていたという。また、他に私物のTシャツ複数枚が裾の裂かれた状態で見つかっており、Tシャツの裾を束ねて自殺を図ったものとみられる。

署員が8月29日夕方に留置場を巡回していた際、男性の居室内からペンとノートを発見。翌30日にノートを確認した際、家族に宛てた自殺をほのめかす複数枚の便箋が挟まれていたという。

府警は、本部留置管理課の次長が便箋があったことを把握した日について、本来9月1日に把握していたにもかかわらず、当初は9月2日の未明と説明するなど、次長が過去の説明とつじつまを合わせる為に虚偽の説明をしていたとも報じられており、適正な対応がなされていたかどうか疑念も生じている。

この事件については、保険金目当てに養母を殺害した疑いがあるなどとして報じられていたが、黙秘を続けていた被疑者が死亡という結果となった。留置場での自殺防止を防げなかった場合、警察が何か責任を問われることはあるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

●拘置所内での自殺について行政側の過失を認めた裁判例も

——留置場での自殺について、警察が責任を負うことはあるのでしょうか。

一般論として、留置場のような強制的な拘禁施設においては、被拘禁者は自らの意思によって施設から逃げることはできず、行動の自由も奪われているから、その施設の管理者は被拘禁者の生命、身体の安全を確保する義務を負うとされています(最高裁昭和47年5月25日判決)。

そのため、留置場や拘置所内で被拘禁者が自殺した場合に、施設管理者が上記義務に違反したとして、遺族が地方自治体や国に対し損害賠償請求の裁判を起こした事例がいくつかあります。

拘置所に勾留中の被告人が自殺をほのめかすメモを看守に手渡した後に居房内の雑巾を飲み込んで自殺した事件について、裁判所は被告人が自殺をほのめかすメモを看守に手渡していたことから、施設管理者には自殺を予見することが可能だったとしたうえで居房内から雑巾を撤去すべき義務があったにもかかわらずこれを怠ったとして自殺防止措置義務違反を認めました(東京地裁平成17年1月31日判決)。

これに対し、被疑者が留置場内で着用していたシャツを脱ぎ、同シャツを使用して首吊り自殺をした事件については、裁判所は被疑者に自殺の予兆がなかったことから自殺を察知できなかったとしても警察には過失がないとした上で、監視方法についても随時監視、巡視、巡回により行われていたことから過失があったとはいえないとして警察側の過失を否定しました(津地裁平成7年11月7日判決)。

●「警察に過失が認められる可能性が高いのではないか」

——自殺を示唆する言動を事前に把握していたともとれる今回のケースについて、実際に責任が問われる可能性はあるのでしょうか。

前述の裁判例からすると、警察にはもともと拘禁者の生命、身体の安全を確保する義務があります。そして、自殺を予見することができた場合には、自殺しようとする被拘禁者に対して自殺防止措置を取る義務があります。

今回のケースにおいて、警察は家族に宛てた自殺をほのめかす複数枚の便箋を発見していたことから、自殺の予見可能性があったといえます。とするならば、警察には自殺を防止する措置を取る義務があったということになります。

たとえば、24時間態勢の対面監視などを必要とする「特別要注意被留置者」に指定するとか、本人の私物が保管されている保管庫内のシャツが破れていないかチェックするとか、居房内で本人がシャツの切れ端を所持していないかチェックするなどの措置を取るべきだったといえます。

よって、今回のケースについては、警察に自殺防止措置義務違反の過失が認められる可能性が高いのではないでしょうか。

——具体的にはどのように責任を問われることになるのでしょうか。

警察に過失による責任が認められた場合の責任の内容については、刑事責任ではなく民事責任、いわゆる損害賠償責任ということになります。具体的には遺族固有の慰謝料などを賠償する責任です。

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