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内部告発者をどう守る? 「公益通報者保護法」に「罰則」は必要か?
2013年10月04日 16時25分

組織の不正を内部告発した人を守るため、2006年に施行された「公益通報者保護法」に「罰則」を求める動きが出てきている。

オリンパス社員の浜田正晴さんが9月10日、東京都内で記者会見し、「違反した企業や官公庁への罰則を設ける法改正が必要だ」と訴えた。浜田さんは2007年に上司の不正な人材引き抜きを社内窓口に通報したところ、畑違いの部署に異動させられた。異動の無効を訴えてオリンパスを提訴し、12年に勝訴したが、その後も「報復を受け続けた」として、再び同社を提訴している。

施行から7年。公益通報者保護法は改正するべきなのだろうか。特に、法に反する行動をとる企業などに対する「罰則」を導入すべきか。公益通報者保護制度にくわしい山本雄大弁護士に聞いた。

●内部告発を「公益通報」というプラスイメージに変えた「公益通報者保護法」

「内部告発はかつて、密告者、仲間の輪を乱すなどとして、マイナスイメージが強かった時代がありました。

そのイメージを変化させたのが『公益通報者保護法』です。この法律が制定されたことで、不正の内部告発は、公益や消費者利益を擁護し、公正な社会を実現するために有用な『公益通報』である――として、プラスのイメージに転換されました。

制定当時は、ちょうど様々な企業不祥事が従業員等の告発により明らかになっていたころで、法律は強いインパクトを社会に与えました。これによって公益通報が促進され、通報者を保護する制度が定着するかに思えました」

●実際の法律は「法令遵守の補完」という側面が強かった

しかし、そういった期待に反して、法律の「中身」は不十分だったようだ。

「法律を具体的に見ると『保護される対象や内容が極めて限定されている』といった問題点があり、その性質はどちらかというと、事業者(企業)の法令順守(コンプライアンス)を確保するための、補完的方策……という側面が強くなってしまっていました。

そのため制定当時から、《公益通報を促進することで不祥事を早期に把握し、適切に処理することが重要である》という考え方が、企業にどこまで浸透するかを、疑問視する意見もありました」

●公益通報者保護制度を浸透させるためには「罰則」の導入も必要

浜田さんのようなケースを見る限り、残念ながらそうした当時の「危惧」が現実となってしまっているように思える。

「法制定後も、浜田さんのような事件は後を絶ちません。なかには、通報を受けた行政機関が事業者側に通報者名などを伝えたせいで、通報者が不利益を被ってしまうという、とんでもない事件も生じています。

『事業者の法令順守の確保の補完的方策』という位置付けの法では、社会に公益通報者を保護する制度は浸透せず、企業体質そのものを変えることもできなかったのです」

それでは、まるであべこべだ。浜田さんたちが主張している「罰則の導入」は、やはり必要だと言えるのだろうか。

「そうですね。公益通報者を保護する制度を社会に浸透させるためには、

(1)公益通報が公益の擁護に必要であることを明記し、

(2)保護の対象及び内容を拡大し、

(3)罰則の導入で、公益通報者保護法違反行為は犯罪行為であることを明らかにする。

このような方法を取らなければならないように感じています」

山本弁護士はこのように締めくくった。

日々、ニュースとして流れてくる不祥事の中には、早期の対応に失敗したせいで、大きな被害が出たのではないか……と思えるケースが少なくない。公益通報者保護がリスクを減らすことにつながるという考えを一般的にするためには、もう一度、法改正という「強いインパクト」が必要なのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

組織の不正を内部告発した人を守るため、2006年に施行された「公益通報者保護法」に「罰則」を求める動きが出てきている。

オリンパス社員の浜田正晴さんが9月10日、東京都内で記者会見し、「違反した企業や官公庁への罰則を設ける法改正が必要だ」と訴えた。浜田さんは2007年に上司の不正な人材引き抜きを社内窓口に通報したところ、畑違いの部署に異動させられた。異動の無効を訴えてオリンパスを提訴し、12年に勝訴したが、その後も「報復を受け続けた」として、再び同社を提訴している。

施行から7年。公益通報者保護法は改正するべきなのだろうか。特に、法に反する行動をとる企業などに対する「罰則」を導入すべきか。公益通報者保護制度にくわしい山本雄大弁護士に聞いた。

●内部告発を「公益通報」というプラスイメージに変えた「公益通報者保護法」

「内部告発はかつて、密告者、仲間の輪を乱すなどとして、マイナスイメージが強かった時代がありました。

そのイメージを変化させたのが『公益通報者保護法』です。この法律が制定されたことで、不正の内部告発は、公益や消費者利益を擁護し、公正な社会を実現するために有用な『公益通報』である――として、プラスのイメージに転換されました。

制定当時は、ちょうど様々な企業不祥事が従業員等の告発により明らかになっていたころで、法律は強いインパクトを社会に与えました。これによって公益通報が促進され、通報者を保護する制度が定着するかに思えました」

●実際の法律は「法令遵守の補完」という側面が強かった

しかし、そういった期待に反して、法律の「中身」は不十分だったようだ。

「法律を具体的に見ると『保護される対象や内容が極めて限定されている』といった問題点があり、その性質はどちらかというと、事業者(企業)の法令順守(コンプライアンス)を確保するための、補完的方策……という側面が強くなってしまっていました。

そのため制定当時から、《公益通報を促進することで不祥事を早期に把握し、適切に処理することが重要である》という考え方が、企業にどこまで浸透するかを、疑問視する意見もありました」

●公益通報者保護制度を浸透させるためには「罰則」の導入も必要

浜田さんのようなケースを見る限り、残念ながらそうした当時の「危惧」が現実となってしまっているように思える。

「法制定後も、浜田さんのような事件は後を絶ちません。なかには、通報を受けた行政機関が事業者側に通報者名などを伝えたせいで、通報者が不利益を被ってしまうという、とんでもない事件も生じています。

『事業者の法令順守の確保の補完的方策』という位置付けの法では、社会に公益通報者を保護する制度は浸透せず、企業体質そのものを変えることもできなかったのです」

それでは、まるであべこべだ。浜田さんたちが主張している「罰則の導入」は、やはり必要だと言えるのだろうか。

「そうですね。公益通報者を保護する制度を社会に浸透させるためには、

(1)公益通報が公益の擁護に必要であることを明記し、

(2)保護の対象及び内容を拡大し、

(3)罰則の導入で、公益通報者保護法違反行為は犯罪行為であることを明らかにする。

このような方法を取らなければならないように感じています」

山本弁護士はこのように締めくくった。

日々、ニュースとして流れてくる不祥事の中には、早期の対応に失敗したせいで、大きな被害が出たのではないか……と思えるケースが少なくない。公益通報者保護がリスクを減らすことにつながるという考えを一般的にするためには、もう一度、法改正という「強いインパクト」が必要なのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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