婚活パーティーで知り合い、真剣交際していた男性の子どもを出産。ところが、男性が既婚者だったことが発覚した──。
弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられています。
相談者の女性によると、妊娠を伝えた際、相手から「結婚願望はなく、認知もしない」と言われたそうです。それでも交際を続けて、出産。しかし、相手が既婚者であることが判明しました。
現在は、養育費を受け取っていますが、子どもの将来のためにも認知を求めるべきか迷っているそうです。一方で、男性の妻に不倫がバレて慰謝料を請求されるのではと不安も抱えています。
こうした「独身偽装」は一部メディアで報じられたり、SNSで話題になっていますが、被害に遭ってしまった女性がとれる法的手段にはどのようなものがあるのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。
●認知されると何が変わる?
──認知されると、子どもにはどのようなメリットがありますか?
認知されると、子どもには相続権や養育費請求権、扶養請求権が生まれます。とくに相続権は、将来の経済的な安定につながる重要な権利です。
父親にあたる男性が死亡した後でも認知請求は可能ですが、父子関係の証明が難しくなる可能性があります。
また、今回のケースのように、養育費が支払われていても、将来途絶えた場合、認知されていなければ、法的に請求できない可能性があります。
このように、男性に認知してもらうことは、現在から将来までの子どもの経済的な安定に資することになります。
●もしも男性の妻が知ったらどうなる?
──もしも認知された場合、男性の妻に女性や子どもの存在がバレてしまう可能性はありますか?
男性の戸籍欄には、認知日、認知した子の情報が記載されることになります。そのため、男性の妻が、パスポートの申請や親の相続の手続きなどで戸籍謄本を取得したときに、戸籍の身分事項欄に認知の記載があることでバレる可能性があります。
──男性の妻から慰謝料請求されたらどうすれば?
「既婚者とは知らなかった」「注意をしても知ることができなかった」と主張することになります。今回のケースであれば、婚活パーティーでの出会いで、交際中も家族の存在を感じさせなかった事情などがその根拠になります。
ただし、相手が既婚者だと知った後も肉体関係を続けた場合、その後の行為については慰謝料が認められる可能性が高いです。
●「独身偽装」に慰謝料請求できる?
──女性は男性に慰謝料請求できますか?
もし男性が既婚者であることを知っていれば肉体関係を持たなかったのに、男性が既婚者であることを隠したことで、肉体関係を持つことになった場合、女性の「貞操権」が侵害されたといえます。
貞操権とは、「誰と性的な関係を持つか自由に決める権利」をいいます。この場合、女性は男性に対して慰謝料請求をすることが可能です。